徳山ダム建設中止を求める会・事務局ホームページ



2003年度第3回 事業評価監視委員会への「お願い」

                         2003年11月28日

中部地方整備局事業評価委員会
 委員長  網中政機 様
 委員各位

                                         徳山ダムをやめさせる会
                                           共同代表:在間正史・伊藤達也

お 願 い

「超法規的」な予算編成を許す「事業継続意見」を出さないで下さい

 11月26日になって、中部地方整備局は11月30日に徳山ダム建設事業のみを対象とする事業評価監視委員会を開催すると記者発表しました。
 この発表はあまりにも唐突です。そして前回10月9日の貴委員会で委員から出された数々の問題点(事業費増額の時期及び内容に対する疑問や批判のみならず、事業目的である利水・治水両面での効果−B/C−への疑念なども出されたと聴いております)について、何ら検討さえされていない状況での開催には大きな疑念を抱かざるをえません。すなわち、国交省中部地整は、来年度予算編成にあたって、10月9日に挙げられた諸問題の検討及び見直しをすべて棚上げにしたまま、徳山ダム事業費増額だけ(増額幅を圧縮するなどの「変更」「努力」を水機構側が貴委員会に対して見せるという形も含めて)を、貴委員会に認めて貰おうとしているのではないか、という疑念です。
 11月3日の現地視察で、水資源機構はひたすら「工事が進んでいる」という既成事実を強調したようです。既成事実を追認していくだけなら、事業再評価制度も、それに基づく事業評価監視委員会も、全く無用のものになってしまいます。そもそも国土交通省が事業評価制度に事業評価監視委員会をおいたのは、「公共事業の効率性、透明性の確保」であったはずです。もし貴委員会が、上記のような問題点を総括評価しないまま、事実先行の事業を是認してしまったら、事業再評価制度そのものを無意味にすることになるのではないでしょうか。
 8月の水機構(旧水資源開発公団)による事業費大幅増額発表で、それまでもくすぶっていた徳山ダム事業に対する納税者・市民の不信が一気に広がりました。貴委員会委員各位におかれましては、そうした不信を晴らすべく、事業目的の根本に立ち返った十分な審議を尽くされることでその職責を全うされんことを、強くお願いする次第です。

 皆様が現地視察をされた日、当会を構成する一団体である「徳山ダム建設中止を求める会・事務局」ホームページに以下のような投書がありました。

 私は今徳山ダム…で仕事をさせてもらっている作業員です。…野生の猿、鹿、うさぎなどダンプにひかれても知らん顔。最低だ!何が環境保全だ!破壊しまくってる!こんなダム中止だ!
 ダム評議会と報道関係の方が現場に視察に来たけどただJV職員と公団職員の話を聞くだけで質問すらしない!その時間だけダンプや車の規制をかけいかにも環境に配慮して作業してますみたいな。いつもなら粉塵を巻き散らして走るダンプ、違法燃料(重油*)で真っ黒な排気、これが環境を守って作るダムか!

(*) 多分「灯油」のことと思われます。「粉塵を巻き散らして走るダンプ」「真っ黒な排気」は当会メンバーも現認しています。

 いかに「既成事実」が積み上がっていようとも、徳山ダム建設事業には、厳然たる大問題がいくつも横たわっています。
 他にどんな目的を付け加えようとも、徳山ダムは木曽川水系水資源開発基本計画(フルプラン)に基づく水資源開発施設であることに変わりはありません。ところが徳山ダムによる開発水には将来にわたって需要は発生しません。
 「揖斐川から木曽川へ水を融通するための導水」計画が片鱗も存在しない以上、木曽川の「渇水対策」にはなりません。
 洪水調節による洪水防御効果にはわずかなものにすぎません。むしろ、ダム建設を口実に下流部の急ぐべき河川改修はなおざりにされ続けて、昨年7月10日の大垣市荒崎地区の浸水被害を引き起こしました。
 発電事業の開始は2014年に先延ばしされています。電力需要が発生しないからです。そして「事業費増額」発表以来、起業者である電源開発(株)及び電発から買電する中部電力(株)は「これ以上の費用負担増加は受け入れがたい」という立場を繰り返し強調しています。

 その一方で、工事現場付近の環境は大きく破壊されています。そして生態系の指標となるべき大型猛禽類の保全対策に必要な「工事を凍結した上での調査」という
NACS-Jの意見は排除され、何ら保全対策は立てられないまま工事は進められています。
 事業費増額を「圧縮」する目玉の一つである「山林公有化に伴う村林道の変更」については、地権者(旧徳山村民)の理解は得られていません(多くの地権者が憤激しています)。

 水資源機構(旧公団)は、現行事業実施計画に定められた事業費2540億円のうち約2450億円を本年度中に使ってしまうという8月8日になって、事業費1010億円増額(40%UP)を発表し、利水者等にその内容の説明もすることなく8月27日には現行事業費を超えて約180億円の概算要求をしました。
 水資源機構が事業費を正式に増額するためには、徳山ダム建設事業の事業実施計画を変更しなければなりません。事業実施計画の変更には、あらじかめ、利水者から費用負担の同意を得る必要があります。そして利水者である愛知県・岐阜県は、現在作業が進められているフルプラン全部変更の閣議決定後に事業実施計画変更がなされるとの認識を示しています。
 フルプラン全部変更作業は、まだ利水者からの需給想定調査及び中部地整の施設実力調査の結果を事務方が集約するに至っていません。7月4日の国土審議会水資源開発分科会木曽川部会第1回会合では、多くの論点が出されており、それらの諸論点を十分に審議するならば、結論に至るまでには相当程度の時間を要するはずです。
 すなわち、正式な事業費増額―事業実施計画変更は、来年度予算の財務省原案内示には間に合わないし、無理に間に合わせるべきではありません。
 さらに、報道によれば、10月9日の貴委員会終了後に中部地整河川部長は「木曽川水系のフルプランの見直しで利水容量が減った場合」に言及しています。徳山ダム建設事業計画の根本的見直しがなされる可能性が大きいのです。

 徳山ダム建設事業は2001年度に評価を経ており、本来は今年度の対象事業となりません。しかし8月の水機構(旧公団)の事業費大幅増額の発表を受けて、貴委員会は10月9日の委員会審議の対象事業に徳山ダム建設事業を加えました。その最大の問題意識は費用対効果が大きく変化するということにあったはずです。
 そして事業目的そのものが変わる可能性のある中で、ますます費用対効果が計算できなくなっています。貴委員会は、少なくとも事業目的の検討結果(フルプラン全部変更の木曽川部会の結論等)を待ってから、改めて徳山ダム事業を対象とした審議を尽くされるべきであると考えます。(上述したことの繰り返しになりますが、)そうでなければ、事業再評価制度における事業評価監視委員会の存在そのものを無意味にしてしまうのではないでしょうか。

 11月9日投票の総選挙に先だって当会が行った立候補予定者に対する公開質問状への回答者の多くが当選を果たされました。そのご意見の大部分は「事業費大幅増額は問題であり、徳山ダム事業自体、いったん工事を凍結し、再検討すべきだ」というものでした。
(詳しくは
http://tokuyama-dam.cside.com/senkyo-graph_s1.htmでご覧下さい)
 徳山ダム事業そのものに対する疑問の声は、独り当会が上げているだけではありません。
 このような時に「来年度予算の財務省原案内示が来月下旬に迫る中、対応方針を切り離し、監視委の結論を出してもらう必要性」から「国土交通省中部地方整備局は、三十日に開く事業評価監視委員会に対し、治水、利水の計画見直しを盛り込んだ『対応方針案』は示さず、増額する一千十億円の妥当性に絞って審議を求める方針を固めた」(「 」内は11月27日付け中日新聞)とすれば、中部地整の「方針」は強く批判されなければなりません。フルプラン全部変更―事業実施計画変更という正式な手続きによる事業費増額が来年度予算に「間に合わない」ので、貴委員会で「事業継続意見」を出して貰うことで、「超法規的に」事業費増額を前提とする予算を組んでしまおう―工事を進めて既成事実をさらに積み上げてしまおう・・・。
 そうした国交省中部地整(と水機構)の思惑があるとするならばなおのこと、貴委員会は、事業評価監視委員会の本来の目的である「公共事業の効率性、透明性の確保」を実現すべく、厳しい態度で中部地整及び水機構に臨むべきではないでしょうか。11月30日の委員会で安易に事業継続の結論を出されるべきではありません。貴委員会が、「余りにも多額な増額、余りにも遅い発表という事業費増額の問題」のみを取り上げ、水機構に増額幅圧縮を要求することのみで事業継続を許してしまうようなことがあってはならないと考えます。貴委員会は中部地整の「方針」を追認することなく、10月9日にご自身で提起された問題を十分に審議されるべきです。

 10月6日に当会が提出させて頂いた
「意見書」は貴委員会が徳山ダム事業を審議・検討されるに当たって、何かしらお役に立つものと自負しております。また、お求めがあれば、当会の擁する専門家等が皆様にご説明させて頂くことも吝かではありません。
 科学的・客観的立場で十分な審議がなされれば、必ずや、「徳山ダム建設工事は凍結して見直すべき」という結論に達せられるものと確信しております。

 再度、切にお願いいたします。
 貴委員会として、十分な審議を尽くされた上で「徳山ダム建設工事は凍結すべし」という結論を取りまとめられ、中部地方整備局長に対して意見を出して下さい。

10月6日提出「意見書」 》 

2003.11編集


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