徳山ダム建設中止を求める会・事務局ホームページ
徳山ダム工事現場林道で保護されたクマタカについての調査と質問
クマタカの衰弱死
建設土砂を積載したトラックが走り回る徳山ダムの工事現場内の林道で、今年6月26日の朝8時半ごろ、絶滅が心配されている大型猛禽類のクマタカを水資源開発公団の関係者が見つけ、保護した。その際、クマタカはカラスにつつかれていたという。イヌワシと並び生態系の頂点にたつクマタカが林道に倒れ、カラスのエサになろうとしていたのである。クマタカは直ちに大垣市内の動物病院に運ばれた。病院の獣医の話では、「保護されたクマタカはメスで、体格は小さいものの一応成鳥だった」という。「与えたエサをぼるように食べ、飢えていたようだった。医学的な問題はなかった」と診断された。そして、クマタカは7月1日の午前中に岐阜県西濃地域振興局の手配で、長期飼育のできる愛知県尾張旭市にある施設に移された。しかし、その日の午後、この施設の獣医によって死んだのが確認された。「衰弱死」だったという。
フローター
今回のクマタカ保護について、水資源開発公団徳山ダム建設所に聞き取りを行ったところ、「ダム建設現場周辺に生息し、1996年以来調査対象となっている9つのつがいについてはすべて生存していることを確認した。したがって、(今回)保護されたクマタカはフローター(Floater)であると考える」という回答だった。また、このフローターについては「記録には残すが追跡調査はしない。個体識別を容易にする特徴的なものがあれば複数回ってきているかどうか分かるであろうが、今のところ、再三現れているフローターが存在するという報告はない」としている。
域外、対象外なら関知しない
環境省が、近い将来絶滅の恐れがあるとして「絶滅危惧種TB類」に指定し保護策を図っているクマタカが、徳山ダムの工事現場でエサがとれずに衰弱して倒れて、死んでいくという現実に、強い驚きと将来への環境悪化の懸念を禁じえない。徳山ダム建設事務所は、衰弱死したクマタカは調査対象外であり、決められた調査ラインから1センチでも外れた域外生物には責任はないという構えで、これに憚るところも窺えない。野生生物にそのような理屈は通用しない。水公団の環境保全方針はどこまで狭小なのか――。理念なき行政はあらゆる退廃を招く。
私たちは、今回のクマタカ死問題に関連し、ダム建設現場周辺の野生生物の保全に責任をもって進めていると胸を張る水資源開発公団に対し、その保全の実態や方針を改めて聞くことにした。
|
2003年8月
中日新聞8月27日付朝刊、“徳山ダムのクマタカ衰弱死 自然保護団体『環境変化への警鐘』”