徳山ダム建設中止を求める会・事務局ホームページ



  2004年度予算財務省原案関連

声  明

2003年12月20日

徳山ダム建設中止を求める会
代表 上田武夫/運営委員一同

 20日に発表された来年度予算財務省原案で、徳山ダム事業費は、現行事業費の枠内いっぱいの93億円のみとなっている。現行事業費を定めている事業実施計画が変更されていない以上、これは当然のことである。国交省(中部地整)及び水機構の「事業評価監視委の了承」(何の法的根拠もない)による「増額前提」予算獲得は失敗した。

 しかし、問題はこれからである。
 国交省(及び水機構)は何が何でも徳山ダム建設工事続行に向けて追加予算を獲るために、フルプラン全部変更−事業実施計画変更を急ぐであろう。さらに、11/30事業評価監視員委会に提出した「中部地整資料3:治水計画の考え方」の「イメージ」を振りまくことで、関係自治体の「説得」を強化していくことだろう。しかしそれは「やってはいけないこと」である。
 
(1)徳山ダムは、水資源開発促進法による木曽川水系水資源開発基本計画(フルプラン)に基づく水資源開発施設である(だから水資源開発公団−水資源機構が建設する)。現在、フルプラン全部変更の作業中であるが、@ 議論の前提となる各県の2015年の需給想定の数値すらまだ出ていない A その需給想定調査において、科学的・客観的かつ精緻な作業を行えば、2015年に徳山ダムの水を必要とするという数字は出てこない(政治的な作為を込めれば別の数字が出てくるが)。新規水資源開発を伴わないならば「徳山ダム事業計画」は根底から覆る。岐阜県のような推進派知事の音頭で、少々の新規利水容量を残したとしても、利水容量が大幅に減少するならば、水資源開発促進法の趣旨を逸脱するものとなると言わなければならない。
 前回のフルプラン全部変更(1993年。1985-2000の計画)は、遅れに遅れただけでなく、変更時にすでに実績との乖離が明らかであるという異常なものであった。それゆえ目標年(2000年)には「木曽川水系基本計画において、平成十二年度までを目途とする水の需要の見通しが示されているが、平成十二年度における木曽川水系からの取水量の実績は、水道用水は見通しの約六割、工業用水は見通しの約四割となっている。」(03.7.29.中村敦夫参議院議員の質問主意書に対する答弁書)という惨状を呈していた。
 今回のフルプラン全部変更は、こうした過去の過ちを直視した真剣な議論を経て行われなければならない。当然、時間が必要となる。拙速は禁物である。
(2)国交省は「中部地整資料3:治水計画の考え方」の「イメージ図」等をもって、「洪水調節容量の増大=洪水対策の強化」「利水容量の減少=利水者の負担軽減」の「イメージ」を振りまこうとしている。関係県市の同意を得やすくするための「イメージ」作戦であることは容易に推測できる。
 しかし、横山ダムまで巻き込んだ「治水計画の考え方」を、こともあろうに「全体の計画を見直すことと切り離して事業費増額のみを了承する」ための事業評価監視委員会に出したことは、改正河川法の趣旨(「16条の2」)を大きく踏み外すものである。96年、建設省河川局は挙げて「治水計画を変える時は、環境を重視し、住民参加で行います」と宣伝して歩いた。木曽川水系では、まだ16条/16条の2の手続きの準備も示されていない。その中で、こうした「イメージ」を振りまき、そのイメージをもって関係自治体の同意をとりつけることは、中部地整の勝手な「案」「イメージ」で治水計画を変更するということであり、「16条の2」を完全に無視するものである。断じて許せない。
 一方、中部地整の「資料3」が出てきたということは、「徳山ダムは根本的に計画を見直さなくてはならない、フルプラン全部変更のみならず河川整備基本方針・河川整備基本計画の策定作業も必要だ」と中部地整自身が認めたことと同義なのである。
 即ち、中部地整河川部が今、するべきことは、徳山ダム事業費「増額前提違法」予算獲得のために姑息な術策を考えることではなく、徳山ダム建設を前提とすることのない、住民・市民に開かれた治水・河川管理の議論をする場の設定(16条の2)なのである。

 私たちは、以下のことを要求する。
1.国交省及び水機構は「残り93億円」予算を、徳山ダム堤体盛り立て工事継続のためでなく、ダム建設工事凍結のために使うこと
2.国交省(水資源部)は、過去のフルプランの失敗を真摯に反省し、徳山ダム建設続行の帳尻併せに陥ることのない、後の世代の検証に耐えうるまともなフルプラン策定を行うこと。
 そのためにも、木曽川部会委員と市民・研究者とが公開の場(東京ではなく木曽川流域、例えば名古屋)で十分な議論を行える場を設定すること。
3.国交省(河川局)は、淀川水系流域委員会よりもさらに開かれた「木曽川水系流域委員会」を準備し、「まず徳山ダム建設ありき」ではない、河川審答申の理念に沿った、新しい揖斐川治水計画策定に努力すること。
 さらに、牧田川(*)及び牧田川合流部より下流の揖斐川本川の流下能力を高める施策(主として河績拡大。当然堤防強化を含む。)を早期に実施すること。
(*情報公開請求では「黒塗り」にされた−即ち全く作る当てのない−「一之瀬ダム」を前提としてこれまで怠ってきた牧田川に関連する河川改修を早急に行うこと)
4.岐阜県は、大谷川右岸洗堰問題解決を「徳山ダム完成後」に先送りすることなく、相川・大谷川・泥川合流部に真に「必要な投資」を早期に行うこと。また、牧田川及び牧田川合流部より下流の揖斐川本川の流下能力を高める施策(主として河積拡大。当然堤防強化を含む。徳山ダムではない)の早急な実施を国に求めること。


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