やめよ!徳山ダム No.60(2004. 9.14)


終わらない徳山ダム事業費増額問題
どこから04年度徳山ダム事業費追加分87億円をひねり出すのか?

治水特別会計という官僚独裁のポケット
 7月15日、国交大臣は、徳山ダム事業実施計画変更を認可し、財務省の要求する「所定の手続き」は一応済んだ。参院選後の臨時国会に補正予算案が出て、通ってしまう(衆院は与党多数だから、補正予算を通すのに何の支障もない)、それで「一件落着」と思っていたら、補正予算案そのものが出なかった。
 だが、徳山ダム建設工事は昼夜を分かたぬ突貫工事で進められている。そのお金はどこから来るのか? 国交省に問い合わせ中に担当者が「夏休み」をとり、その返答の出る前の8月17日、朝日新聞が「徳山ダム建設費47億円を上乗せ・残りは来月以降に」と報じた。
 休み明けの担当者に食い下がったら「多分、治水特別会計内部の流用かと思いますが…」と要領を得ない。8月25日に中部地方整備局に押しかけて、外枠を引き出した。

  04年(平成16年)度特別会計予算 予算総則
第15条 「政法第33条第1項ただし書の規定により、各特別会計において移用すること のできる場合は、第1表から第3表までに掲げる各項の経費の金額を当該各項の間において 相互に移用する場合とする。

 第2表 特別会計の一部の勘定の項の間の移用

特別会計

勘定

移用することができる項

治水 治水 河川事業費、河川総合開発事業費、水資源開発事業交付金、建設機械整備費、都市水環境整備事業費、治水事業工事諸費の各項
北海道河川事業費、北海道河川総合開発事業費、北海道砂防事業費、北海道建設機械整備費、北海道都市水環境整備事業費の各項
特定多目的ダム建設工事 多目的ダム建設事業費と工事諸費等治水勘定へ繰入


 04年度当初予算の「徳山ダム事業費」は93億円であった。それが年度途中で2倍近く(180億円。追加分87億円)に膨れるのに国会承認は不必要だ、というのだ。
 「当初から『所定の手続きを経れば追加予算措置を行う』と、財務省も言っていました」「項の間の移用となると財務省と協議しなければならないから、とても大変なのです。(項の中の流用は河川局内部のみの手続きで済む日常的な事。流用ではなく、移用である、財務省の承認が必要であることを強調したかったらしい。)」    
 霞ヶ関の官庁間の手続きが煩雑かどうかは、国交省にとっては大問題でも、納税者には関係ない。予算は、各事業ごとに「箇所付け」されているはず。予算編成時期に霞ヶ関が箇所付けを巡って「陳情」ラッシュになるのは一体何なのだ(「自分がこの予算を獲った」と政治家が吹聴するのは「お笑い」ということになる)? これでは、国会が「予算」で政府をチェックするという機能が働かない。つまり財政民主主義は空念仏、三権分立は絵に描いた餅ということではないか。
 これを聞いて、「ヘンな仕組み」と感想を述べたら、「特別会計はいろいろあるのですよ。道路特別会計とか…」とか言い出す。赤信号、みんなで渡っているのだから構わない、という感覚らしい。(読者の方は「財政法第33条1項」と「治水特別会計法」を知っていましたか?官僚独裁は、財政も含めて法的にシステム化されています。野党の「官僚批判」が、こういうところまで切り込まないのがもどかしい。)
 結局どこを削って徳山ダム事業費に回すか、という財源の問題については
「1)水資源開発事業交付金 /2)河川事業費の中の河川改修費 3)砂防事業費の中の砂防事業費補助及び地滑り対策事業費補助 からの移用」ということまでしか明らかにされていない。中部地方整備局管内での移用とは限らないから、全国の堤防決壊や土砂災害に関係する。洪水で破堤したら、あるいは土砂災害が起こったら「要らない徳山ダムのせい災害が引き起こされた」と国交省を非難しても、あながち的外れではない、ということである。

 9月30日(木) 10時30分〜 徳山ダム控訴審第2回 / 名古屋高等裁判所
控訴審の枠組みを決めていく大切な口頭弁論です。事実審理に入らせるためにも、多くの人の監視が必要です。是非傍聴をお願いします。 10時00分に名古屋地・高裁合同庁舎 1階ロビー集合


よく分からない「施設実力調査」/ 新たなダムづくりの口実
 
6月に全部変更された木曽川フルプランで、徳山ダムの利水容量は大幅縮小された。各県の需給想定調査では、需要予測は大幅下方修正で、そのままではいくら「長期的」と言っても徳山ダムに水需要は発生しない。そこで改めて持ち出されたのが「少雨化傾向で既設の水源施設の実力が低下している」という論法であり、「施設実力調査」と称して04年1月になってから各県に伝えられた数字である。曰く「牧尾ダム=70%」「岩屋ダム=44%」…。これを以て各県は「供給能力の低下」を理由に「徳山ダムの水が(少々)要る」とした。
 当初の計画から相当期間が経過して流況が変化したから再計算する、ということ自体は誤りではないだろう。しかし、鳴り物入りの「施設実力調査」は、従来通りの計画策定手順で、従来の水利権ルールを前提とし、(未利用水の存在など無視した)開発水量全体ついてシミュレーションしただけ、というもの。単純すぎる。これでは「施設実力」が大きく下がるのは当たり前。真の「実力評価」とは何か、の議論が全くなされすに、この数字をもとにして巨大な水源施設(徳山ダム)にGOサインを出すなど暴論としか言いようがない。
 また、流況の変化が大きいのなら、1968年(「電子計算機」がなかなか使えない時代)に設定した基本高水流量も再計算すべきではないか。(新たなデータが年々集積されている。「母集団が大きければカバー率100%をとることはない」国交省の河川技術者がポロッと言った)。97年河川法改正はそれを促しているはずである。
 長良川河口堰運用開始強行の「引替証文」として「環境重視・住民参加」を謳い文句に登場した改正河川法は、同じ木曽川フルプランに位置づけられた徳山ダム建設強行のために葬り去られようとしている。(さらに「河川法の目的に『環境』が付け加えられたから、『環境改善を目的とするダム』もあり」と来ては何をかいわんや、である)

やっぱり危ない「新洪水調節計画」/ 河川法脱法の治水計画変更
 徳山ダム事業費大幅増額の事業実施計画変更が大きな抵抗なくなされてしまったのは、一つには本体工事が進んでいる、という既成事実であり、もう一つは「徳山ダムと横山ダムを連携して洪水調節をすることにより、揖斐川の治水安全度が向上する」という宣伝である。
 6月2日に「徳山ダムをやめさせる会」が口頭で、また6月9日に近藤昭一衆議院議員を通じて出した資料請求の回答が、やっと9月4日に到着した。
 荒崎水害のあった02年7月10日洪水については、「引き伸ばし」なしの実績でも、計画高水流量を超える箇所があることが明らかになった(上記宣伝では、基準地点・万石のみを示し、計画高水流量以下におさまるとしていた)。「徳山ダム完成で治水安全度が大きく向上する」というのは、「徳山ダム建設以外の治水対策は何もしない」ということを意味している。
 また、現行工事実施基本計画(「みなし」河川整備基本方針・河川整備計画)を算出したときとは、貯留関数法の係数・定数を変えて来ていることも分かった。
 これらの意味するところは、分析をお願いしているところである。

 この04年度の追加予算問題の回答もしないうちから、05年度概算要求311億2200万円が出されている。このほとんどは「治水」分で全国の納税者の負担になっている。つまり「あなたの払った税金」なのだ。


8月21日、22日 恒例・徳山村キャンプ
 徳山ダム工事現場を見学しました。「もう2度と見られない光景ですからしっかり見ておいて下さい」と水機構の職員にいわれたくない…。
 しかし「まだ見ていない」方は今年中にご覧になることをお勧めします、すでに昨年とは大きく様変わりしてしまったことは事実です。


8/28〜29 徳山ダム現場見学交流会 (関ダム会・Nさんの報告より一部抜粋)

 大人11人、小人2人、計13人の参加でした。
 台風予測にも拘らず、28,29日の両日は、暑くもなく、寒くもなく、雨も帰路の車内までは降らず、絶好のダム日和?でした。自然の神様も、その存在の大きさを自覚しているグループの行動を大目に見てくれたのかもしれませんね。帰路の雨は、まさしくダムバスターズ達の涙雨だったのでしょう。
<28日・交流会> 「子守唄の里・五木を育む清流 川辺川を守る関西の会」のKさん持参の特性アユ焼き機を目の前にし、川辺川の巨大なアユ(これでも尺アユではない)が姿を現した時は、一同「オー」と感嘆の声。アユのイメージが一変したことでしょう。その視覚効果、臭覚効果、串を持った時の重量感、味覚効果と相乗し、座る場所もままならないロケーションにも拘らず、話は途切れることなく気が付けば11時を回っていました。いろんな話題で盛り上がり、笑い有り、怒り有りで日々の喧騒を忘れ去る一時でした。
<29日・徳山ダム工事現場&集落跡見学> 朝9時40分定刻丁度に到着。シャトルバスと係員が待っていてくれました。作業休みのおかげで、停車中の90トン巨大ダンプの運転席まで上がりました。3階建ての家の屋根裏に梯子で登るような感じでした。ダム建設の進捗率は61%との事。自然破壊のすさまじさと、巨大人工建造物の異様さは、私の持つ単語では表現しがたく、皆様の想像に委ねる事にします。
 約1時間の見学の後、上流部を近藤さん、竹村さんの補足説明を聞きながら見学、藤橋村「道の駅」で昼食をとり、久瀬村の露天風呂温泉に浸かりそれぞれ帰路につきました。


《current topics》

8月9日、荒崎水害被災者、岐阜県を提訴
 04年夏の各地での水害(7月の新潟・福井だけではない)は、「ダムで洪水は防げない」「『ダム』に予算を食われて堤防の改修等がなおざりにされている」ことを明らかにしている。
 徳山ダムが完成しても、揖斐川支流大谷川流域・荒崎地区の水害は防げない。古くから遊水地として知られている地域を市街化区域に指定する一方、水害を防ぐ手だてを何ら講じようとして来なかった行政の責任が問われている。

8月26日、諫早湾干拓工事差止決定出される―工事中断!
 諫早湾干拓事業は有害無益な「公共」事業だ! 国は直ちに事業中止を決断せよ!


《予定情報》

10月30日(土) 内海(うちのみ)ダム再開発を検証する全国集会
10月31日(日) 水源開発問題全国連絡会総会
 於:香川県小豆郡内海町(寒霞渓のある国立公園内に大きな堤体を作る計画!?)


編集責任:近藤ゆり子

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