やめよ!徳山ダム No.57(2004. 3.18)

徳山ダム新規利水大幅減少

― 愛知県(2/16)に続き岐阜県(3/9)も表明 ―
国交省は改正河川法16条の2の趣旨に則った手続きを開始せよ
いますぐ徳山ダム建設工事を凍結せよ

 03年暮れ、国交省(中部地整)・水機構の違法な「事業費増額前提」予算獲得策動は失敗し、04年度徳山ダム事業予算(案)は、現行事業費の枠内いっぱいの93億円のみとなった。国交省(及び水機構)としては徳山ダム建設工事続行には04年度中の早い時期の「事業費増額の事業実施計画変更」(利水者の費用負担同意を要件とする)が必要となった。その前に木曽川フルプランの全部変更手続きをしなければならない。このフルプラン改定のために、国交省水資源部から各県に水需給想定調査が依頼(03年8月7日=水公団による事業費大幅増額発表の前日付け)されていたが、その「数字」が表明されつつある。
 愛知県は、水道用水4.0m3/秒を2.3m3/秒に減らした(長良川河口堰の工業用水8.39m3/秒のうち5.4m3/秒を水道用水に転用する、という)。岐阜県は、水道用水1.5m3/秒を1.2m3/秒に、工業用水3.5m3/秒を1.6m3/秒に減らした。どちらもこれまで住民訴訟の被告としてで主張してきたことが架空・過大であったことを自ら証明した。
<「撤退ルール」を適用せず、治水へ振り替えるという誤魔化し>
 国交省は上記の新規利水減量を「一部撤退」とみなさないとしている(3月12日付中日新聞)。「撤退ではない、治水容量として必要なのだ」とすることによって、利水者の負担を相対的に軽くして「事業費増額の事業実施計画変更に係る費用負担の同意」を早期に得よう、というのである。治水分の負担は70%が国。「徳山ダム」について何も知らされされていない全国の納税者に広く薄く(薄いとは言えない重さだが)負担をかければ、大きな反発も抵抗も受けずに巨大無駄ダムの建設強行が出来るというわけである。
<最上流部の本川2ダムに頼る怖い治水計画への変更>
 治水容量を増やすことで揖斐川流域住民が恩恵を受けるがごとく、国交省は言う。しかしもともと工事実施基本計画(工実。河川整備基本方針・河川整備計画策定までは工実が「みなし基本方針・整備計画」となっている)の「既設横山ダムのほか徳山ダム等の上流ダム群により、2400m3/secを調節して」の文言は、大きな支流である根尾川上流の「黒津ダム」(1968年工実参考資料に明記)の存在を前提としていることは明らかである。

今こそ中止!徳山ダム ―国会議員大いに語る―

日時:4月24日(土)13時30分〜16時30分(開場13時)
会場:生協生活文化会館ホール(名古屋市千種区・地下鉄「本山」駅下車4番出口)
国会議員によるパネルディスカッション
    中村敦夫参議院議員/河村たかし衆議院議員/八田ひろ子参議院議員 [
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本川最上流部にのみ大雨が降るなどという「都合の良い」洪水だけに対応する治水計画など、揖斐川流域住民としては到底受け入れがたい。

<河川法改正の「目玉」16条の2の僭脱>
 そして、黒津ダム計画が消えた(3月10日読売新聞)以上、新しい河川整備基本方針・河川整備計画を策定する必要がある。そして、河川整備基本計画策定にあたって広く住民等の意見を反映させる(16条の2)というのが、97年河川法改正の「目玉」であったはずである(そのモデルが淀川水系流域委員会である、と国交省は言いたいらしい)。ところが、国交省は、木曽川水系揖斐川ではフルプラン改定手続きで利水容量から治水容量への大幅振り替えという形で実質的な治水計画変更をしてしまおうとしている。96年に河川局挙げて喧伝した「住民参加の河川づくり=16条の2」を自ら僭脱しようとしている。
<さらに河川法16条の2の僭脱の裏技>
 2月26日、02.7.10荒崎地区浸水被害について調べていたら、「『牧田川圏域(相川・大谷川・泥川)河川整備計画(案)』は県河川整備計画検討会にも諮って策定し、国に決裁を仰いでいるところです」(岐阜県河川課)ということに遭遇した。中部地整にも木曽川上流河川事務所にも「木曽川水系の河川整備基本方針・河川整備計画の策定につきましては、鋭意準備をいたしておりますが、いまだお返事できるような内容のものはございません」とずっと聞かされていた(昨年末にも)。
 「河川整備基本方針が策定されないまま、みなし基本方針(工事実施基本計画=工実)で河川整備計画を策定することについては、(私らとしても)釈然としないものがある。」(岐阜県河川関係者)。支川(県管理区間)の河川整備計画が先に決まって、それに逆規定されて(大臣管理区間の)河川整備基本方針・河川整備計画が決まる?河川法16条&16条の2は最初からザルか?(すでに河川整備基本方針を策定した河川がことごとく基本高水量を旧工実から変えない理由は、実はこんなところにあるのかもしれない)
 この「牧田川圏域(相川・大谷川・泥川)河川整備計画(案)」を承認した(16条の2第3項に係る)岐阜県河川整備計画検討会は公募も何もない旧態依然とした「学識経験者を岐阜県(知事)が選定」したものである。今、揖斐川流域で一番問題となっている相川・大谷川・泥川の河川整備計画は、木曽川流域住民全体の意見を反映させる手だてを一切封じたところで策定されてしまった。結局あの鳴り物入りの河川法改正は何だったのか?)


声  明

2004年3月9日

徳山ダム建設中止を求める会(代表:上田武夫)

 梶原拓岐阜県知事は、本日の県議会で、徳山ダムからの利水計画の大幅下方修正を表明した。
 岐阜県は、1997-98年のフルプラン及び事業実施計画変更時において、そして2001年の事業再評価時において、1994年策定の「岐阜県水資源長期需給計画」を根拠として「徳山ダムの水が要る」と言い張って来たが、それが過大・架空のものであったことを自ら証明した。
 同時に、この「下方修正」においてもなお「徳山ダムの水が要る」と言い募っていることは噴飯ものである。
 2015年において、大垣地域の水道の日最大19万m3という予測は、全国でも最低レベルのこの地域の有収率の向上の可能性を無視し、さらにありえないほど小さな負荷率を前提としたものである。この地域に新たな水道水源など必要ないし、揖斐川の表流水を水道水として使うための専用施設に投資するお金もない(大垣市は、この3月末で終了するはずの第4次変更計画を全く達成出来ていない…水需要が伸びないので計画を達成するお金も必要もないからである)。工業用水においては、新規に工業用水道事業を展開する投資分に見合う需要が発生するはずがない(もし現在の地下水揚水を規制し、揚水を減らすことを企業に求めたら、企業は低い回収率を上げることで対応することは明らかである。高額にならざるをえない工業用水を「買う」企業が現れるはずがない)。

 愛知県に続いて岐阜県も利水計画の大幅下方修正を表明したことで、木曽川水系水資源開発基本計画に基づく水資源開発施設である徳山ダムは計画の根本からの見直しを迫られている。

 だが、国交省中部地整・水機構・岐阜県などは、フルプランに全部変更において利水容量を治水容量に振り替えることで、ダム建設を強行しようとしている。
 私たちは、利水容量から治水容量への大幅振り替えは「治水計画の変更」に他ならない(少なくとも徳山ダム審議委員会で「説明」した「治水計画」とは異なる)と考える。そして、揖斐川流域住民としては、最上流部のダムに大きな洪水調節機能を負わせるような危険な「治水計画」は容認しえない。
 1997年の河川法改正にあたって当時の建設省河川局は「治水計画の変更にあたっては、学識者及び住民の皆様のご意見を頂きます」と「河川法16条の2」の意義を説明していた。
 今こそ、河川法16条の2の趣旨に則った手続き(開かれた流域委員会の設置を含む)を開始すべきであり、その結論が出るまでは、徳山ダム建設工事は凍結すべきである。

 私たちは、国交省をはじめとする関係諸機関に次のことを要求する。

(1)徳山ダム建設工事を直ちに凍結すること。04年度の予算93億円は、工事凍結のために使うこと。
(2)改正河川法16条の2の趣旨に則った流域委員会等の準備を直ちに開始すること。
(3)工事を凍結した環境下で、環境アセスメント(大型猛禽類調査を含む)を行うこと。

                               以上

国交省・水機構・岐阜県は、「後は負担金を密室で調整すれば事業実施計画は変更できる」と考えている。しかし重い「問題」は依然、存在し続けている。
☆ 文殊団地(旧徳山村民の集団移転地の一つ)の地盤沈下は続いている。補償は終わっていない(2月26日〜28日中日新聞)。この補償は誰が負担すべきものか?
☆ ダム周辺山林保全制度(公有地化問題)は旧徳山村地権者の同意を得られず、少しも進展していない。
☆ 3月13日、「荒崎地区から水害をなくす会」の総会が開かれ、岐阜県を相手に慰謝料請求訴訟を起こすことを決めた(3月14日中日新聞)


RPN(リバーポリシーネットワーク)からのお知らせ

−持続可能な水資源政策にむけて−

☆ダム視察 陸軍工兵隊からみた徳山ダム  3月27日(土) 
☆シンポジウム「アメリカの"ダム撤去"から学ぶ」  3月28日(日)  
 13時30分〜17時  愛知中小企業センター
☆勉強会「河川再生への道 行政、研究者、NGOの果たすべき役割」同日
 18時30分〜20時30分 安保(あぼう)ホール
 主催:RPN/問い合せ tel 090-7952-2882(高木)

◇ 姫野雅義氏が正式に出馬表明 4月の徳島市長選 ◇

 NPO法人「吉野川みんなの会」の前代表理事で司法書士の姫野雅義氏(57)=徳島市南前川町四=が16日、同市役所で記者会見し、4月11日告示、18日投開票の同市長選に立候補することを正式に表明した。選挙には無所属で臨み、考え方が一致すれば政党や団体の支援を受ける。(3月17日徳島新聞記事より)


「やめよ!徳山ダム」通信 編集責任:近藤ゆり子


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