やめよ!徳山ダム No56(2004. 1.20)

徳山ダム裁判 不当判決を許さない!

― 1月7日、名古屋高裁に控訴しました ―

 昨年末の徳山ダム裁判・岐阜地裁判決は、全面的な行政追従の情けないものであった。
 判決書を見ると、「原告の主張」として裁判所が要約しているもののピントが外れている上に、「裁判所の判断」部分は被告側準備書面の丸写し。要するに裁判所が分からないから「行政に○」をつけておく、という全くもってお粗末な内容である。
 特に行政訴訟(事業認定取消+収用裁決取消)訴訟について主要な点を記すと、
@土地収用法20条3号要件(事業計画が土地の適正且つ合理的な利用に寄与する)の判断基準について、被告側の「比較衡量」論を採用した上で、A最大の争点である新規利水の有無・水需要予測については「水資源開発施設計画を進めるに当たっては、長期的、先行的な観点から整備を行う必要があり…、余裕を見込む必要もある」という被告側の高度成長期的思考をそのまま丸呑みした上で、「建設大臣の判断に裁量の逸脱又は裁量権の濫用はない」とし B 洪水対策、渇水対策、都市用水確保・発電等の「得られる公共の利益は多大なもの」で、失われる利益は小さい(「自然環境への影響は…小さい」「旧徳山村の住民に対しては生活再建のための措置が講じられている」)から C 建設大臣の判断に裁量の逸脱又は裁量権の濫用はない」とした。
 しかし、そのとんでもない判決さえ「当裁判所は、公団の本件水需要予測について建設大臣が平成10年12月にこれを是認した判断が、当時においては建設大臣の裁量の範囲を逸脱するものではないと判断するにすぎないものであり、現時点においては…早急に水需要予測を見直し、最終的な費用負担者である国民、県民の立場に立って、水余りや費用負担拡大等の問題点の解決に真摯に対処することが望まれる」とわざわざ付言せざるを得なかったのである。この「付言」を無視した過大な水需要予測によるフルプラン改訂は出来なくなったと言えよう。
 04年中の「徳山ダム建設工事凍結」の可能性が開けて来たといえる。


声  明

2003年12月26日 徳山ダム裁判原告団

 本日、岐阜地方裁判所において徳山ダム裁判3訴訟(行政訴訟=土地収用法の事業認定取消訴訟・収用裁決取消訴訟、住民訴訟=公金支出差止等)の判決が言い渡された。私たち原告の請求をすべて棄却及び却下するという極めて不当な判決であった。
 内容的にも、原告側の主張の要点を外し、ほとんど被告の主張を無批判に肯定・引用しており、司法の行政追従姿勢が露わになったものである。
            (中略)
 現在、水機構は徳山ダム建設事業費2540億円をほぼ使い切り、960億円の事業費増加が必要であると言っている。事業費増加については唯一岐阜県を除く関係県市、発電事業に関わる電源開発(株)及び中部電力(株)は強い難色を示している。
 その一方、フルプランは現在改訂作業中であるが、工業用水は勿論、まだ需要が増加するとされてきた水道水さえも需要増は見込まれず、既開発の大量の「未利用」水すら使う当てがないことが明らかになってきている。もはや、水資源開発促進法に基づく水資源開発施設である徳山ダム事業はその根拠を失っている。このことは、裁判所さえも付言としてこれを認めざるを得ないのである。フルプラン改訂において、徳山ダム事業は廃止されるべきである。

 揖斐川流域の洪水対策等については、改正河川法に基いて、即ち流域住民による十分な議論に基づく意思形成のもとで、河川整備基本計画等の策定を進めていくべきである。
(1968年工事実施基本計画にいつまでも拘泥するべきでない。まして、徳山ダムの洪水調節効果をより大きく見せかける中部地整の「案」をもって、揖斐川治水計画の実質的変更を目論むなど論外である。)

 私たち徳山ダム裁判原告団は、行政追従の本件判決を許さず、直ちに控訴すると共に、徳山ダム建設の中止、徳山の森の再生を求めて、あらゆるフィールドで闘いを展開する所存である。全国の心ある市民に、さらなるご支援をお願いしたい。


国交省(中部地整)・水機構の違法な予算獲得策動を阻止

徳山ダム事業費増額前提の違法予算 ― 当初予算 ― 盛り込みならず

「残り93億円」予算はダム建設工事凍結のために使え

 03年12月20日に発表された来年度予算財務省原案で、徳山ダム事業費は、現行事業費の枠内いっぱいの93億円のみとなった。現行事業費を定めている事業実施計画が変更されていない以上、財務省主計局は、事業費増額を前提とした「180億円」を認めるわけにはいかなかったのだ(これは当然)。しかし、国交省はこれは「事業実施計画変更があれば年度中の追加予算も考える」という財務省の内諾付きであると公言している。
 国交省(及び水機構)としては徳山ダム建設工事続行のために、フルプラン全部変更−事業実施計画変更を急がざるを得ない。03年11月30日の事業評価監視委に提出した「中部地整資料3:治水計画の考え方」の「イメージ」(横山ダムの灌漑容量の徳山ダムへの振り替え→徳山ダム+横山ダムの洪水調節容量の増大&利水容量の縮減→関係県市の負担軽減)を振りまくことで、関係自治体を「説得」しようとするだろう。
 しかし、国交省・水機構(及び梶原岐阜県知事)の期待(04年度の早い段階でのルプラン全部変更−事業実施計画変更)通りには行かない。私たちは「右肩上がり前提の水資源開発−徳山ダムによる新規利水」の不合理を徹底的に追及し明らかにして来た。どの自治体も財政逼迫の中、市民に合理的な説明の出来ない負担の同意することは容易ではない。 また、中部地整自ら揖斐川の治水計画見直しに言及することで、まだ準備さえ出来ていない河川整備計画策定を飛ばして徳山ダム完成を急ぐことは、改正河川法16条の2の僭脱に他ならないことを露呈した。

 私たちは、12月20日に声明を発し、以下のことを要求している。
1.国交省及び水機構は「残り93億円」予算を、徳山ダム堤体盛り立て工事継続のためでなく、ダム建設工事凍結のために使うこと
2.国交省(水資源部)は、過去のフルプランの失敗を真摯に反省し、徳山ダム建設続行の帳尻合わせに陥ることのない、後の世代の検証に耐えうるまともなフルプラン策定を行うこと。そのためにも、木曽川部会委員と市民・研究者とが公開の場(東京ではなく木曽川流域、例えば名古屋)で十分な議論を行える場を設定すること。
3.国交省(河川局)は、淀川水系流域委員会よりもさらに開かれた「木曽川水系流域委員会」を準備し、「まず徳山ダム建設ありき」ではない、河川審答申の理念に沿った、新しい揖斐川治水計画策定に努力すること。
4.岐阜県は、大谷川右岸洗堰問題解決を「徳山ダム完成後」に先送りすることなく、相川・大谷川・泥川合流部に真に「必要な投資」を早期に行うこと。


「徳山ダムをやめさせる会」次々と対行政交渉

☆12月19日、愛知県交渉
・水道用水については、作業はほぼ終わりに近づいた)工業用水については12月に入ってから作業を始めたが、1月末までには作業を終えられると思う。
・水道用水については節水型機器の普及などの要素も取り込んで精緻な作業を行った。水需要の伸びはないという結論になりそうだ。
・しかし供給能力の低下という問題がある。長良川河口堰の未利用水の利用、徳山ダムの新規利水等いろいろ考えている。
・長良川河口堰の未利用水の転用はフルプラン改定の問題となる。省庁間協議も必要で、愛知県単独では決められない。
【質問】長良川河口堰−工業用水についてはどれだけの転用を考えているか?徳山ダムからの新規利水(水道用水)4m3/Sについてはどうするのか?減らすのか?撤退するのか?
《回答》まだ未定。選択肢はいろいろありうる。
【質問】徳山ダムは木曽川の渇水対策に必要というが、価格の問題抜きには語れないのでは?
《回答》お金の部分について検討する能力はこの部署にはない。企業庁しかできない。お金の問題は知事が導水路に言及することで浮上してきている。
・利水安全度の向上とは取水制限緩和とイコールではない。維持流量確保(馬飼地点50m3/S等)が目的である。結果として取水制限緩和に繋がることもある、ということ(渇水対策容量が水道水補給に回るわけではない)。この辺は誤解のないようにしておきたい。
・各県がフルプラン需給想定調査を出した後、関係県市や省庁間協議を経てフルプラン改定に至るのはなかなか大変な作業だと思われる。

☆ 1月13日、国交省中部地整交渉
 特に新しい情報はなく、多くの時間は @「資料3:治水計画の考え方」で中部地整自身が治水計画に言及していること A追加予算を要求してまで「工事を遅らせられない」理由として「洪水対策」を挙げていること から、河川整備計画策定を経ることなく徳山ダム建設工事を(事業費を増額してまで!)進めるのは河川法改正の趣旨に悖る、ということをこちらから強く言うことに費やされた。 
【質問】04年度予算の追加要求の条件についての認識は?
《回答》フルプラン全部変更(「関係県市への意見照会」があるから、三重県の同意も必要)及び事業実施計画変更。(利水者−岐阜県・愛知県・名古屋市の費用負担同意)  
【質問】「資料3」等、徳山ダム計画の抜本的見直しと改正河川法16条(河川整備基本方針)・16条の2(河川整備計画)の関係は?
《回答》私の担当でないもので…
【質問】フルプラン全部変更−事業実施計画変更があるまで、は当然だが、さらに河川整備計画策定まで徳山ダム建設工事を凍結すべきだと考えるが?
《回答》回答:工事を凍結して工事期間が延びるとそれだけ余分に事業費がかかる。
【反論】それは徳山ダムは必要だ、完成させるべきだということを前提とした話。住民が、カレーライスを食べるか寿司を食べるか、まだ店も決めないうちに、勝手にカレーライスを作って、金を払えというようなもの。全く必要ないかもしれない以上、先に進めるべきではない。
【意見】@ 洪水対策につき「資料3」もまた(他でいろいろ用いられるものと同様)、02年7月10日における荒崎地区の浸水被害が、「徳山ダムが出来れば防げた」かのような「印象・イメージ」を植え付ける構成となっている。「大谷川右岸の現場に立ってものを言え」(当会・上田代表。荒崎地区センターの初代館長を務められていたこともあり、大谷川右岸洗堰のもつ歴史的意味・現在的状況に詳しい。地域の特性及び数百年にわたる「水との闘い、水を巡る争いとそれを収める知恵」を余りよく知らないお役人が「徳山ダムが完成すれば本川の水位が低減し・・・」というお題目を並べると「頭に来る」。)
A渇水対策についても誤解を与える説明をしている(12/19愛知県交渉参照)。実際は、渇水対策容量とは馬飼地点50m3/Sの維持流量を補給するもの。言ってみれば「お魚さんやその他の生物のため」。市民は(もしかすると行政も)、そこのところがよく分かった上で、導水路の費用も含めた「徳山ダムによる渇水対策」の負担を承知しているわけではない。
☆ 1月30日(金) 名古屋市交渉予定
 (参加ご希望の方は当会事務局にお問い合わせ下さい)


ダム・河川関係集会お知らせ

☆「豊川を考える−設楽ダム計画を契機として−」
 2月14日(土)13時〜16時30分  愛知大学豊橋校舎・記念会館小講堂   
 講演:大熊孝・新潟大学教授(河川工学)
 パネルディスカッション:市野和夫氏・愛知大学教授/松倉源造・豊川を勉強する会代表
 主催:名古屋弁護士会(tel:052-203-0725)

☆「アメリカの"ダム撤去"から学ぶ」  3月28日(日)  
 主催:リバーポリシーネットワーク/問い合せ tel 090-7952-2882(高木)
@ 13時30分〜17時  愛知中小企業センター
講演:ダニエル・ビアード・元米国開墾局総裁/デビッド・ウェグナー・元米国開墾局研究者(「ダム撤去」執筆者)/尾田栄章・第3回世界水フォーラム事務局長(旧建設省河川局長)
質疑応答:コーディネーター 粕屋志郎・岐阜大学教授 青山己織(「ダム撤去」翻訳者)
A 18時30分〜20時30分 安保ホール
 ゲストと市民の勉強会「河川再生への道 行政、研究者、NGOが果たすべき役割」

☆ 「徳山ダムをやめさせる会」集会予定 :4月25日(日)午後



2003年 会計報告

 会費・カンパ 1,368,208  弁護団へ 500,000
- -  他団体へ 49,730
- -  通信費 347,849
- -  消耗品費 75,274
- -  会場費 5,100
- -  資料費 106,351
- -  印刷機器等 206,440
- -  その他 14,686
 計 1,368,208  計 1,305,430
収入  1,368,208 支出  1,305,430
62,778

単位/円

2002年からの繰り越し 現金 76,234
郵便局口座 399,077
銀行口座 5,759
2003年への繰り入れ 現金 26,992
郵便局口座 511,097
銀行口座 5,759



「徳山ダム建設中止を求める会」は、皆さんの支援で活動を進めています


☆ 「徳山ダム問題」の「出前講座」。学習会を設定して頂ければ講師派遣します。
 当会又は「徳山ダムをやめさせる会」にお気軽にご相談下さい。
☆ 入会・カンパは、年中無休で受付中! 郵便振替:00800-7-31632 年会費2000円

「やめよ!徳山ダム」通信 編集責任:近藤ゆり子


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