徳山ダム建設中止を求める会・事務局ホームページ



抗議声明文


声  明

2004年4月27日

徳山ダム建設中止を求める会(代表:上田武夫)

密室の「3県1市の調整」及び改正河川法を僭脱する「新計画」に抗議する

 国交省中部地整は、27日、徳山ダムに係る「3県1市の調整会議」を行い、利水者(岐阜県、愛知県、名古屋市)の「利水容量削減」を認めることで利水者負担の増額を抑える案を示した。同時に、3県市が返上した利水容量と電源開発(株)が返上する発電用水の容量を洪水調整容量に転用し、併せて、徳山ダムの洪水調整容量の一部を、下流にある横山ダムの農業かんがい用の容量と入れ替えるという横山ダムを巻き込む治水等の計画変更(=「新計画」)を示した。
 これで、960億円の事業費増額を3県1市及び電源開発(株)に認めさせるということであろう。
 さらに中部地整は、29日に、昨秋に「960億円の事業費増額」を「忸怩たる思い」で承認してしまっている中部地整事業評価監視委員会を開催し、「新計画」にお墨付きを得ようとしている(国交省事業評価制度に位置づけられた事業評価監視委員会には本来そのような役割はない。また委員達自身がは「治水計画のことなど分からない」と発言している)。
 国交省が言い立てる「代表民主制」からしても、「3500億円の徳山ダムを建設する」ことに対して、この地域の有権者は承認を与えていない(事業費増額問題が報じられた後のこの地域の唯一の国政選挙=03年11月総選挙では事業費増額を「疑問」「工事を凍結して見直す」という意見の候補者が多く当選した)。
 市民に開かれることのない行政同士の密室の談合をもって、徳山ダムについては何も知らされていない全国の納税者に広く負担を追わせるという形で事業費大幅増額問題に決着をつけようとする国交省・水機構及び3県1市当局の姿勢は許すことはできない。

 国交省中部地整は「徳山ダムと横山ダムをダム群として運用することにより、・・・約2倍の集水域を持つことになり、揖斐川の洪水調節機能を従来計画以上に向上させることが可能となる」という。しかし、徳山ダムと横山ダムという本川上流部2ダムでは、根尾川型洪水(1960年8月洪水。大垣市荒崎地区に大被害をもたらした02年7月10日洪水もこの型である)では、その「大きな洪水調節機能」を発揮することはできない(本川にそれに見合う水は流れない)。1968年工事実施基本計画参考資料ではっきりと位置づけられている根尾川上流・黒津ダム計画を消し去って、無理に本川2ダムに大きな洪水調節効果を負わせる「治水計画」は危険極まりない。揖斐川流域住民を主体とした当会としては強い憤りを覚える。

 また国交省中部地整が個別徳山ダムの容量変更のみならず「新洪水調節計画」に言及する以上、河川法に基づく計画変更手続き(河川法16条及び河川法16条の2)が、当然必要となるはずである(*)。
 97年改正の河川法は「住民参加・環境重視」を謳っている。環境アセスメントも実施したことがない(絶滅危惧種のイヌワシ・クマタカの保全策は立てられていない)、河川整備基本方針策定のための社会整備審議会(小委員会)も開催されていない、河川整備計画のための流域委員会(中部地整ホームページ参照)の準備の動きすらない、住民意見の反映(16条の2第4項)など全く存在しない。ないないずくしのまま、密室の会議で治水計画を変更しようという河川法の僭脱行為は到底許すことはできない。

*一方で「ダム計画策定時のデータである昭和20年代、30年代とは大きく流況が変わった」から「ダム等の利水施設の実力は低くなった」と言う。それほど流況が変化したなら、同じ時期の洪水を対象とした現行の治水計画(工事実施基本計画)を抜本的に見直す(改正河川法16条及び16条の2)の手続きをとるべきである。
 
 27日の密室協議と29日の「お墨付き」を踏まえて、国交省水資源部は、連休明け早々にも「利水容量の治水容量への大幅振り替え」というフルプラン原案を作り、必要な手続きを済ませてしまうのだろう。畳みかけるように事業費大幅増額を盛り込んだ「徳山ダム事業実施計画変更」がなされ、追加予算要求に続くのであろう。
 行政の密室協議で事業費大幅増額の、徳山ダム建設を強行することに、強い憤りをっもって抗議する。

 河川法、事業評価制度(及び事業評価監視委員会)、水資源開発促進法(及び国土審議会水資源開発分科会)・・・どれをとってみても国交省は自ら作った法律や制度の趣旨を、自ら踏みつけ破壊している。
 国交省河川局が、鳴り物入りで宣伝していた1990年代の「河川局による河川行政の転換(河川法改正を含む」「環境重視・住民参加」「公開性・透明性を高めた公共事業」等は何だったのか? 「淀川モデル」(近畿地整淀川水系流域委員会)というアドバルーンを上げて見せた以外は、全て自らの手で押し潰し、ひたすら反動の道を進んでいるではないか。
 私たちは、歴史を逆行させる河川行政の反動を許さない。

 こうしている間にも、イヌワシ・クマタカを頂点とする徳山の自然生態系は脅かされている。巨大な人造湖が出来てしまえば、取り返しのつかない自然破壊となる。

 国交省中部地整は徳山ダム建設工事を直ちに凍結し、改正河川法16条の2の趣旨に則った河川整備計画を策定せよ! 水資源機構は工事を凍結した環境下で、まともな環境アセスメントを行え!

 川は流域住民のものであり、広く全市民のものであり、国交省や関係県市の役人・首長のものではない。川を私たち市民の手に取り戻すため、全国の心ある市民の方々とともに私たちはなお闘いを続ける。

 全国の市民に対し、徳山ダム建設中止を求める私たちの闘いへのさらなる支持・支援を訴える。

                      以上

      徳山ダム、治水にシフト/国交省中部整備局、調節機能25%拡充で(中日新聞記事)


事業計画変更に関する調整会議資料

1.徳山ダム建設事業の変更の概要
2.横山ダム再開発事業の変更の概要
3.洪水調節機能の向上について
4.利水計画

1.徳山ダム建設事業の変更の概要
1)徳山ダム建設事業の変更内容
【洪水調節】
 ・・・徳山ダムの洪水調節計画について横山ダムを含めて見直し、両ダムの洪水調節機能の向上を図る。
<変更内容>
 ・洪水調節容量 : 100,000千m3 → 123,000千m3 
 ・洪水調節方式 : 200m3/S一定放流方式
        → 流入量200m3/S以上全量カット
【流水の正常な機能の維持】
 揖斐川の既得用水が安定的に取水できるように、また河川環境の維持、保全を図るため、不特定容量を増量する。
 また洪水調節計画の変更により、横山ダムのかんがい用途を洪水調節用途に振り替えるため、横山ダムのかんがい用途を徳山ダムに振り替える。
<変更内容>
 ・不特定容量 : 58,000千m3 → 115,000千m3 
                           (横山ダムのかんがい振替分32,000千m3含む)
 ・基準地点万石の流量 : ダム基準年で17m3/S
          → 近年の2/20の渇水年で約20m3/S
【異常渇水時における緊急水の補給】
            変更なし
【新規利水】
 関係県市において、木曽川水系水資源開発基本計画の全部変更に向けて、将来の水需給の見通しについて検討を行った結果、12.0m3/Sから6.6m3/Sに減量されることとなった。
<変更内容>
 ・新規利水量 : 12.0m3/S → 6.6m3/S 
 ・新規利水容量 :  129,000千m3 → 78,000千m3 
【発電】
   底水容量の減量の減量に伴う発電計画の見直しの検討中である。
  (参考:従来計画)
    ・最大出力 : 徳山発電所40万kw、杉原発電所2.4kw

《比較》    総貯水量660,000千m3 (変更なし)
         従来計画              新計画
洪水調節容量   100,000千m3 → 123,000千m3  
洪水期利水容量    251,400千m3 → 257,400千m3 
  新規利水容量   129,000千m3 → 78,000千m3
  不特定容量   58,000千m3 → 115,000千m3 
                           (横山ダムのかんがい振替分32,000千m3含む)
  渇水対策容量 53,000千m3 → 53,000千m3 
  発電専用容量 11,400千m3 → 11,400千m3 

2)諸元等 (カッコ書きは従来計画時の値)
【ダム】
形式 : 中央遮水壁型ロックフィルダム
堤高 : 161.0m
堤頂長 : 415.0m
堤頂標高 : 406.0m
堤体積 : 約13,900,000m3
【貯水池】
集水面積 : 約254.5km2
洪水時満水位 : 標高401.0m
常時満水位 : 標高400.0m
洪水時制限水位 : 標高391.0m(標高393.0m)
最低水位 :  標高363.0m(標高367.5m)
総貯水量 : 約660,000,000m3
有効貯水量 : 約380,400,000m3 (約351,400,000m3 )
【総事業費】
  約3,500億円(約2,540億円)
【工期】
   平成19年度
2.横山ダム再開発事業の変更の概要
1)横山ダム再開発事業の変更内容
 揖斐川は木曽三川の中で最も治水安全度が低く、平成14年7月洪水をはじめとして、計画高水位を超えるような出水の頻度が高いことから、揖斐川の治水安全度の向上は急務となっており、横山ダムの洪水調節計画について徳山ダムを含めて見直し、両ダムの洪水調節機能の向上を図る。
(変更内容)
  ・かんがい用途を洪水調節用途に振り替え
  ・新規容量相当分の50万m3の土砂掘削の取り止め
  ・洪水調節容量 : 22,500千m3 → 29,600千m3 
   ・発電運用の計画変更
3.洪水調節機能の向上について
(中部地整「資料3 治水計画の考え方」
http://www.water.go.jp/chubu/chubu/hyoukaiinkai3/01.pdfのp8〜p10に似ている。
「現在未整備の上流ダム」
→「上記用途振替等により揖斐川本川において、将来ダムの機能の確保を可能とする」が加わっている。)
この結果、「洪水調節機能が大幅に向上するため基準地点「万石」上流の現在未整備のダムが不要となる」。

治水基準地点万石における水位低下効果について
 新洪水調節計画によれば、計画規模の洪水が発生した場合に、治水基準地点万石(河口より約40.6km)において従来計画より約0.3m水位を低下させ、計画高水位以下にすることが可能となる。
現況 : 計画高水位+約1.7m
従来計画 : 計画高水位+約0.07m
新計画 : 計画高水位−約0.37m

全川におよぶ水位低下効果について
 従来計画では、計画規模の洪水が発生した場合には、河口から26〜44kmの区間の延長約18kmの区間で計画高水位を上回っていたが、新洪水調節計画ではほとんどの区間で計画高水位を下回ることになる。
4.利水計画(略―フルプラン木曽川部会資料に類似)
用途別負担割合について
     従来計画  新計画案  増減
治水  44.4%   →  57.8%     13.4%
利水  36.8%   →  28.2%   ▲8.6%
発電  18.8%   →  14.0%   ▲4.8%

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