徳山ダム建設中止を求める会・事務局ホームページ


名古屋市の利水容量半減方針に対する声明文


声  明

2004年3月25日

徳山ダム建設中止を求める会(代表:上田武夫)

 本日、名古屋市は、徳山ダムからの利水容量を1.3m3/S返上して、水道用水1.0m3/S、工業用水0.7m3/Sの1.7m3/Sとする旨を発表した。名古屋市は、当初、水道用水5.0m3/S、工業用水1.0m3/Sの6.0m3/Sを必要とするとして徳山ダム計画に参画したが、1996年10月に水道用水を3.0m3/S返上し、2.0m3/Sに削減したという経過がある。
 明白な水余りの実態の下、利水者は次々と利水容量を切り下げた。徳山ダムは水資源開発促進法に基づく水資源開発施設として計画され、建設されてきたのである。その利水容量が当初の15.0m3/Sから6.6m3/Sへと半分以下に縮小され、明らかに当初の目的と異なるものとなっている。それでもなお1000億円近い事業費増額を行って事業を続行するか否かを決めるのは納税者・有権者である私たちのはずである。しかし間接民主制云々をという立場に立ったとしても、私たちは「利水容量6.6m3/S、事業費3500億円の水資源開発施設・徳山ダム建設の是非」を問われて投票する機会をもったことは一度もないのである(昨年11月の総選挙では、事業費増額に疑問・懸念を持つ候補者が多く当選した)。

 各利水者(愛知県、岐阜県、名古屋市)の出してきた数字は、国交省のいう「施設実力(開発水量に対して実際の供給可能水量は小さい)」という誤魔化しも含めて、辻褄合わせ、と断ぜざるをえない。取水・導水施設がなければ「確保」した水は一滴も使えない。もし取水・導水施設を建設すれば、その莫大な追加負担は、大幅な水道料金値上げと売れない工業用水の一般会計からの支出という重い負担を地域住民に強いることになる。そのことをきちんと県民・市民に説明したことはあっただろうか? 岐阜県に至ってはこの取水・導水施設の計画の片鱗も(誰が計画の主体なのかということさえ)存在しない。
 結局のところ「将来不足したらどうするのだ」という漠然とした脅しと、「利水容量を縮減したから追加負担は大きくならない(*)から良いではないか」という慰めで県民・市民を黙らせようとするものでしかない。
*利水容量を削減し、その供給可能水量を小さく見たために、1m3あたりの単価としてはベラボーな値上げとなる。やはり負担は重くなるのである。
 
 国交省は利水容量を治水容量に振り替えるという。昨年11月30日の事業評価監視委員会に出した「治水計画の考え方」に具体的な数字をつけて、新たな治水計画にしてしまおうというわけである。フルプランによるダム容量の振り替えで治水計画を変更してしまう(*)などということは、明らかに河川法16条の2の僭脱である(フルプラン変更にには住民参加の要素はない。治水について第三者が専門的な議論をする場もない)。
 1997年、ダム・堰を問う広範な市民の声に押されて行われた河川法改正において、国交省は「広く住民参加の途を拓く」と16条の2(河川整備計画の策定。ダム建設の是非もここで論議される)を宣伝した。その手続きを一切行わないまま、ダム容量変更という既成事実をもって事実上河川整備計画を規定してしまうのでは、河川法改正においていったん否定した「行政同士の密室論議で河川の在り方を決める」という旧態依然たる態度−「河川は河川管理者のもの」−を復活させるということではないか。
 1月16日、四国地整の設置した肱川流域委員会は日弁連意見書によって批判された。国交省が今行おうとしているフルプラン変更による揖斐川治水計画の変更は、その問題にも匹敵する、あるいはそれ以上の悪質な河川法16条の2の歪曲・僭脱である。流域住民である私たちはこのようなことは到底容認し得ない。
*国交省は、「河川整備基本方針・河川整備計画が策定されるまでの『みなし』基本方針・整備計画である工事実施基本計画(工実)の範囲内の変更である」と言いつくろうに決まっている。しかし「基本高水のピーク流量は…基準点万石の基本高水流量を6300m3/secとし、このうち既設横山ダムのほか徳山ダム等の上流ダム群により、2400m3/secを調節して河道への配分流量を3900m3/secとする」(現行工実)という文面は横山ダムと徳山ダムの他に上流ダムを予定していることは明らかであり、工実の基となる「工実参考資料」(1968年)には根尾川上流・黒津ダム(洪水調節計画容量2690万m3)が明記されている。
 本川の2ダムだけで、2400m3/secを調節しようなどという「計画」は無謀であり、危険である。現在もっとも問題となっている大谷川右岸洗堰−荒崎地区の洪水被害軽減にも少しも役立たない。

 こうしている間にも、イヌワシ・クマタカを頂点とする徳山の自然生態系は脅かされている。巨大な人造湖が出来てしまえば、取り返しのつかない自然破壊となる。

 私たちは、国交省をはじめとする関係諸機関に繰り返し次のことを要求する。

(1)徳山ダム建設工事を直ちに凍結すること。04年度の予算93億円は、工事凍結のために使うこと。
(2)改正河川法16条の2の趣旨に則った流域委員会等の準備を直ちに開始すること。
(3)工事を凍結した環境下で、環境アセスメント(大型猛禽類調査を含む)を行うこと。

                              以上

2004年3月25日


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