徳山ダム建設中止を求める会・事務局ホームページ



第4.地下水揚水規制

1.岐阜県長期水需給予測

2.地下水揚水規制の結果

3.岐阜県における地下水揚水の無規制状態

1.岐阜県長期水需給予測
岐阜県長期水需給予測(乙17、19)では、1990年(平成2年)の地下水揚水量が2000年(平成22年)も保たれる、つまり、それ以上地下水揚水量を増やさない、増えないという前提である(山崎p70)。
工業用水使用水の水源内訳は、大きくいって、地下水(井戸水)と工業用水道の補給水、それに回収水である。もし将来、工業用水の使用水量が増加するようなことになれば、それは、以上のいずれかの水源から供給されることになる。なお、使用水量を増やさないで生産を増やす方法があるので、生産高の増加がすぐに使用水量の増加に直結するわけではないことに注意を要する。1973年以降、回収率に変化がなくなっても、工業出荷額が増加ながら補給水量が増えていないのはこの使用水量を増やさない生産のせいである。

2.地下水揚水規制の結果
地下水揚水をこれ以上させないようにするには、条例、少なくとも要綱によって規制を厳しくしなければならない。それによって、使用水量が増えても、地下水以外の他の水源、つまり、回収水あるいは工業用水道が使われることになる。あるいは、生産に必要な使用水量を削減して、生産高当たりの使用水量を減少して対処される。
岐阜県長期水需給予測では、回収率は実績最高固定である。
例えば、2010年需給予測水量の61%を占める生活関連・在来型では25.70%、13%を占める基礎資材・先端型では39.38%である。したがって、この仮定では、使用水量の増加があるとき、残された使用水の水源は工業用水道ということになる。
証人山崎がいうように、工業用水道を使用するかは企業が決めることである(山崎p71)。企業は、生産における採算性によって、工業用水道を使用するかどうかを決める。
水源のなかで、経費的に安い順番に並べると、@地下水(井戸水)、A回収水、B工業用水道である。
企業が水源として地下水使用ができなくなれば、次に選択するのは、地下水の次に経費の安い回収水である。工業用水道は最も高価であって、回収水利用、使用水量原単位の節減をして、その上でなお補給水が必要なときに選択される。工業用水道に依存する傾向が強くなれば、回収率が向上し、ついには、回収可能な冷却温調用水を上回る回収率となるのである。上記した可児市の水使用実態はその典型例である。
岐阜県長期水需給予測のような「水需給予測」は、単なる水需要予測ではない。水の需給、つまり、需要と供給の予測であって、その需要は供給を前提としたものであり、工業用水では、工業用水道で供給される工業用水の需要予測である。
したがって、工業用水道の使用量の予測しなければならないのである。対象地域で工業用水道が使用されるかは、対象地域での水使用実態、特に回収率の向上の可能性、回収が容易で可能な冷却温調用水の水量と率、その回収実態、回収率/冷却温調用水の検討が不可欠である。 被告が依拠したという乙47建設省河川砂防技術基準案同解説p38にも「他の代替手段(回収率の向上・・・)が可能であるので、総需要量の予測はこれらの水量を考慮して検討することが必要であり、原単位としては淡水補給水量としての原単位を使用する」と記載されている(下線代理人)。
にもかかわらず、岐阜県長期水需給予測では、大垣地域の工業用水について、冷却温調用水率が60%台と高いうえに、回収水/冷却温調用水が50%と低いのに、回収率を実績の30%台に固定し、回収率が向上する予測をしていない。水需給予測、特に工業用水道の需給予測として、必要なことが全く行われていない。
強制的に、地下水揚水を禁止、最低でも新規揚水の禁止をすれば、回収率は冷却温調用水率までは向上する。そうすれば、補給水の増加は必要がなく、徳山ダムの開発水による工業用水道事業は必要がない。もし、この工業用水道事業を行ってしまうと、全く利用されず、徳山ダム建設ダムの費用だけではなく、工業用水道事業の費用も料金で支払えない不良資産を、さらに増大をさせるだけである。

3.岐阜県における地下水揚水の無規制状態
企業に地下水揚水を1990年実績以上にさせないためには、岐阜県による条例少なくとも要綱によって、地下水揚水を禁止、最低でも新規揚水は禁止する厳しい規制をしなければならない。
しかし、長期水需給予測が前提としたり岐阜県が実際に行っている規制は、岐阜県が強制的な規制ではなく企業の自主規制である。条例や要綱による岐阜県の手による規制は行う意思がない(山崎p64〜68)。それも、実際に行われている自主規制の内容は、新設を認めないのは大垣市街区域だけで、それ以外の大部分の対象地域は深層地下水の揚水をさせるというものである(甲18p35、36)。乙56の冒頭見出しの前半の「西南濃地域南部に沈下域。地盤沈下は依然として進行中」というアジ演説風の内容に比べて、実際に行われている規制は無いに等しく、岐阜県には、本気で地下水揚水規制を行ったり、行う意思が見られない。
このような規制では、工業出荷額の減少によって使用水量が減少する場合以外、補給水量の増加の防止を期待できない。使用水量が増加するときは、経費的要因などの地下水揚水を制約する要因がなければ、最も安価な地下水使用に向かう。そのときは、最も高価な工業用水道の使用が期待できないのは当然である。
結局、岐阜県が行い予定している地下水揚水規制では、徳山ダム開発水によって工業用水道を建設してもこれを利用する者がいない。徳山ダムの工業用水は需要がないのである。

追伸
第16〜第18準備書面で、岐阜県長期水需給計画など岐阜県長期水需給予測の記述において、「基礎素材」と記載したのは、「基礎資材」の引用誤りであるので、「基礎素材」は、全て、「基礎資材」に訂正する。



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