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第3.回収率

1.回収率および回収水と冷却温調用水

2.可児市における回収率

1.回収率および回収水と冷却温調用水
回収率は、使用用水量全体(合計)に対する回収水量の割合である。
回収水は工場の工程内を循環している水である。したがって、回収水量は計測することができない。回収水量は、水量を計測したのではなく、全使用水量(つまり合計水量)から回収水以外の補給水の水量を差し引いて計算上求めた水量である。
回収水は、使用水を循環再利用した水であるから、その水源は用途別の使用水である。再利用しやすいのは、工業統計の分類の用途別用水のうち、温度調整に用いられる冷却用水と温調用水、合わせて冷却温調用水である。これらは、基本的に冷やせば使用できる状態に戻って、再利用が可能となる(製品処理用水、洗浄用水は、再利用のためには、使用後の廃水を再利用できる程度に浄化処理しなければならない)。
したがって、理論上は、冷却温調用水は100%回収が可能である。そうすると、冷却温調用水の全用水量の割合を検討すれば、どの程度の回収率が可能であるかをみることができる。また、水源別用水量と用途別用水量は等しいので、冷却温調用水量と回収水量を比較すれば、実際は冷却温調用水のどれほどが回収されているか、将来回収率の向上は可能か、どの程度可能かをみることができる。
大垣地域の回収率は、1990年(平成2年)は33%、2000年(平成12年)は37%である(甲14、乙49、51)。冷却温調用水率は、1990年は73%、2000年は67%、回収水量/冷却温調用水量は、1990年は45%、2000年は55%である(甲14)。大垣地域では、回収率は30%台と一般的水準からみて低いが、冷却温調用水の半分程度しか回収して再利用されていない。その理由は、補給水の96〜97%と殆どを地下水に依存しており、地下水利用のほうが回収するよりも安価だからである。補給水における地下水依存度が大きいのが回収率が低い理由である。

2.可児市における回収率
被告らは岐阜県発行『統苑』の乙49〜52を提出する。同じ岐阜県の可茂・益田地域の回収率は、1990年は32.1%、2000年は32.8%である(乙49、51)。そして、地下水依存度(乙49、51の下表によれば、「地下水依存度」とは、井戸水(地下水)の使用水量に対する割合である)をみると、大垣地域では1990年は64.5%、2000年は60.9%であり、可茂・益田地域では1990年は6.1%、2000年は5.9%であって(乙49〜51)、両地域は、「地下水依存度」では大きな違いがあるが、回収率は30%台で同程度であるので、地下水に依存しているかどうかは、回収率やその向上に関係がないと言いたいようである。
しかし、上記したように、回収水は冷却温調用水が回収再利用されるのが通常であり、大垣地域の回収水/冷却温調用水は50%台であり、大垣地域の回収率30%台は、回収可能なもののうち半分程度しか回収利用されていおらず、あまりにも低いことが明らかである。
被告らが大垣地域の対照に用いている可茂・益田地域を、資料である岐阜県発行『統苑』の乙50(1990年)、乙52(2000年)によって見てみよう。可茂・益田地域の使用水量の大部分は可児市のものである(乙49、51)。
可児市では、使用水の用水量合計とその主要な水源別および用途別内訳水量は以下の通りである。
可児市では、確かに、回収率F/Aは30%台と低い。しかし、製品処理洗浄用水率G/Aが60%前後であるのに対して、冷却温調用水率J/Aが30%台である。用途別用水量のなかで、廃水が汚れていて回収再利用が困難な製品処理洗浄用水の割合が高いのである。一方、回収再利用の容易な冷却温調用水についてみると、回収水/冷却温調用水F/Jは100%を超えている。冷却温調用水はすべてが回収利用されている計算になるのである。
そして、井戸水の割合が2%と低いのに対して、工業用水率B/Aが40%近くある。可児市では、工業用水道依存度が高いのである。このように、工業用水道依存度が高くなると、回収可能な水、つまり、冷却温調用水の回収が高まり、回収率は、理論上可能な冷却温調用水率まで高まり、むしろ、それ以上の率になる。これは愛知県尾張地区の尾張工業用水道においても見られた現象である。
被告らが示した岐阜県発行『統苑』の乙49〜52の可茂・益田地域の資料は、工業用水道依存度が高くなると、回収再利用が進み、回収率は、冷却温調用水率よりも高くなることを明らかにする重要な資料である。つまり、地下水揚水規制などによって水源が地下水から工業用水道になると、回収水量は冷却温調用水量よりも多くなる、つまり、回収率は冷却温調用水率よりも高くなるのである。また、被告岐阜県知事は、このことが示されている資料を自らが長を務める岐阜県で発行して保有しているのである。つまり、被告梶原は職務上このことを解っているのである。



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