徳山ダム建設中止を求める会・事務局ホームページ



岐阜県の予測と大垣地域の実績・計画との乖離

1.市町には新水源を必要とする予測はなく、水源確保に伴う負担の認識は存在しない
 「徳山ダム建設中止を求める会」は、2001年以降、こうした岐阜県の「意向(=徳山ダムの水が要る)」の根拠を質してきた。しかし県からは「地元の意向」等のあいまいな回答しか得られなかったので、2002年前半に、徳山ダムからの水道水が供給されるとされる1市13町を全て訪ねて、聞き取りを行った。14市町すべて「不足するという予測はない」「県から何もきいていない。負担については全く分からない」とのことであった。
「水源が複数あるのは良いことだ」という抽象的かつ消極的な「徳山ダムの水必要」論を述べたところもあったが、全くもって水道事業者としての責任を持ったものでは無かった。すなわち、徳山ダムからの水を水源として確保するには、ダム建設費及び取水・導水・浄水施設の費用を、水道事業者(市町)が−結局は水道料金として地域住民が−負担しなければならないという、当然のことをまるで考えていない無責任な放言としての必要論でしかなかった。
 02年9月「岐阜県が徳山ダムからの水道水が必要とする根拠は『岐阜県水資源長期需給計画(1994年)』である」とのこと。そのバックデータや算出根拠を問うと長らく待たされた後の回答が「数値は、各水道事業者(市町村)ごとに積み上げた数値を元に作成されて市町村によって異なっており、一概に答えることはできません。また、根拠資料の存在は、調査しなければ分かりません。」だった。重ねて情報公開請求をすると、2003年1月29日、「岐阜県水資源長期受(ママ)給計画のバックデータ(大垣地域の上水道について)に対する回答
・・・・公文書の公開については、次のとおり非公開にすることとしましたので回答します。
公開をしない理由:岐阜県情報公開条例第6条第6号に該当
(理由)公開することにより、事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがある情報」との回答。

2.根拠たる「岐阜県水資源長期需給計画(1994年)」と実績との乖離
 これまで岐阜県が「徳山ダムの水が要る」という根拠としてきた「岐阜県水資源長期需給計画(1994年)」は、1990年(H2年)を基準年として2010年(H22年)を予測したものである。同時に途中の1998年(H10年)の予測数値も出してある。従って1998年の実績を踏まえて新たな「水資源長期需給計画」を策定することを予定していたと考えられるが、現在になっても新たな「計画」策定されていない。
☆ ここで「大垣地域」とは徳山ダム新規利水の供給先とされる下の1市13町を指す。

大垣市 <安八郡> <揖斐郡> <海津郡> <不破郡> <養老郡>
安八町 揖斐川町 海津町 垂井町 養老町
墨俣町 池田町 平田町 関ヶ原町
神戸町 大野町 南濃町
輪之内町

☆ 特に断り書きのない場合、「予測」とは、「岐阜県水資源長期需給計画(1994年)」のに記載された1998年数値を指し、「実績」とは、「岐阜県における水道の概況」(岐阜県)及び「水道統計の移り変わり」(大垣市)の1998年数値を指す。
☆「岐阜県水資源長期需給計画」を「需給計画」、「岐阜県における水道の概況」を「水道の概況」と略す。


(1)岐阜県水資源長期需給計画(全県)と実績との乖離

- 1990(実績)  1998(予測) 1998(実績)
人口(千人) 2,069 2.130 2,116
給水人口(千人)*1 1,879 2,031 -
            *2 1,580 - 1,704
一人一日平均給水量(L/人・日)*1 373.8 425.4 -
                       *2 380 - 381
一人一日最大給水量(L/人・日)*1 477.8 588.2 -
                       *2 485 - 462

*1 「需給計画」=給水人口は上水道+簡易水道+専用水道。他もそうであろうと推測される。
*2 「水道の概況」=上水道のみ


1990→1998の伸び率(%)比較

- 予測 実績
人口 2.9% 2.3%
給水人口 *1 8.0% 5.9%
        *2 - 7.8%
一人一日平均給水量 (*1) 13.8% (*2) 0.2%
一人一日最大給水量 23.1% △ 4.7%


(2)大垣地域における岐阜県水資源長期需給計画と実績との乖離

- 1990(実績) 1998(予測) 1998(実績)
年間給水量(百万m3/年)*1 62 83 (52)
                  *3 51.76 - 55.17
                  *2 41.69 - 45.57

*1  岐阜県水資源長期需給計画は、年間給水量を「一日最大給水量×365日」で表している。あり得ない数字であり、当然に実績とは大きく異なる。そのような数値を「計画」に用いたことそのものが大きな疑問である。
*3は、「水道の概況」を使って、大垣地域の上水道のみで「一日最大給水量×365日」を算出した場合である。1998年は、「水道の概況」からは大垣地域での1日最大給水量(m3)は出ないので、大垣地域の年間給水量を全県の負荷率で除して「一日最大給水量×365日」に近いものを算出した。


1990→1998の伸び率(%)比較

- 予測 実績
年間給水量 (*1) 29.6% (*3) 6.5%  (*2) 9.3%

(3)岐阜県水資源長期需給計画(大垣地域)と大垣市水道第4次変更計画(「計画」)との乖離

- 1990(実績) 1998(予測) 1998(計画)
大垣地域年間給水量(百万m3/年)*1 62 83 -
大垣市年間給水量  (千m3/年)*3 24,284 - 25,970
                       *2 20,564 - 20,779


1990→1998の伸び率(%)比較

- 岐阜県予測 大垣市計画
年間給水量   (*1) 29.6% (*3) 6.9%  (*2) 1.0%

参考:大垣市水道第4次変更計画は進んでいない
 大垣市は第4次変更計画(H6-H15)は、老朽水道管の交換等により、極めて低い有収率(有収率は、水道事業の効率性を表す。1995年の東海地域の平均有収率は89.4%である)を向上させることで、水源である地下水の揚水量を増やすことなく、給水人口増に対応しようとする計画である。現実には工事は大幅に遅れている(「計画」によれば、1998年の有収率は77.4%となるはずであったが、実績では69.7%、計画での2002年の有収率は83.5%だが、実績は71.6%にとどまっている。給水人口の伸びが計画より遙かに小さいので、料金収入が伸びず原資が不足していることと、急ぐ必要がなことの両面の原因があるであろう。

- 1990(実績) 1998(計画)  1998(実績)
給水人口(人) 139,076 150,706 149,394
一日平均給水量(m3) 56,341 56,928 60,536
一人一日平均給水量( L/人・日)  405 378 421
一人一日最大給水量(L/人・日) 478 472 493
有収率(%) 65.4 77.4 69.7

 こうした状態である大垣市が徳山ダムからの水を水道用水として使う(取水・導水・浄水施設を新築する必要がある)ことを想定するのは、全く非現実的である。


                            (資料作成:近藤ゆり子)


2003.10.21編集


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