やめよ!徳山ダム No.66 (2006. 1.30)


『生態系の傘』イヌワシ・クマタカを保全する
  施策なしに、湛水開始を強行するな!

 2005年11月9日に水資源機構徳山ダム建設所、11月21日に中地整河川部を訪れ、要望書(上田代表の力作)を手渡しました。
☆ 日本は「生物多様性条約」を批准し、絶滅危惧種の保全を国際的に約束している。湛水という自然大改変にあたり、国として絶滅危惧種であるイヌワシ・クマタカの棲息を保全する施策はあるのか? 
☆ 自然生態系を大きく損なう試験湛水を、このまま開始してはならない。


「村瀬惣一さんを偲ぶ会 ― 遺作パステル画展」

 清流を腐臭漂うまで汚濁させ川の生命を奪って、なお周辺に異質な姿をさらし続ける「長良川河口堰」の建設差し止め運動の旗を振り、全国の市民の心を揺さぶって建設反対の輪を広げた「村瀬惣一」さんが去年3月、82歳で亡くなられた。徳山ダム建設反対運動の要でもあった。早いもので間もなく一年になる。不条理に体力を奪っていく病と厳しい裁判闘争の日々は、苦しさに満ちていたに違いない。壮絶だった。闘争半ばでの無常は、過酷であることに余りある。村瀬さんは、物静かで穏やかな笑みをたたえて話しかけるのが常だった。しかし、係争相手の関係事業者側と直接に対する際は、胸を張り、迫力のある声で、若い行政職員らに事業の誤りを激しい調子で訴え続けた。そこには、世に云われた「むらそう」の姿があった。「だれのための行政か!誤りに目を閉ざしてはならない―」、言葉の外に聞こえてきそうだった。村瀬さんは、日本が戦争をしていた当時、戦車隊の陸軍少尉として中国に従軍した。「官僚の暴走を許してはならない。今も官僚の体質は変わっていない」と話していた。無責任に公共事業を推し進める官僚を信用していない。行政職員と対するときは余計に力がこもった。戦争を引き起こす誤りを犯した官僚と無駄な公共事業を強行し国民行政を誤る今の官僚とが重なり合ったに違いない。こうした激しい闘争の一方で絵を描くことを趣味としていた村瀬さんは、長らく「パステル画」にその才能を傾注した。そこは静謐の世界だった。自らについて多くを語ることのなかった村瀬さんのパステル画を知る人は多くない。遺された作品は、真に村瀬さん存在そのものの「正しく、潔く」在ることを語っているかもしれない。自由・平等・博愛を標榜するフランスに憧憬し、その風景を表現したパステル画など約30点を展示して、優しく人権とは何かを語っていた村瀬惣一さんを偲びます。

2006年3月21日(祝)/JR岐阜駅2階(東)ハートフル・スクエアーG・中研修室/11:00〜18:00《15:00〜茶話会》(予定)/入場無料・カンパ歓受。

1.保全策の鍵−内部構造
 生態系において食物連鎖の頂点に立つ大型猛禽類(イヌワシ・クマタカ・オオタカ)は環境の変化の影響を受けやすく絶滅が危惧されている。大型猛禽類の存在は、その生態系を構成する多様な生物相に支えられていることから、生態系の健全性を示す指標と考えられている。(略)
2.クマタカの雛の死が示すもの
 今年(2005年)の5月下旬、ダム下流の町道脇で弱っているクマタカの雛を見つけて保護し、餌を与えて体力を回復させて巣に戻したが、トビの攻撃を受けて死亡した。(略)
3.日本のイヌワシの危機
 大型猛禽類は『生態系の傘』(アンブレラ種)である。保全目標種(イヌワシ、クマタカ)の棲息環境全体を保全することにより、そこに棲息する他の種の保全も同時に達成されるという意味においてである。
 イヌワシは絶滅の危機にある。繁殖の失敗には多くの原因が重なって、イヌワシのいなくなった生息地が増え始めている。1996年から2000年までの5年間では9県で10か所も(いなくなった生息地が)増えている。日本列島に連続して生息域が繋がっていたのに、今では虫食い状態になって九州の北部が飛び地化し、伊吹山脈が南限となりつつある。その一角の徳山で繁殖が止まると、その影響は東北地方にまで広がる恐れがある。繁殖成功率も1991年から低下し始め、1997年には16%となり、種の保存が危ぶまれるほどのレベルにまで陥っている。
 徳山ダムの水没予定地内に生息する2番いのイヌワシのうち、繁殖成功例は▽96〜97年1件▽97〜98年、98〜99年各0件▽99〜00年2件▽00〜01年0件▽01〜02年1件▽02〜03、03〜04年、04〜05年各0件となっている。
 イヌワシの主な餌は、ノウサギ、ヤマドリ、ヘビ類である。森林性である日本のイヌワシが十分な餌を獲得できるかどうか餌動物の生息状況を調べる必要がある。ノウサギの糞粒数の計測、植生の調査などによるイヌワシの採餌行動の調査が不可欠である。草原性の環境が少ない日本では、見つけやすく捕獲しやすい場所に恵まれていない。冬期の落葉広葉樹林あるいはギャップと呼ばれる空間、林道など、翼を開くと2b近いイヌワシが飛び込める空間が必要である。しかも餌動物が生息していることが眼目となる。(中略)
 これらの餌がバランスよく維持されていくためには、ヤマドリにはドングリ類の多い落葉広葉樹林の広がりが必要。ヘビにはカエルの多く棲む水辺が、ノウサギには草本低木が茂っている地域がかかわってくる。
 試験湛水が始まると、自然環境はますます悪化して、大型猛禽類が頼りにしている谷の地形、植生、餌動物などが繋がりあっている生息・繁殖環境を、ダムの底に沈めてしまうことになる。
 揖斐川の源流域徳山は、生物多様性(健全な生態系)保全のためには、他に類をみない重要なエリアである、北方系のイヌワシの南端にあたるここは、南方系のクマタカが共存して生息している。源流地域の環境は水準以上でなければならない。
4.要望(略)
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 なお、徳山ダム集水域のワシタカ類調査につき、1996年以来「国土環境(株)」に対して徳山ダム建設所が支払った金額は、総額7億6500万円である。


徳山ダム裁判控訴審 大詰めへ

住民訴訟 3月15日(水)判決 13:10 名古屋高等裁判所
 この後、すぐに報告集会を行います 
 前号でもお知らせしたとおり、高裁の裁判長は「計画が変わったのだから、新たに監査請求し直すべき。それをやっていないから却下」との判決をする心づもりのようです。
 事業者が、ちょこちょこと計画変更したら、住民訴訟は全部「一から仕切直し」なんてバカな話はない。織田が浜埋立訴訟最高裁判決でも、当初の住民監査請求は、計画変更後も「活きている」としています。予想される判決だと、重大な判例違反ですので、上告します。
 報告集会の場で上告の委任状を書いて頂けるとありがたいです。この原告となっておられる方は、印鑑をお持ちになっていらして下さい。

行政訴訟 3月17日(金) 11:00〜 名古屋高等裁判所
 証人採用をしなかったので、高裁裁判長は、結審を予定しているようです。弁護団が、口頭でこの裁判の本質を述べます。「強制収用という形で、私権を強制的に剥奪する以上、事業の必要性は厳格に検討されなければならない。処分庁(国交省)は、なすべき検討を行うことなく、誤った判断をした」
 徳山ダムは、水資源開発促進法に基づいて、水資源機構(前水資源開発公団)が事業者である、水資源施設です。新規水需要がなければ、徳山ダム建設事業は、成立しない事業です。
 2004年のフルプラン全部変更(これも問題大ありですが)で、国は自ら、従来の「水需要予測」が大間違いであったことを認めたわけです。この大間違いは1998年の事業認定処分時にも、なすべき検討をしていれば分かったことでした。
 行政が、真っ当に「なすべき検討」を行えば、多くのムダで自然破壊的な「公共事業」は止まるはずです。このことをなおも訴えていきましょう

裁判所は行政の下僕?

 1月13日の毎日新聞朝刊<岐阜・徳山ダム建設:民事訴訟で書記官が原告中傷 「利権に食いつく」メモ記述>記事は、その日の夕刊で各紙が後追いをしました。
 「お上に楯突くような裁判を起こすのはどんな連中だ?」という問題意識が裁判所にあることを、この書記官「メモ」は露呈しました。「法廷外の情報で心証を形成してはならない」はずの裁判官が、原告の思想や代理人の他の事件の情報を欲しがる・・・
 この岐阜地裁には、「荒崎水害訴訟」が係属しています。05年3月、被告(岐阜県)は準備書面で「原告弁護団の大半は、本件以外の訴訟において、越流堤と同じ洪水調節機能を有する徳山ダムの建設に反対している。」と述べました。まず、「原告弁護団の大半は〜」は大嘘です。荒崎水害訴訟弁護団5名、徳山ダム裁判弁護団6名で、重なる弁護士は一人だけ(被告代理人も百も承知。)また、代理人(弁護士)が、他にどのような事件を担当しているかについて言及するのは @ 無関係で的外れ A弁護士同士の「マナー」違反、「品が悪い」。
 このような「明らかな嘘」「品の悪い」ことを何故被告が述べたのか、そのときは「?」でしたが、今、分かってきました。裁判所に予断を持たせようとしたのです。お上に楯突くのが好きな「偏向」弁護士の担当する事件だ、と。そして、「裁判所」は、そういう「予断」を持つ体質があるところなのだ、ということが、他の訴訟でも露わになってきました。
 あらゆる場で、立憲主義の原則が蝕まれています。だからこそ、私たちは、あらゆる場で「立憲主義の原則」を実現する闘いを展開していかねばなりません。


日弁連公害対策・環境保全委員会35周年記念連続企画シンポジウム

河川管理と住民参加  2005年12月3日(土)  <報告/感想>

<特別報告> デイビッド・L・ウェグナー氏 (岩波書店「ダム撤去」執筆者)
<パネリスト> 布村明彦氏(国土交通省河川局河川計画課長)/竹村公太郎氏(立命館大学客員教授・元河川局長)/大熊孝氏(新潟大学工学部教授)/宮坂正彦氏(砥川流域協議会座長)/在間正史弁護士(日弁連公害対策・環境保全委員会委員)
<事例報告> 宮坂正彦氏/姫野雅義氏/奥島直道氏/嶋津暉之氏

 パネルディスカッションで、「河川局の言い分」を沢山引き出せたのが大きな「成果」だと思いました。以下近藤の感想の一部。
 布村河川計画課長は河川法改正以前から、河川局は−そして自分は−「環境を重視し」「住民との協働に力を入れて来た」ということを縷々話した。→(a)河川局は「環境」を「多自然型川づくり」に限局しようとしている。「川のクリーン作戦−ごみ拾い」をもって「市民との協働のモデル」にしたがっている。 (b)1997年の河川法改正は、明らかに「ダム建設を強行させない」市民・住民の運動の盛り上がりの中で存在した。それを「多自然型川づくりしてきた実績の上で」という"すり替え物語"を作っている。
 竹村公太郎氏の「吠え」。→「住民意見の反映さは良い。けれどやはり河川管理者が決めるしかない。『住民が決める』では、被害があったときに誰が責任をとるのだ?」・・・これは、1996年7月11日に「24時間河川のことを考えているのは、我々河川管理者だ!」と昂然と言い放った姿そのもの。しかし河川管理者は「責任」なんてとっている? 大東水害訴訟最高裁判決をたてに、「責任」を放棄し続けているではないですか!


2005年 会計報告

会費・カンパ

1,021,700

弁護団へ

  500,000

-

-

他団体へ

47,780

-

-

通信費

145,387

-

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送料等

171,520

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-

消耗品費

59,639

-

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資料費

98,254

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印刷機器等

150,000

収入   1,021,700

支出   1,172,580

▲150,880

単位/円

2004年からの繰り越し 現金

69,134

郵便局口座

439,317

銀行口座

5,759

2005年への繰り入れ 現金

35,373

郵便局口座

328,107

銀行口座

5,759

「やめよ!徳山ダム」通信の発行回数を減らして、送料等を抑えましたが、印刷機を変えざるをえず、赤字が出てしまいました。湛水阻止に向けた闘い、上告審、そして「木曽川水系河川整備計画策定」に向けた市民の結集の軸を形成する、という役割もあります。引き続き、会費・カンパをお願いいたします。


徳山ダム建設中止を求める会 代表:上田武夫
                      編集責任:近藤ゆり子


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