やめよ!徳山ダム No.63(2005. 4.20)


村瀬惣一さんご逝去

徳山ダム建設中止を求める会・事務局 近藤ゆり子

 3月16日19時30分頃、某新聞社の記者から「村瀬惣一さんが亡くなられたようですが、何かご存じですか?ご自宅に電話しても誰も出られないので…」という電話を受けた。何も耳にしていなかったので非常に驚き、あちこちに問い合わせをした。
 以下は、近藤が16日23時29分にEメール発信したものである。
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 長良川河口堰に最も早い段階で警鐘を鳴らし、日本の公共事業のあり方を変える闘いの先頭を走り続けた、岐阜市の村瀬惣一さんが、15日に亡くなられました。
 1996年末か翌年初めに手術をされた後、「癌の転移があり、治療している」旨明らかにされていました。非常に体力を消耗する治療を続けながら、私たちと共に闘い続けて来られました。2月の徳山ダム裁判控訴審口頭弁論に初めて「無断で」欠席された…ある意味、私たちも「覚悟」していたことです。

 村瀬さんは、陸軍少尉で敗戦を迎えました。
 「悲惨な結果となることを重々分かっていながら暴走した軍部。同じ構造が官僚組織に生き残っている。官僚は『無駄』と知ってから、その事業を継続するめに最大限の力を注ぐ」…この辺りは多くの人の認識ですが、「公共事業に独立採算制を導入すべき」「郵貯・簡保を財源としてを公共事業に投入することの問題性」については、最も早い段階で(先駆的に)指摘されていたと思います。

 平和主義と無駄な公共事業の暴走を止めることを、まさにこの国のConstitution(単に「憲法」という意味だけで覆えないので、あえて横文字を使いました)の根元に関わる問題として提起され続けてきました。その深い意味は先進的すぎて、「その時点」は理解されないことが多かったようです。しかし、彼は、組織での地位等に恋々とすることなく(社会党岐阜県連の幹部でしたが、当時の多数派と対立して"除名"されたそうです)、自らのお考えを貫かれ、生ききりました。

「小泉立憲主義決壊政権の暴走状態」の今、この時期に…無念です。

 ご遺族から私たちにご連絡がなかったことに「村瀬惣一さんらしさ」を感じています。「その時間、もっとやるべきことがあるだろう!!」と村瀬さんに背中をどやされている気がします。それでも、在間正史弁護士、田中万寿さんとともに私も告別式に行きます。


 長良川河口堰の闘いで村瀬さんの書かれた文を中心に「長良川河口堰裁判〜たすきをつないで30年〜」(仮称)文集を田中万寿さんがまとめて下さっています。小部数ですが、お申し出頂ければ実費でおわけいたします。


無理な突貫工事が犠牲者を生む

〜4月5日、徳山ダム工事現場で労災死亡事故〜

 徳山ダム建設工事に突出した巨額予算をつけ、昼夜兼行の突貫工事を進めていることが、この事故の背景にあることは間違いない。

 当会HPに03年11月に匿名の書き込みがあった。(「やめよ!徳山ダム」55号参照)
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 私は今徳山ダム洪水吐けJVで仕事をさせてもらっている作業員です。無資格で当たり前のように仕事を強要します! 監督所はなぜパトロールとかで資格証の確認をしないのだろう? このままではそのうち死人がでます。野生の猿、鹿、うさぎなどダンプにひかれても知らん顔。最低だ! 何が環境保全だ! 破壊しまくってる! こんなダム中止だ!
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 5日後に私たちは工事現場に出向いて「真っ黒排気」を確認して水機構に是正を申し入れた。「適正にやっております」という返事だったが、04年11月に確認したときは、排気は見た目は明らかにきれいになっていた(実は不適正だったのを裏で「指導」したのだろう)。
 「見た目」では分からない安全無視の作業については是正措置はとられず、ついに犠牲者を出した。この責任は下請けの建設会社のみにあるのではない。


徳山ダムに巨額の補正予算 〜「05年内に堤体完成を目指す」〜

(1)60号から徳山ダムの04年度予算のことをお伝えし続けている(前号では「治水予算の最優先は「徳山ダム」なのか?」)
 「7月22日に、治水特別会計の項の間の移用=徳山ダム建設を優先するために揖斐川の最優先の河川改修費を回した」ことで「削った河川改修費」は、現在「保留解除」で遅れながらも一応手当されつつある。そこで入札・契約状況をウォッチしてみると、とにかく落札率(落札価格/予定価格)が高すぎる。「98.9%、94.2%、99.6%、96.1%、95.8%、98.3%」(これで全部)。まるで「官製談合でございます」と看板を掲げているようなものである。
 なお、岐阜県への「砂防費補助」4億6500万円は削られたまま復活していない。
(2)この間のやりとりなどで分かったのだが、岐阜県の補助河川改修事業の年間予算規模は、2001年度が約110億円、03年度は約60億円、04年度の当初予算は約40億円である。こうみると、「徳山ダム事業実施計画変更」で、徳山ダムの治水分の増額(増額分だけ!)が「国=627億円、岐阜県=187億円、三重県=39億円、、愛知県=42億円」というのがいかに巨額であり、岐阜県にとって負担の大きいものであるかがよく分かる。
(3)2月1日に成立した「災害予防対策をテーマにした補正予算」で「徳山ダム:126億3300万円」つけた。それに伴い、岐阜県は3月議会に補正予算案として「25億2300万円」を出している。04年は揖斐川だけでなく長良川(岐阜市内)でも大きな被害を出し、飛騨地方では「戦後最大級」の台風被害を被った。これを考えると「徳山ダム偏重が甚だしい、異常」と言える。この補正予算で、堤体完成は半年ほど早まるそうである。
(4)この補正予算では、国交省河川局分として1880億円規模。ここでも「徳山ダム:126億3300万円」の比重は大きい。全国の危ない川の改修が放置され、揖斐川流域住民にとって有り難くもない徳山ダムに、限りある治水予算の多くが投入されている。
 環境と人権を脇におくとしても(脇における問題ではないが)、ダムは途方もない「金食い虫」で、結果的に全国の「水害被害の防止・軽減」の逆を行くのである。
(6)05年度の徳山ダム予算(国)は約260億円、これに伴う岐阜県の負担分(ほぼ全額「治水」負担分)は45億7000万円である。岐阜県の他の治水予算を全部合わせたよりもずっと大きい。


徳山ダム裁判行政訴訟/住民訴訟 = 5月12日(木)13時30分〜

(名古屋高裁1F法廷:裁判所ロビーからでなく、建物西側から入ることになっています)


徳山ダム補償金を巡る水機構の不祥事、また

 1月10日に朝日新聞が、「補償費の二重払い」を報じ(*1)、そのお金の出所が本体工事を請け負うJV(*2)であることを報じた。徳山ダム建設所長と担当副所長は直ちに更迭され、水機構理事長以下9名の処分があった(処分は1月28日)。
 しかし、実はこんなことは日常茶飯事で、他にいくらででもある。「クツ尾の杉:1150万円の肩代わり」を中日新聞が2月2日に報道した(続報は朝日新聞に3回載った)。
 3月30日、水機構の青山理事長が「1150万円の肩代わり」も認め、また処分を出した。が、「他にもある」話がフツフツと聞こえる。問題はくすぶり続けるだろう。
 こうした不明朗な金銭授受の元を辿れば、結局は「人が現に暮らしている歴史ある山村を、『下流域の発展(=カネ・モノの増大)のために』水底に沈めてしまう」という人権無視の非道=「ダムという理不尽」の根本に行き当たる。

*1:朝日新聞の報道では多くの人が「徳山村の地権者の人たちが横車を押して不正なお金を取った」という読み方をした。この報道には、徳山村の方からは怒りの声が寄せられた。この「1500万円」は、先に藤橋村・島中村長が勝手に契約をした(山林の権利関係は複雑。裁判所でも慣習法が大きく認められる)際の425万円と合わせて、地権者に分配された(受取拒否の方もいる)。誰かの懐に行方不明になったものではない。が、不明朗・不透明には違いない。水資源機構が、先の契約が「権利者を無視した誤ったものである」ことを認めて、契約をやり直すべきであった。しかし「誤ったとか絶対に認めない」体質ゆえ、問題を隠そうと、最大の受注業者であるJVに"紙袋入り"のお金を回させた。「隠す」目的ゆえ領収書もない・・・。
 全ては「下流域の発展ためには山村など潰せ」という「ダムという理不尽」ゆえである。これは「国益のためには死者が出てもやむを得ない」という理屈と通底している。「イラクに行けば1日3万円の手当、死ねば9千万円貰える」から自衛隊員は喜んでイラクに行くのか?
*2:第1回目は入札はあった:だが2回目以降は「随意契約」である。機械の持ち込みにかかる費用などを考えれば、同じ業者が完成まで請負うのが最も経済的であろうことは理解できないでもないが、「随意契約」ゆえの不透明さ−何とでも補填できる−が「電話1本で1500万円が紙袋で届く」ゆえんである。

荒崎水害訴訟:原告団がパンフ作成 (1部100円)
 荒崎地区は、長年「徳山ダムさえ出来れば洪水はなくなる」と言われ、徳山ダム推進署名を集めてきた地区です。原告団は必ずしも荒崎地区の全世帯から支持されているわけではありません(連合自治会は訴訟に反対している)原告団を支えるために、是非(まとめて)購入して下さい。<当会事務局にお申し越し下さい。>

長良川河口堰運用10年・・・アユ激減/調査打ち切り
 ☆ 長良川のアユ  8割減(岐阜県調査:ピークの1992年と比較)
 ☆ 3月10日、国交省・水機構の「第三者機関・中部地方ダム等管理フォローアップ委員会・堰部会」はアユ遡上調査の打ち切りを決める−「堰の影響ない」)


4月29日(祝) バスツアー導水路問題現地見学会
 徳山ダムを「有効なものにする」ために国交省は「木曽川水系連絡導水路」事業の調査費を予算化しています。木曽川水系の水問題の解決を誤らせる導水路事業について学ぶため、既に運用されている愛知用水と名古屋市上水道の導水路施設を見学する企画です。
名鉄犬山線「犬山」駅東口9時集合/17時「大曽根」駅で解散 参加費:3000円
  お申込は「徳山ダムをやめさせる会」名古屋水道労組気付 .052-971-3105

 恒例:徳山村キャンプ  8月20日(土)〜21日(日)
もし06年春から湛水が開始されれば、もとの集落跡での最後のキャンプとなってしまいます。詳しくは次号にて

「やめよ!徳山ダム」 徳山ダム建設中止を求める会 代表:上田武夫
    編集責任:近藤ゆり子

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