やめよ!徳山ダム No.61 (2004.11.15)


台風23号で また荒崎地区に浸水被害

 10月20日の台風23号は、岐阜県中に災害をもたらしました。これまで台風による災害の少なかった飛騨地方が大災害に襲われたのが特徴的です。

<揖斐川沿川での状況は次の通り>
 20日昼前から降り始めた雨は、大垣では夜半にはほぼ上がった。総雨量は大垣市万石で210mm、大垣市赤坂で290mm、垂井町谷で343mm、上石津町下山で245mmなど。12時間程度の平地の雨量としては大きい方だろう。山間部は徳山で293mm、川上で169mm、根尾で278mm。これらの地点としては特に大雨ではない。空ダム状態だった(貯水率1.8%)横山ダムは貯水率51.4%(20日24時)まで貯め込んで十分に「役立った」。「横山ダムの上流の徳山ダムが完成していれば・・・」とは、さすがに誰も言わない。
 当会事務局の北側の牛屋川の水位は滅多にないほど上昇(20日19時で竹田橋下20cmまで上昇。水はほとんど動かない)。「荒崎地区が危ない」と分かった。国交省の「川の防災情報」はこういうときは「アクセス多数」で使えない。岐阜県河川課の防災情報にアクセスした。荒崎排水機場地点を注視。「越流した」とは載らないが、水位を計算すれば越流堤の天端を超えたかどうかは分かる・・・。18時には越流が始まっていた。<岐阜新聞記事へ

荒崎地区の人の話
 20日15時〜16時頃から内水によって道路の冠水が始まった。大谷川右岸越流堤からの越流は上記避難勧告(17:40)と同時くらい。越流が止まったのは21日8時20分頃。  土嚢積みの仮囲い堤を超えて住宅地域に水が入ってきたのは20日23時頃。大垣市は「土嚢積みによって浸水する時刻を遅らせることが出来た」というが、水が引くのも遅らせたのであり、21日の夕刻になってまだ水は引ききっていない。大垣市が購入したポンプ車が3台出て排水したが、ほとんど役に立っていない。床上浸水=16棟、床下浸水=364棟。
 なお、荒崎水害訴訟第1回口頭弁論が、11月18日(木)10時10分から岐阜地裁で開かれます。被告・岐阜県は驚くような答弁書を出す、という話が伝わっています。それは、もしかすると、水害訴訟の新たな地平を切りひらきうる、ということかもしれません。

11月30日(火)10時00分〜 徳山ダム住民訴訟控訴審

公金支出差止訴訟です。新フルプラン−新岐阜県長期水需給計画に基づく岐阜県の工業用水負担の差し止めを求めるため、資料請求をします。名古屋地・高裁合同庁舎2号法廷(大きい法廷で開かれます)



「提言」を広げましょう!

 香川県小豆郡内海町で、「水源開発問題全国連絡会第11回総会」(10月30日)が開催され、全国各地の水害の報告を受けて緊急に「提言」を作成しました。翌日に開催された及び「小豆島『海と山』からの水害を考える全国集会」(山陽新聞記事参照)でも500名を超える参加者の満場一致で採択
されました。
 11月1日に、内海ダム問題現地、肱川−山鳥坂ダム問題現地住民らと水源連事務局など27名が、香川県及び国交省四国地整を訪れて手渡しました。また、国交省河川局その他河川管理部局の多数にFAXしました。

   提 言
<治水にダムは無用>
 今年も各地で異常降雨による激甚な水害が発生しました。その原因を探ると多くの共通点が見いだされる。
1.想定規模を超えた豪雨に対しては、ダムは無力どころか、大きな災害をもたらすものである。
2.これらの災害は、ダムに依存してきた体質が、河道整備を遅らせたことに起因することである。
3.森林の荒廃が、保水力の低下をもたらし、併せて、流木による水害被害を拡大した。
4.これらの洪水被害で、構造において欠陥のある堤防が各地に存在し、それが破堤を 引き起こし、甚大な被害をもたらした。
 これらの事実を河川整備計画において、基本とすべきである。
 よって次のことを河川行政のあり方として提言する。


1)森林整備を公共事業として、推進すること。
2)ダムを前提としない河道計画を立て、早急にそれを実現すること
3)堤防を総点検し、その問題箇所の強化工事を速やかに実施すること
4)膨大なダム建設予算を、河道整備、森林整備に置き換えること。
5)住民主体で、遊水地や霞堤などの地域の特性に対応した洪水対策をとること。

水源開発問題全国連絡会 第11回総会参加者一同
小豆島『海と山』からの水害を考える全国集会参加者一同
                         2004年10月31日

 この「提言」を各地で大いに広めて下さい。そして、交渉相手の行政などにも送り(手渡し)、話し合いの土台として行きましょう。


徳山の秋の青空に“クマタカ”が舞った

 2004年11月6日(土)多分今年最後になるかもしれない「徳山ダム工事現場見学」に行って来ました。岐阜のTさんの運転で、各務原のUさんご夫妻、それに長良川を愛する会のSさんと5人で。
 ダム本体工事がどんどん進み、何だか「ダムが存在して当たり前」のような一種整然とした光景になりつつあります。10月末現在、堤体盛り立ては体積で74%まで進み、高さも100m程度になりました。

 「徳山ダム問題」に取り組む者として徳山現地を訪れるようになって、そろそろ丸9年になろうとしています(ダム問題の傍観者としてなら23、4年)・・・夫が亡くなってから、訪れることが少なくなり、行く度に光景が大きく変わっていくのを胸が締め付けられる思いで見ています。
 特に昨年6月7日、「中日新聞」が1面トップで「徳山ダム さらに1000億円超」と報じた日(*)、水公団の案内で、私たちは堤体の零メートル地点に立っていたことを痛切に思い出します。コア材を突き固める作業の傍らに、元々の揖斐川の川石も転がっていました。子どもの頃、まさにその場所の渕で遊んだOさんが「揖斐川の石だ」と呟いて拾い上げました。それを聞いて、私もいくつかの石を拾いました(大切に置いてあります)。
 ダム堤体中心部零メートル地点において、再び揖斐川の水が流れて渕を形作ることはないでしょう。取り戻せないものを失ってしまいました。
(*)「現行事業費が尽きる」のを見越して、私たちが「最後の大暴れ」を仕掛けて臨んでいるまさにその時でした。

 「工事現場見学」後、本郷(徳山)に行き、秋色の山を眺めながらおにぎりなどを食べました。もう午後2時になろうとする時間だったと思います。「出ないかなぁ」と見上げるUさんがあきらめて双眼鏡を車にしまいこんだそのとき、東側の稜線に明らかにトビとは違う鳥の影がよぎりました。すでに斜めになった陽の光を浴びて、腹の部分が一瞬白く光りました。
 いっせいに見上げて待つこと数分。また稜線から姿を現しました。飛翔の描く曲線、翼の形・・・間違いありません。クマタカです。
 ときに稜線に隠れつつ、10分以上、クマタカは私たちの視線の先を舞いました。
 8月のキャンプ(ずっと奥の「塚」で行った)では見られなかっただけに感無量です。

 戦後、一度丸裸に(皆伐)された徳山の山林は、「ダム話」ゆえに杉等の人工林に変えられた面積は少なかった・・・2次林の雑木林(広葉樹林)が育ってきました。
 その森が、イヌワシ5つがい、クマタカ17つがいという、全国にも稀に見る多数の大型猛禽類(イヌワシ、クマタカともに絶滅危惧種)を育んでいるのです。

 たとえ堤体は出来ても湛水させてはいけない。徳山の森をさらに育み、貴重な生態系を保全していかねばならない。そうした私たちの責務を、あらためて胸に畳み込んだ秋の日でした。(近藤)


《current topics》

徳山ダム堤体用コア材採取現場直下での落石 人災ではないのか?
10月31日(日)正午ごろ、旧徳山村上開田地区の農道を走行中の乗用車に道路わきの法面から大きな岩が落下、車に乗っていた徳山村出身のご夫婦が一時、車内に閉じ込められる事故がありました。奇跡的にお二人は救助されましたが、岩石落下地点の山側は、徳山ダムの堤体建設用コア材を採取が進められている工事現場で、事故は“人災”ではなかったか―、疑いは残ります。

徳山ダムを巡る河川法僭脱につき、水源連から日弁連に要請書提出
日本弁護士連合会及び同公害対策・環境保全委員会宛に、水源連から「徳山ダム事業実施計画変更における明らかな河川法僭脱につき、日本弁護士会連合会としてのご意見を示して下さい」という要請書を出しました。間もなく開かれる委員会で議題となることと思います。

籠橋隆明弁護士、「第4回日本自然保護協会沼田眞賞」を受賞
徳山ダム裁判弁護団事務局長の籠橋隆明弁護士が沼田賞を受賞されます。12月23日に東京で授賞式と記念シンポジウムが開催されます。<日本自然保護協会HPへ


編集:近藤ゆり子

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