やめよ!徳山ダム No.59 (2004. 7.20)


7/15,国交省、徳山ダム事業実施計画変更認可

野党は追加予算を許すな 国は徳山ダム建設工事を凍結せよ


声  明

なすべき議論抜きの事業費増額と河川法の脱法は許せない

徳山の森を守り、川を住民の手に取り戻そう

2004年7月16日

徳山ダム建設中止を求める会(代表:上田武夫)

 国交省は7月15日、水資源機構に対し「徳山ダムに関する事業実施計画」の変更を認可した。
 これにより「水資源開発促進法に基づく水源施設である徳山ダム(ゆえに水資源機構が建設できる):事業費2540億円」は、なすべき議論がなされないまま、「3500億円の治水ダム(利水と発電の具体的計画は一向に見えない)」に変貌した。
<河川法脱法の治水計画変更>
 利水容量を大幅に縮減してもダム規模を変えない(「有効利用」)辻褄合わせとして、洪水調節容量が100,000,000m3から123,000,000m3に増やされた。それによって揖斐川の治水安全度が大幅に向上する、国交省及び水機構はいう。ダム建設推進派は、「水は要らない」という明白な事実を糊塗するため、この治水論に乗り、あたかも「徳山ダムが完成すれば洪水がなくなる」かのように言う。しかし、これがまやかしであることは、河川技術者集団である国交省も岐阜県河川課も、先刻ご承知である。
 計画規模を超える超過洪水は必ず起こる。特に地球温暖化に伴う地球規模の「異常気象」が頻発する昨今、計画規模を超える洪水の発現率は高くなっていると考えないわけにはいかない。
 徳山ダムと横山ダムという本川上流部2ダムでは、根尾川型洪水(大垣市荒崎地区水害=02年7月10日洪水もこの型である)では、その「大きな洪水調節機能」を発揮することはできない。1968年工事実施基本計画参考資料ではっきりと位置づけられている根尾川上流・黒津ダム計画を消し去って、無理に本川2ダムに大きな洪水調節効果を負わせる「治水計画」は従来より一層危険なものになる。(中略)
 これから投じられる960億円の10分の1でも、大谷川右岸洗堰の越流地域(荒崎地区)に投じられれば、もっと安全な洪水対策が出来るではないか。これから2007年の完成までに、「徳山ダム・治水分・国費」だけで627億円、「徳山ダム・治水分。岐阜県負担」だけで187億円もの巨費が投じられることにつき、国・岐阜県の納税者は、然るべき説明を受けていない。費用対効果も含めた検討と議論は何ら存在しなかった。

8月21日、22日 恒例・徳山村キャンプ
21日(土)午後3時大垣駅北口出発。22日(日)の午後の早めの時間に大垣に帰着します。
参加費:3000円〜3500円程度(子供は無料)。食事・飲み物は準備します。
参加者、皆さんが用意するもの:寝袋or毛布。長袖シャツ。雨具など。
  <できるだけ> my箸、 myコップ、my皿  テント、シート
徳山ダム工事現場見学希望者を募ります。
キャンプ及び工事現場見学のお申込み、お問合せは、事務局・近藤まで

 河川法第16条の2の手続き一切が葬り去られたまま、事実上の「治水計画変更」がなされた。河川法の趣旨も、事業評価制度(及び事業評価監視委員会も)、水資源開発促進法(及び国土審議会水資源開発分科会)も・・・どれをとってみても国交省は自ら作った法律や制度の趣旨を、自ら踏みつけ、破壊した。
 私たちは、小泉政権の立憲政治の決壊とパラレルに進行しつつある河川行政の決壊に対して大きな憤りを覚える。
<徳山ダムは災厄をもたらす>
 こうしている間にも、イヌワシ・クマタカを頂点とする徳山の自然生態系は脅かされている。巨大な人造湖が出来てしまえば、取り返しのつかない自然破壊となる。
 徳山ダム湛水が誘発地震を引き起こすという懸念は少しも払拭されていない。(紀ノ川上流、奈良県大滝ダムの地滑り問題を見よ。住民の指摘を無視した結果、地域住民に被害をもたらしただけで、水を貯めることの出来ないダムを造ってしまったではないか)

 国交省徳山ダム建設工事を直ちに凍結させ、改正河川法16条の2の趣旨に則った河川整備計画を策定せよ!
 工事を凍結した環境下で、まともな環境アセスメントを行え! 

 川は流域住民のものであり、広く全市民のものであり、国交省や関係県市の役人・首長のものではない。川を私たち市民の手に取り戻すため、全国の心ある市民の方々とともに私たちはなお闘いを続ける。


 行政側の、4月以降の主な動きを見ただけでも以下の通りです。追加予算獲得のためのなりふり構わぬ狂奔ぶりが現れています。
☆3/30  木曽川フルプランエリア各県が需給想定調査を回答(利水は12m3/Sから6.6m3/Sに)
☆4/13 フルプラン木曽川部会第2回
☆4/27  3県1市調整会議(1次アロケ)
☆4/29  中部地整事業評価監視委員会 「新洪水調節計画」承認
☆5/12 フルプラン木曽川部会第3回
☆5/20 3県1市調整会議(2次アロケ)
☆5/31  水資源開発分科会 木曽川フルプラン原案を了承。
   中部電力が杉原ダム中止を発表。電源開発が増額(+12億円)了承 。
☆6/15  木曽川フルプラン閣議決定。
   水機構、岐阜県に事業実施計画変更に係る費用負担同意を、三重県に協議を申し入れ
☆6/22 3県1市調整会議 合意の旨、中部地整・水機構中部支社が発表
☆7/5  水機構、愛知県・名古屋市に費用負担同意を申し入れ。
☆7/8 岐阜県議会、徳山ダム債務負担行為592億円に同意。
    岐阜県、愛知県、名古屋市、水機構に費用負担同意を通知。
    水機構、国交省に事業実施計画変更認可を申請
☆7/15  徳山ダム事業実施計画変更認可


(水機構が費用負担同意や協議を申し入れた日時が異なるのは、議会に諮るかどうかの違いによる。議会に諮る県=岐阜県・三重県には「6月議会日程に間に合うように」、議会をパスする県市−愛知県・名古屋市には「議会が閉会してから」、ということ)  
自衛隊の多国籍軍編入、年金法案、日歯連資金など課題山積の臨時国会。野党はきっちりとした議論抜きに、補正予算(徳山ダム追加予算)を通してはならない。


7/13 徳山ダム裁判 控訴審第1回

名古屋地・高裁合同庁舎2号法廷は大きな法廷ですが、ほぼいっぱいになりました。

控訴人・上田武夫 陳述要約

・・・ 健全な生態系の要は生物多様性を保全することにある ・・・

 イヌワシ、クマタカの繁殖を阻害している最大要因は「棲息環境の質と量の低下」にある。このまま工事を進めてゆけば、自然環境はますます悪化し、イヌワシ、クマタカが頼りにしている谷の地形や植生、餌動物などの繋がりあっている棲息・繁殖環境をダムの底に沈めてしまうことになる。揖斐川の源流徳山は、生物多様性(健全な生態系)保全のためには、他に類をみない重要なエリアである。北方系のイヌワシの南端にあたるここには南方系のクマタカが共存して棲息している。源流地域は環境が水準以上でないと生態系は維持できない。
 保全目標種(イヌワシ・クマタカ)の棲息環境全体を保全することにより、そこに棲息する他の種の保全も同時に達成される、という意味で、大型猛禽類は『生態系の傘』(アンブレラ種)なのである。

控訴人・近藤ゆり子 陳述要約

1.原判決は日本の司法の恥辱
2.事業認定処分時以降の事情は考慮されないのか?…利水容量大幅削減
3.法治国家であることは望めないのか?…河川法脱法の治水計画変更
4.ダムは災厄を及ぼす(財政負担/自然環境−生態系/徳山ダム湛水と誘発地震)
 控訴審裁判所は、これらすべての事情も踏まえて、原審判決の誤りを正して頂きたい。

代理人・森弘典 陳述要約

第1 はじめに
 2002年12月25日原審弁論終結以降、徳山ダムを巡って大きな動きがあった。
 1 建設事業費の増額
 2 需要予測の下方修正
 3 本件事業認定処分における利水上の必要性の根拠は大きく揺らいだ。
第2 原判決の問題点
 1 控訴人が「本件事業において、新規利水目的を欠くことは徳山ダムを水公団が公団法に基づき設置する法的根拠を失う」と明確に主張してきたにもかかわらず、原審が新規利水(都市用水の確保)に重きを置いた判断をしていない点。
 2 原審が極めて広い行政裁量を認めてしまっている点。
 3 余剰の水があることが政策的に正しいとしてしまっている点。
 4 原審が水需要の結論の合理性に対する判断をしていない点。
 5 第5に、「長期的、先行的観点」を理由として、実績と予測の異常な乖離が看過されて
第3 結語
 "ここまで進んでしまったからやむを得ない"ということではなく、まさに原審も述べた「先行的」観点からすれば、"ここまでしか進んでいない今だからこそ"、この動きを食い止めるべきである。今止めなければ、建設費の負担は無駄になって回収できないばかりか、さらに必要もない維持管理費の負担を残すことになる。
 裁判所においては、今こそ司法府の役割を果たし、水機構、事業認定権者といった行政府の暴走を追認することなく、真の意味で最終的な費用負担者である国民、県民の立場に立った判断をされることを切に望む。

次回は、9月30日(木)10:30〜 名古屋高裁2号法廷 是非傍聴を!


徳山ダム湛水による誘発地震の危険は看過できない

 徳山村の方が、1970年代から懸念し、84年の長野県西部大地震(=牧尾ダムの湛水が誘発)で具体性をもって恐怖し、大切に保存していた84年10月10日付け中日新聞の切り抜きが、陽の目をみました(「週刊金曜日04.6.25」)。国交省は、一貫してダム湛水による誘発地震の問題の解明から逃げています。大滝ダムの地滑りも、文殊団地の地盤沈下も、住民が工事前から指摘し続けていた通りに起こりました。徳山ダムという巨大ダムの湛水でM6〜M7の地震が起きたとしたら「だから言ったじゃないの」では済みません。ことは人命に関わるのです。


7/13新潟水害・7/18福井水害の真の原因は何だ?

−被災された方々にお見舞い申し上げます/災害をダム建設の口実にするな−

 両方の水害で共通しているのは、@異常な集中豪雨があった(時間雨量88mmとか)A福井市などの市街地で破堤が起きたこと(市街地の堤防が計画高水位以下で破堤する不自然) が重なっていることです。02年7月の大垣市の浸水では木曽川上流河川事務所が、03年8月の豊橋市の浸水ではについては豊橋河川事務所が、それぞれ直ちに浸水状況カラー写真を表紙にしたパンフレットを出し、上流ダム(徳山ダム、設楽ダム)建設の宣伝に使いました。同じことを新潟・福井の水害でも行うかもしれません。ダムによる洪水調節では、住民の安全は守れない、ということが明らかになった、というべきなのに。


《 8/28(土)〜8/29(日) 徳山ダム現場見学交流会&アピール 》

 関西のダムを考える会など関西の「脱ダム」グループが、藤橋村でキャンプし、交流を深めたあと、8/29に徳山ダム工事現場見学をして、甚大な自然破壊への怒りのアピールを発します。
 問い合わせはとりあえず、当会事務局へ


藤田恵さん落選:応援ありがとうございました(藤田恵・勝手連・東海 近藤ゆり子)
 「みどりの会議」は、藤田さんの地元・徳島県では6%の得票率があったのです。岐阜県でも2%を超える得票率がありました。少数の新しい政党が出にくい制度・報道のあり方にも大きな疑問を持ちました。生物も多様性が大切なように、政治もまた多様性を大事にしたい。私たちの試みと挑戦はまだ続きます。
 以下、藤田恵さんのホームページより転載

ご支援を頂いた皆様へ
藤田恵です。毎日のように暑い日が続いておりますが、相変わらずご多用にてお過ごしのことと拝察しております。今回の選挙では皆様方に全面的なご支援を頂きながら私の力不足で、当選を勝ち取ることが出来ず誠に申し訳なく心から深くお詫びを申し上げます。
 それに致しましても、中村敦夫代表が全くテレビで放映されないという、異常とも言えるマスコミシャットアウトの中での90万3773票ですから、既成政党と同じように中村敦夫代表や「みどりの会議」が公平に報じられていたなら、客観的なところ3人は確実に当選していたと、私の2万票と共に皆様方の献身的な活動の偉大さに頭が下がるばかりです。
 そして、環境と経済は一体であり自然は有限で無限の経済成長などあり得ず、経済成長に依存しなくても、安定した生活が出来る仕組みを創るという「みどり」の政策以外に人類が生き残る道も無く、この政策を早晩取らざるを得ず、「みどり」の運動の重要性は不可逆的に進む環境破壊を見るまでもなく誰の目にも明らかです。
 私も微力ながら、活動を続けたいと存じますので、これからも宜しくお願い申し上げます。

編集責任:近藤ゆり子

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