やめよ!徳山ダム No.51(2003.04.21)


住民訴訟(公金支出差止訴訟)が行政訴訟に続いて
 3月26日に結審 初秋にも同時判決

水需要の予測がないのに、県が建設費負担分を一般会計から支出しているのは違法だとして提訴していた住民訴訟(「徳山ダム工業用水道水源費負担分」:被告=岐阜県)が3月26日に結審した。
徳山ダムでは、岐阜県分の工業用水として毎秒3.5m3の取水が計画されているが、「大垣地区ではバブル崩壊後、水需要は大きく減少しており、県の需要予測は過大である。料金収入は見込めないから、費用負担金を回収することができない。支払ってきた97年度までの約35億円の支出金の返還と、98年度以降の支出は差止められるべきである」と私たちは訴えてきた。
大垣地区の工業用水補給水量は1990年の434千m3/日から、1995年には371千m3/日・85%、2000年には332千m3/日・76%に大きく減少している。この過去の実績からすると、工業用水の需要が工場出荷額の増加に合わせて将来伸びていくとする岐阜県の予測は誤りである。その上、さらに、水需要が伸びる理由として「朝シャン・ガーデニング」を取り上げて、議論を矮小化してくるにおよんでは、過去の実績と県の予測との乖離がますます甚だしくなってきたと言える。


 シンポジウム「徳山ダムを名古屋で考える」(仮称)

長良川河口堰と徳山ダムは、同じ木曽川水系水資源開発基本計画に位置づけられた水資源施設です。両者ともに、大規模な自然破壊をもたらし、国と地方自治体の財政を破綻に追い込む「無駄な公共事業」の象徴です。そして「受益者」である愛知県、三重県、岐阜県、名古屋市の住民は、既にあるいはこれから、重い負担を長期間にわたって背負っていくことになります。
徳山ダム裁判の結審を受けて、「長良川河口堰問題は過去の問題ではなく、今現在の問題であること」「徳山ダム問題は、岐阜県だけではなく、名古屋市、愛知県の住民にとって切実な問題であること」を広く知って頂き たいと思います。

 とき:7月12日(土)13:30〜17:00
 ところ:生協生活文化会館ホール(名古屋市・地下鉄本山駅C出口右へ徒歩2分)
 内容:各地からの報告(愛知、三重、岐阜、名古屋)−原告
   水源開発事業の問題点(水余り、財政、裁判)−研究者・弁護士


 主催:「徳山ダムを名古屋で考える」シンポジウム実行委員会
徳山ダム建設中止を求める会/徳山ダム裁判原告・弁護団/長良川を愛する会/長良川河口堰住民訴訟愛知・原告弁護団/長良川河口堰建設に反対する会−岐阜/「自然の権利」基金/名古屋水道労働組合 他

大垣地区の回収率は、1990年は33%、2000年は37%である。冷却温調用水率は、1990年は73%、2000年は67%である。回収水量中の冷却温調用水率は、1990年は45%、2000年は55%である。大垣地区では、回収率は30%台と一般的水準からみて極めて低いが、冷却温調用水の半分程度しか回収して再利用されていない。その理由は、補給水の96〜97%を地下水に依存していることによる。つまり地下水利用の方が回収するより安価だから、回収率が低いのである。
岐阜県長期水需要予測では、大垣地域の工業用水について、冷却温調用水率が60%台と高いうえに、回収水中の冷却温調用水が50%と低いのに、回収率を実績の30%台に固定し、回収率が向上する予測をしていない。水需要予測、特に工業用水道(という新たな事業の)需要予測として必要なことが全く行われていない。
強制的に地下水揚水を全面禁止、最低でも新規揚水の禁止をすれば、回収率は冷却温調用水率までは向上する。そうすれば補給水の増加はなく、徳山ダムの開発水による工業用水道事業は必要ない。もし、工業用水事業を行ってしまうと、全く利用されず、徳山ダム建設の費用だけでなく、工業用水事業の費用も料金で支払えない不良債権を、さらに増大させるだけである。
徳の山といわれた揖斐川上流の美しい村を、数千億円の公金を投入してダムの底に沈めてしまい、絶滅危惧種のイヌワシ、クマタカをはじめとする多くの生物が棲息できなくなって、生態系が破壊されてしまうのに、6億6000万トンの巨大ダムを徳山に作る必要は全くない。(上田武夫)

長良川河口堰住民訴訟「三重」「愛知」 最高裁決定
   −「三重」は初めから仕切直し、「愛知」は終結−

長良川河口堰の工業用水は一滴も使われておらず、その負担分として、三重県は「出資金」、愛知県は「貸付金」という名目で毎年一般会計から工業会計に繰り入れている(98年度:三重県=20億8000万円、愛知県=33億5000万円)。工業用水を使う具体的計画は存在せず、料金収入で一般会計に返せる見込みは全く無い。このような支出は違法であると、愛知県、三重県の住民が公金支出差止訴訟を起こした。3月13日に「三重」、18日に「愛知」の最高裁決定が出た。双方とも上告棄却だが方向は反対向きである。
津地裁は「会計間の振り替えに過ぎず、住民訴訟の対象外」という三重県の主張を認めて却下判決。名古屋高裁は「県の支出は住民訴訟の対象になる」との判断を示して津地裁に審理を差し戻し、三重県側が上告していた。今回の上告棄却決定で、三重県の「出資」の適法性と工業用水の水需要の有無が改めて審理される。
高度成長期の水を浪費する水使用実態に基づく右肩上がりの水需要予測は、80年代には現実とかけ離れた過大予測が明らかになった。しかし見直しの声はかき消され、ダムや河口堰の建設は強行された。過剰開発で、開発施設は使われもしないのに建設負担費用を負う不良資産となった。そのため「一般会計からの繰り入れ」(つまり税金の注入)で処理を先送りし、住民により大きな負担を強いている。
この構図はバブル期に暴走した多くの「開発事業」に当てはまる。住民には「地元の活性化のために国の事業を持って来る」と宣伝され、毎年「○○事業に何十億円の予算がついた」と報道され、政治家は「国から地元にカネを取ってきた」と手柄にした。しかし実際には国の予算に応じた地方自治体の負担があり、さらに多くの場合起債という形で自治体のツケとなる。「稼げる」はずだった開発施設からの収入が無いので、とりあえずこのツケ(+維持管理費)を一般会計から支払う・・・何の展望も無い税金の垂れ流しである。「三重」に対する最高裁決定はこのような無責任・無原則な税金の垂れ流しに対する、住民からの歯止めの可能性を開くものである。
一方、「愛知については、名古屋高裁は十分な証拠調べもせずに、愛知県の「中部空港開港などにより毎秒0.2m3の需要が発生する」という主張を丸飲みし、「需要発生の可能性があるから貸付けは違法ではない」という判決を出した。最高裁はその判決を確定させた既存の25年前に完成した岩屋ダムの開発工業用水ですら使い途がなくて工業用水道もない。その上具体的な計画は何もないのに中部空港さえ開港すれば工業用水を使う、しかも確保した工業用水水利権毎秒8.39m3のうちたった0.2m3の需要が発生すれば料金収入で貸付金は返済しうる・・・非常識としか言いようがない。
今の裁判所の多くは、「とりあえず行政の主張は正しいだろう」という偏った考えの上に立って、納得できるような証拠調べもしないまま、「裁量の範囲内」と無限大といえるほど行政の裁量権を認めてしまう。
行政の明らかな誤り(普通の民事裁判なら重過失が認められると思う)が、議会でも司法でもチェックされず、無責任に暴走している。これを何とか止めなくてはならない。

 長良川河口堰住民訴訟・三重 差戻審  5月22日(木)10時〜 津地裁

 統一地方選・岐阜県議選・大垣市選挙区候補に公開質問状

4月13日投開票の岐阜県議会議員選挙・大垣市選挙区(大垣市、神戸町:定数4)に立候補した5名の候補(自民党2、共産党1、無所属2)に、告示に先立って、徳山ダム問題に関する公開質問状を送りました。回答は共産党公認の高木光弘氏だけでした(高木氏は落選)。残念ながら「市民団体から送られてくる面倒な問題のアンケートや質問状は無視した方が選挙にはトク」と思われているようです。投票率は52.97%と前回を10ポイント以上下回りました。選挙公報すら出ない中で、多くの有権者が選択を放棄してしまいました。こういう選挙の姿を変えていくために何ができるのか考えて行きたいと思います。
質問の概要
1.私たちは水源転換によって「高くてまずくて危険な水」を飲むことになるのでしょうか。
水利権を確保するとしたときの「応分な住民負担」をどのように見積もられますか。
2.徳山ダムで開発される工業用水に具体的な事業計画はありません。徳山ダムで確保する工業用水道水源費負担分をどのように支払っていくべきだとお考えですか。
3.徳山ダムは揖斐川の洪水対策に必要だから(水余りの問題は横にどけてでも)建設するべきだという意見があります。・・・このように考えていくと、川の最上流部の巨大ダムにすべてを頼るような現在の揖斐川の洪水対策は、抜本的な見直しが必要だと私たちは考えます。 揖斐川の洪水対策の面から徳山ダム建設をどのようにお考えですか。
4.計画浮上から45年あまり、正式に事業化してからも30年近く経った徳山ダム計画について、全体としてどの様にお考えですか。理由もあわせてお答えください。

高木光弘氏の回答  1.徳山ダムの水は要らない。/2.工業用水道水源費負担の見通しなど、まったくなく、この点からも徳山ダムはただちに中止すべきである。/3.流域の住民と専門家でつくる委員会を設け揖斐川や周辺河川も含めた新しい形の総合治水を考える必要がある。/4.工事を中止して見直す。

ダム問題関連の集会・シンポなどのご案内

◎「ダム問題交流会in大阪&水源連世話人会」
日時:5月17日(土)13:00〜17:30
場所:東淀川勤労者センター(東淀川体育館)
 河川整備計画策定と西日本のダム問題/行政事件訴訟法を含めた司法改革への対応/etc
主催:水源開発問題全国連絡会(事務局:東京都千代田区平河町1-7-1-W201)
  現地連絡先 090-6320-7420(水源連・関)

◎「中部の環境を考える会」第22回総会記念行事
日時:6月14日(土) 13:30〜17:00
場所:生協生活文化会館4階ホール(地下鉄本山駅C出口より右へ徒歩2分)
テーマ:東海の公共事業はこれで良いのか−会員調査報告をめぐって市民討論
 調査報告:@愛知万博 A中部新空港 B徳山ダム
 視点:行財政、環境アセスメント、住民参加
主催:「中部の環境を考える会」 お問合せ先:052-241-7613(野呂法律事務所)

 恒例・徳山村キャンプ 8月23日(土)・24日(日)
 23日のお昼頃に大垣を出発し、24日の午後の早めの時間に帰着します。
 参加費:3000円〜3500円程度(子供は無料)  詳しくは次号で

・昨年から財政が少しきつくなってきています。会費・カンパをお願いします。

・新会員が少しずつですが増えています。


「徳山ダム建設中止を求める会」は、皆さんのご支援で活動を進めています。


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