やめよ!徳山ダム No.46 (2002. 6.17)

  西濃自治体1市13町を訪問しています

昨年(2001年)の暮れに岐阜県西濃1市13町に対して、「徳山ダムで開発される水を上水道の水源として引き受ける予定がありますか」、とアンケートを行いました。しかし、いずれの自治体からも納得のできる回答が得られなかったため、連休明けの5月10日から6月3日にかけて11町(安八町、墨俣町、輪之内町、大野町、揖斐川町、池田町、平田町、南濃町、海津町、垂井町、関ヶ原町:大垣市と神戸町、養老町は都合により後日)を訪問、「要望書」を手渡して町長や助役と話し合いを行いました。
いずれの町とも、「上水道として頼っている地下水は現状では足りている」としながらも、「地下水の供給が困難になる場合を考え、将来に向けて取水権は確保しておく必要がある」と答えました。そのため、徳山ダムの開発水をそれぞれが受け入れた場合、どの程度の費用負担を推定しているのか、その試算を尋ねてみたものの、「徳山ダムは多目的ダムだから」「洪水調節、渇水時の水の供給、発電などに役立つ」などと話し合いの焦点をぼかそうとするばかりでした。さらに不思議なことに、岐阜県の水資源課の説明によると、「供給水量の1.5立方メートル/秒については地元からの要望によって割り出されたものとするが、各自治体から具体的な水量の要望をしたことはなかったはずだ」という。だれも水を必要としていないのにも拘わらず、勝手に「水は必要だ」という水需要だけが一人歩きしているのには驚かされました。
例えば、治水論を持ち出さなかった自治体のうち南濃町は、地下水を表流水に切り替えるとなると126億円の建設費の他に、さらに水を引くための導水管などの施設の建設に数百億円という追加投資が必要となると知るに及び、その規模があまりに膨大なので、現在の経済状態から考えて再検討する必要がある、との認識を持ったようでした。その一方で、「こんな小さな町ではとてもとても・・・」と、自ら周辺自治体に呼び掛けようとする姿勢は見られませんでした。ただ、「しかるべき中心的な町からの呼び掛けがあれば、そのテーブルについて話し合う気持ちはある」と述べるにとどまり、住民の生活を守る地方自治体としての主体性を見せることはありませんでした。(上田武夫)

       恒例・徳山村キャンプ!参加申し込み受付開始
  日程:8月24日(土)・25日(日)
 昨年は50人もの参加を得て賑わいました。今年も大規模なものになりそうです。
 8月24日のお昼頃に大垣を出発し、25日の午後の早めの時間に帰着します。
 参加費:3500円(24日夕食・25日朝食:子供は無料)
 詳しいことについてのお問い合わせ、参加ご希望の方は、事務局に
  電話でご連絡下さい。  0584(78)4119(FAX兼)近藤方

1市13町へ提示した要望書

                  要望書
                                         2002年○月○日
 ○○町長 ○○様
                  徳山ダム建設中止を求める会
                       代表 上田 武夫
                       運営委員一同

私たちは、揖斐川流域住民として、徳山ダム建設には疑義をもっています。
徳山ダムが完成すると、この地域1市13町の水道の水源を転換して徳山ダムの水、つまり揖斐川の表流水を使う、とされています。(「表流水への水源転換への取り組みが望まれています」(旧建設省資料))。水の豊富なこの地域でわざわざ徳山ダムの水を買わなくてはならなくなるのは納得できません。
徳山ダムによってこの地域に供給される予定の水道水は1.5m3/秒(日量約13万トン)とされています。現在、この地域の日平均給水量は約12万トンです。これからは人口は増えませんから、現状以上の水は必要ありません。もし徳山ダムの水の供給を受けると、現在もっている自己水源をすべて放棄することになってしまいます。利水安全上も問題があります。
岐阜県開発企業局水資源課によると、この分の水源費負担分は126億円(建設費負担分−補助金+金利)だそうです。しかし川の表流水を使うとなるとそれだけではすみません。川からの導水管や浄水場など新たな施設が必要となります。この地域全体で数百億円の追加投資となるのは間違いありません。その負担は必ず水道事業者たる市や町が背負い、結局は地域の住民の肩にのしかかります。
現在の水源を放棄して徳山ダムの水を受けるということは、住民生活の根幹にかかわる重要な事項です。水道事業に責任を持つ自治体は、科学的根拠を持った水需給見通しと今後の水道事業計画をきちんと住民に明らかにして、その是非を住民に問わなくてはならないはずです。しかし今まで住民には何も知らされていません。
徳山ダム裁判でも明らかにされているように、この地域に新しい水源は必要ありません。住民に必要のない水の負担を強制するような町政は間違っています。

貴町において、「徳山ダムの水は要らない。引き受けない」という立場を一刻も早く鮮明にして頂くことを要望します。
                                    以上

自治体を訪問して廻って、改めて感じるのは“自治体が自分の頭で考えていない”ということです。「(私たち市民団体から)言われてみると、西濃地域にダムの水が供給されることになるらしい」という程度の認識はあるようですが、「どれだけの量をどれだけの負担」という肝心な情報を収集しようともしていません。「洪水調節のため」「渇水のため」と行政側は説明するのですが、徳山ダムは水資源公団の作る水資源ダムです。そして「徳山ダムさえできれば揖斐川流域は洪水からから救われる」とは、国土交通省でさえ言っていません。
情報も集めず、検討もしないで何も漫然と横並びで建設促進を要望していく。「何だか知らないけど国が作ってくれるみたいだから」「県のいう通りにしておいたら無難だ」「他の市町村にならって」というが類でしょう。「岐阜県の99市町村でつくる河川協会で一致して促進しているから」というのが促進の「理由」だと大まじめに言う自治体もあります。
そうしてつくられた「地元の要望」が、今度は国交省がダムを作る理由となる。無駄な公共事業で財政と自然を破壊する構造を改めるには、本当の意味での地方分権・自治体の自立が必要だとつくづく感じます。 (近藤ゆり子)