徳山ダム建設中止を求める会・事務局ホームページ



三重県は徳山ダム事業費増額に伴う計画変更に応じないで下さい

2004年5月28日

三重県知事 野呂昭彦様

                                         徳山ダムをやめさせる会
                                                    共同代表 : 在間正史 ・ 伊藤達也

 徳山ダムは水資源開発促進法による木曽川水系水資源開発基本計画(フルプラン)に基づき、独立行政法人水資源機構(水資源機構、旧水資源開発公団)が建設する水資源開発施設です。
 昨年、2003年8月になって、水資源機構は、徳山ダム建設事業費の大幅増額を発表しました。事業実施計画で定められた事業費2540億円の97%を費やしてしまってから、40%もの大幅増額を言い出したのです。
 この大幅な事業費増加をうけ、徳山ダムの利水者である愛知県、岐阜県、名古屋市は相次いで、需要予測の大幅削減を表明しました。そして、2004年度にフルプランを全部変更するにあたり、利用予定水量を毎秒6.6m3へと、当初の計画の毎秒15m3からは56%、変更後の現計画の毎秒12m3からは45%も減らしてしまったのです。利水者の愛知県、岐阜県、名古屋市は、徳山ダムの事業費の負担額を今まで通り、むしろ、それ以下にしようと画策しています。
 国土交通省中部地方整備局は、利水関係県市から増額する事業費について費用負担の同意を得るため、徳山ダムの貯水容量の利水容量から治水容量への大幅振替案(「新洪水調節計画案」と「新不特定補給計画案」)を出しました。
 そして、5月20日の徳山ダムに関する調整会議(以下、5.20調整会議)において、中部地方整備局は各県市の費用負担変更案を示しましたが、治水負担のみの三重県の費用負担額は現行の62億円から101億円への増額となっています。
 三重県の費用負担の増加の原因は、「新洪水調節計画案」と「新不特定補給計画案」を元に、5.20調整会議資料記載の考え方で費用割り振りをしたことにあります。以下に、主に、5.20調整会議と4月29日の中部地方整備局事業評価監視委員会(以下、監視委員会)の説明資料を元に、三重県の負担について問題点をまとめました。
1) 水機構が建設する水資源開発施設は、水機構法21条、水機構法施行令22条によって、洪水調節、高潮防御、かんがいその他流水の正常な機能の維持と増進の治水関係用途については、利益を受ける都道府県が、国の治水関係用途交付金のうちの30%を負担します。
 徳山ダムに係る三重県の費用負担はこれに基づくものです。
2) 洪水調節について費用負担の変更があり、徳山ダムの用途別貯水容量と操作内容を現行計画から変更計画案に変更することがその原因です。したがって、費用負担の変化にどう応ずるべきかは、受ける利益が、現行ダム計画に比べて、変更計画案でどのような変化するかによって決まるはずです。変更計画案のダムが新規に建設されるとして、その費用負担をどう割り振るかの問題ではないのです。
 洪水調節に関する費用については、現洪水調節計画から「新洪水調節計画」になることによって、三重県に利益の増加があるのかによって、三重県の費用負担の変化が決まるのです。中部地方整備局の説明によれば、「新洪水調節計画案」では、「洪水位が、現洪水調節計画では、河口から26〜44kmの区間の延長約18kmの区間で計画高水位を上回っていたが、新洪水調節計画案ではほとんどの区間で計画高水位を下回ることになる」とされています。つまり、現洪水調節計画で、既に揖斐川の三重県の区間は洪水位が計画高水位を下回っており、この「新洪水調節計画案」では、三重県は洪水防御として必要な河道確保の利益を受けず、その利益は専ら岐阜県が受けるです。
 したがって、現洪水計画から「新洪水調節計画案」に変更されることによって、三重県には洪水調節として費用負担すべきものはないのです。
 三重県内にある河川は、揖斐川だけではありません。鈴鹿川(鈴鹿市・四日市市)、雲出川(久居市)、櫛田川(松阪市)、宮川(伊勢市)、さらに県都津市の安濃川や最大人口都市の四日市市の三滝川もあります。三重県が徳山ダムの上記の増額された洪水調節の費用を負担することは、三重県の限られた治水予算を、計画高水流量・水位に対する対策も十分でない人口集中域の他の河川に使わずに、揖斐川のみに特別に使用することです。これは、県民に等しく水害防止の利益を得るようにすべき治水事業の行い方として不合理であり、他河川住民の納得を得られないでしょう。
3) 不特定補給についても変更があり、監視委員会資料によれば、「新不特定補給計画案」では、万石地点の確保流量を20m3/sとし、感潮区間を除いて、アユ等の魚類の移動や産卵に必要で、また、そのため漁業に必要な流量としています。そして、不特定容量は115,000千m3(横山ダムかんがい用途振替分32,000千m3を含む)、用水補給は既得用水と横山ダムの現在補給かんがい用水、万石地点流量は20m3/sとなっております。
 万石地点より下流の既得用水は、現在は合計7.4m3/s(最大取水量、以下同じ)で、そのうち6.8m3/sが岐阜県内、0.6m3/sが三重県内です。横山ダムのかんがい用水は西濃用水の23.35m3/sです。したがって、既得用水における三重県の割合は8%、「新不特定補給計画」で加わった横山ダムのかんがい用水も含めると、三重県の割合は2%です。
 以上のように、「新不特定補給計画案」は、岐阜県の既得用水やかんがい用水の取水確保のためのものです。監視委員会資料では、「徳山ダムの不特定補給により、西濃用水等沿川の既得用水の安定的な取水が可能となる」と説明されております。
 魚類等の生息や景観は全国民的、全体的な公共利益であって、特定の県民や県域に利益がもたらされるものではありません。それゆえ、これについては、水機構法21条3項、水機構法施行令22条による三重県の負担はないのです。仮に、これらを考慮しても、三重県の区間は感潮区間ですから、三重県には関係なく、関係あるのは専ら岐阜県です。
 したがって、「新不特定補給計画案」での三重県の負担割合が22%というのは、不合理です。三重県の負担はないに等しく、あったとしても2%でしょう。「新不特定補給計画案」では、横山ダムの現在補給かんがい用水の振替分も容量に入っているのですから、これも費用負担に入れなければならないはずです。また、上記のように、監視委員会資料では、徳山ダムの不特定補給により、西濃用水の安定的な取水が可能となるとも説明されております。
4) 渇水対策については、「新渇水対策計画案」では、容量は変わりませんが、費用負担割合を変えています。木曽川分の取水量(既得用水およびダム掛かり)の比率だけでなく、長良川および揖斐川分の取水量比率を加えて、費用負担割合を求めています。その結果、三重県の渇水対策容量の全用途に対する負担比率は1.1%となり、木曽川分だけの場合の0.8%よりも大きくなっています。
 渇水対策容量は、木曽川の維持流量(馬飼地点50m3/s)を確保するための補給水に用いる容量であって、ダム掛かりの許可水利権者が使用できる容量ではないのです。木曽川の維持流量が渇水調整によって切り下げられたとき、結果的に、ダム掛かりの水利権の自流取水やダム貯水ができるようになって、木曽川のダム掛かりの許可水利権者は利用できるにすぎないものなのです。
 したがって、河川維持流量は、生物の生息や生育、景観、流水の清潔保持等のためのものであって、それは、全国民的、全体的な公共利益であって、特定の県民や県域が利益を受けるものではありません。それゆえ、これについては、都道府県の負担はないのです。また、木曽川の維持流量を確保するためのものであって、長良川や揖斐川とは関係ないものです。
 結局、渇水対策容量の各県の費用負担は、木曽川の既得用水やダム掛かり許可水利権の取水量比率で計算すべきものではないし、まして、長良川と揖斐川も含めて計算すべきものではないのです。

 以上のように、三重県は、「新洪水調節計画案」と「新不特定補給計画案」の下で、新たに利水容量の治水容量への振り替えを伴う事業費増額分については、徳山ダムの治水関係用途交付金についての利益を受ける関係県の負担を負う理由はないのです。したがって、このような「新洪水調節計画案」と「新不特定補給計画案」の下で、徳山ダム事業費の三重県の負担を増額させることは、県民の納得を得られるものではありません。
 三重県知事として、これまで利水者として徳山ダム事業に関わってきた岐阜県・愛知県・名古屋市とは異なる立場にある貴職は、これらの県市の負担を治水関係用途へ押しつけての事業費負担の軽減策動に対して、三重県民の側に立って、はっきり拒絶すべき立場です。
 真に揖斐川住民の安全を守り、三重県民に無用の負担をさせないために、徳山ダム建設事業費増額を伴う木曽川水系水資源開発計画の改定における関係県知事の意見聴取、及び同じく徳山ダムの事業実施計画の変更における関係県知事の協議において、三重県の負担増となる変更には応諾しないようお願い申し上げます。

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