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徳山ダム訴訟、住民敗訴
岐阜地裁が公益性認める
水資源機構(旧水資源開発公団)が岐阜県藤橋村に建設している国内最大級の徳山ダム事業をめぐり、住民五十七人が国土交通相を相手に事業認定取り消しを求めた行政訴訟の判決言い渡しが二十六日午前、岐阜地裁であり、林道春裁判長は事業そのものについて「洪水被害からの保護など公共の利益は多大で、事業認定に違法性はない」として訴えを棄却した。一方、原告側が過大だと主張してきた水需要予測については「早急に見直し、費用を負担する住民の立場に立って、水余りや費用負担増大などの問題点の解決に真摯(しんし)に対処することが望まれる」と異例の指摘をした。原告側は控訴する方針。
徳山ダムは九百六十億円の事業費増(総費用三千五百億円)が問題となっているが、増額分が固まったのは結審後の今年十一月。争点として全く含まれていない負担増の問題に言及するのは極めて珍しい。
同ダムは、費用を増額して事業を継続するため事業実施計画の変更が必要。その根拠となる水資源開発基本計画(フルプラン)も改定作業に入って現在、水需給想定調査が行われている。司法の踏み込んだ指摘は、より実態に即したフルプランの改定など今後の手続きに影響を与えそうだ。
最大の争点となった新規利水の必要性については「(事業認定当時の)水需要予測が不合理なものと断定できない」と原告側の主張を退け、「国交相の判断に裁量の範囲の逸脱はない」とした。
このほか治水・渇水対策の効果、発電などを合わせて「事業から得られる公共の利益は多大なもの」と認定。一方、失われる利益については「自然環境への影響は小さく、移転した旧徳山村民に対しては生活再建の措置が講じられている」とし、「土地の合理的な利用に寄与する」との土地収用法の要件を満たすと結論付けた。
住民らはダムで水没する予定地の一部を地権者から譲り受け、一九九九年に提訴。土地の強制収用を受け、岐阜県収用委に裁決取り消しを求めた訴訟も起こして併合審理され、裁決も取り消されなかった。
岐阜県の梶原拓知事らを相手取り、県が負担する費用の差し止めと支払い済みの約三十四億七千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決も同時に言い渡され、林裁判長は「住民訴訟の対象の財務会計行為に当たらない」などとして訴えを却下した。
<徳山ダム> 岐阜県藤橋村の揖斐川上流に建設中の治水、利水、発電などの多目的ダム。ロックフィル式で高さ161メートル、総貯水量はナゴヤドーム約530個分の6億6000万トンで全国最大。1957(昭和32)年に計画され、76年に事業認可、2000年に本体着工し、現在既に約3分の1ができあがっている。完成予定は07年度。
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