岐阜県藤橋村に建設される国内最大級の徳山ダムの用地取得に絡んで、水資源機構(さいたま市、旧水資源開発公団)が、1億円以上で購入した土地を、地目を変更したうえで当時村議だった現村長が所有する約1000万円相当の土地と交換していたことが、朝日新聞社の調べで分かった。同機構が「田畑」などとして買った代替地を「原野」に地目変更することで「等価交換」の体裁を取り繕った格好。機構は「現況を確認して判断した」としているが、「地目変更の直前まで米や野菜を作っていた」とする複数の証言も出ている。
機構は、ダム建設費として960億円の増額が必要だとしているが、税金の無駄遣いとの指摘も出かねない土地交換が表面化したことで、増額問題にも影響が出そうだ。
内部資料や関係者などの話によると、水資源機構が交換で取得したのは、ダム建設で沈む藤橋村(旧徳山村)櫨原(はぜはら)地区の共有林の一部と水田の計約1ヘクタール。清水政則村長の所有で、総額は約1000万円相当とされる。一方、代替地は沈まない同地区の田畑など約4ヘクタール。機構が10人前後の所有者から85年前後に買いあげたといい、買収額は1億円を超えるとみられる。
機構と村長が土地交換したのは00年10月。代替地の田畑などを買った直後に原野に変更することで評価を下げ、等価交換したという。
機構は「損失補償基準」を根拠に土地の取得価格を決めている。田畑が1平方メートルあたり平均で2500円に対し、原野は220円と10分の1以下。代替地の元所有者のうち7人が朝日新聞社の取材に応じ、「原野に評価される直前まで米を収穫していた」と、原野への地目変更に疑問を投げかけている。
同地区の共有林は総面積が約2100ヘクタール。主に41世帯が所有している。このうち約90ヘクタールがダムに沈むことになり、機構は84年ごろから交渉し、村長を除き、すべて金銭で取得したという。
清水村長は01年11月、無投票で初当選を果たし、現在1期目。交換時は村副議長だった。清水村長は「機構に優遇をしてもらってはいない。土地交換で得するようなこともない」と話しており、現在も交換した土地を所有している。
◆金田学・水資源機構補償業務課長の話
当時の現況を確認し、農地から原野に適正に処理している。村長に特別な計らいはしていない。 (01/26 03:02)
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