徳山ダム建設中止を求める会・事務局ホームページ


判決要旨


○ 行政訴訟

平成11年(行ウ)第6号事業認定取消請求事件(以下「甲事件」という」)

平成13年(行ウ)第11号収用裁決取消請求事件(以下「乙事件」という)

主文

1 甲事件原告ら及び乙事件原告らの請求をいずれも棄却する。

2 併合前の甲事件における訴訟費用は甲事件原告らの負担とし、その余は甲事件原告ら及び乙事件原告らの負担とする。

理由の骨子

1 適法性判断の基準時
 取消訴訟において行政処分の適法性を判断する基準時は、当該処分がされた当時とすべきであるから、本件事業認定が適法か違法かは、建設大臣(当時)が本件事業認定をした時(平成10年12月24日)を基準とし、その時に存在していた事実を起訴として判断する。

2 本件事業認定の適法性(甲事件)
 本件事業認定が適法であるというためには、本件事業認定が土地収用法20条1号から4号までの要件をすべて満たしている必要があることから、
以下のとおり本件事業認定は適法である。
(1) 土地収用法20条3号の要件について
 ア 判断の方法
  土地収用法20条3号の「事業計画が土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであること」とは、当該土地がその事業の用に供されることによって得られる公共の利益とその事業の用に供されることによって失われる利益とを比較衡量した結果、前者が後者に優越すると認められる場合である。
  この判断においては、事業認定権者である建設大臣の裁量が認められ、事業認定権者の判断に社会通念上著しく不相応な点があり、その裁量の範囲の逸脱又は裁量権の乱用があった場合に、当該事業認定は土地収用法20条3号要件に適合せず違法となる。
 イ 都市用水の確保について
 @関係県知事、ダム審、各供給予定地の市町村等は本件事業による都市用水の確保が必要であると認識していること、A水資源開発施設の計画を進めるに当たっては、長期的、先行的な観点から整備を行う必要があり、予測と実際が異なったときにも支障を生じないだけの余裕を見込む必要もあること、B本件水需要予測が不合理なものと断定できないこと、C地盤沈下対策の必要があること等を考慮すると、本件水需要予測を是認した建設大臣の判断に裁量の範囲の逸脱又は裁量権の濫用はない。
 なお、当裁判所は、本件水需要予測について建設大臣が平成10年12月にこれを是認した判断が、当時においては建設大臣の裁量の範囲を逸脱するものではないと判断するにすぎないものであり、現時点においてはウォータープラン21の水需要予測の法が合理的であるから、独立行政法人水資源機構としては、早急に水需要予測を見直し、最終的な費用負担者である住民の立場に立って、水余りや費用負担増大等の問題点の解決に真摯に対処することが望まれる。
 ウ 本件での比較衡量
 本件事業により得られる公共の利益については、@揖斐川流域の住民やその試算を洪水被害から保護し、A流水の正常な機能を維持し、B都市用水の海保やC発電により地域経済の発展に資することから、本件事業によって得られる公共の利益は多大なものと認められる。
 これに対し、本件事業失われる利益のうち、@自然環境への影響は、総合的に判断しても小さいものと評価されること、A本件事業により移転することになった旧徳山村の住民に対しては生活再建のための措置が講じられていることなどからすると、本件事業によりこれらの利益が失われることによる影響は小さい。
 したがって、本件事業が土地収用法20条3号の要件を満たすとした建設大臣の判断に裁量の範囲の逸脱及び裁量権の濫用はない。
(2) 土地収用法1号、2号、4号の要件について
 本件事業は、治水又は利水のためのダムを建設するものであり、水資源機構(旧水資源開発公団)にはこれを行うだけの十分な意思と能力があり、土地を収用する公益上の必要があるから、土地収用法20条1号、2号、4号の各要件にも適合している。

3 本件裁決の適法性(乙事件)
 上記のとおり、甲事件の事業認定に違法性がないから、違法性の承継はあり得ず、本件裁決は適法である。

○ 住民訴訟

平成11年(行ウ)第4号 公金支出差止等請求事件

主文

1 原告らの被告岐阜知事及び同岐阜県出納長に対する訴えのうち、平成10年6月から平成15年3月までにされた徳山ダム建設事業費負担金(工業用水分)の支出命令及び支出並びに平成43年4月以降にされる徳山ダム建設事業費負担金(工業用水分)の支出命令及び支出の差止めを求める訴えをいずれも却下する。

2 原告らの被告梶原拓に対する訴えのうち、平成2年6月から平成9年12月までにされた徳山ダム建設事業費負担金(工業用水分)の支出に係る損害賠償を求める訴えを却下する。

3 原告らの被告に対するその余の請求をいずれも棄却する。

4 訴訟費用は原告らの負担とする。

理由の骨子

1 (1) 広義の公金支出は、@支出負担行為、A支出命令、B狭義の支出によって構成されているが、これらは互いに独立した財務会計行為であり、このうち二つを一体の財務会計行為とみる余地はない。また、岐阜県知事がした費用負担の同意は、住民訴訟の対象である財務会計行為に該当しない。  (2) 本件口頭弁論終結までに岐阜県が支出した平成15年3月までの本件負担金については、支出が終わっている以上、その支出の差止めを求める訴えの利益はない。
    本件負担金の支出は、平成43年3月をもって終了する予定であり、平成43年以降、本件負担金の支出等がされることは相当の確実さをもって予測することはできないから、平成43年4月以降の支出分についても差止めの対象にならない。

2 住民訴訟の前提として、原告らは法定の期間内(地方自治法242条2項)に住民監査請求をすべきところ、原告らが岐阜県監査委員に対してした住民監査請求のうち、平成2年6月から平成9年12月までの本件負担金の支出に関する部分は、監査請求期間を経過してしまったことについて正当な理由(同項但書)は存在しない。

3 (1) 水資源開発公団の岐阜県に対する本件負担金の納付通知は、著しく合理性を欠き、岐阜県の予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵があるとはいえない。
  (2) @将来にわたって工業出荷額の伸びが見込まれないと断定することはできないこと、A水資源開発は、長期的・先行的な視点から行う必要があること、B岐阜県が平成6年3月に作成した水需要予測「岐阜県水資源長期需給計画」は、予測の方法自体が合理的で、過去の水需要実績等をも総合考慮すると、水需要予測に合理性がないとはいえない。したがって、これに基づいて岐阜県知事が平成10年にした費用負担同意はその裁量の範囲を逸脱するものではない。

4 岐阜県が一般会計から本件負担金を支出していることは、地方財政法6条、地方公営企業法17条に違反しない。



TOPSITE MAP