徳山ダム建設中止を求める会・事務局



旧徳山村民の意思を無視する事業者への抗議文


徳山村の人は説明も受けていない、納得していない

声  明

〜真の関係者不在でことを進める事業者に抗議する〜


 報道によると、暗礁に乗り上げていた徳山ダム集水域の「公有地化事業」は、揖斐川町が事業に参画することで、「地元の合意」が得られ、31日に、協定書の調印式を執り行いという。
 この「地元の合意」とは何か? 確かに10月24日、揖斐川町議会全員協議会で報告され、了承された・・・。「八地区会長会の理解も得られている」という説明付きで。
 しかし、実際には、現時点で「八地区会長会」の了承も得られてはおらず、そもそも地権者の人たちに説明すらしていない。新聞報道で概要を知る地権者の中には憤激している方もいる。こういう中で「地元の合意」があったとすることは、故郷の山に足を運びたい、なおもその地で暮らしたいと願う旧徳山村の人々の思いを、頭から無視するものである。真の関係者である旧徳山村民の存在をも無視してことを運ぶ、国・水資源機構・岐阜県・揖斐川町に強く抗議する。

 「公有地化事業」は、西谷道路を建設するのは、環境対策コストを考慮すると財政的に不可能だから、その建設費を「ダム周辺の山林保全措置制度(*)」に充てるということで始まった。249億円を注ぎ込んでも、西谷道路は出来ない、ということである。
* 2000年度概算要求をするの際し、国交省河川局が創設した予算措置。通称「公有地化事業」。徳山ダム以外にも適用事例はあるが、規模は比較にならないほど小さい。
     平成12年度河川局関係予算概算要求概要
<ダム周辺の山林保全措置制度の創設>
 自然環境に配慮するとともに経済的なダム事業を推進する観点から、林道の付替に代え、地元自治体が林道の周辺山林を保全する施策(取得等)を講じる場合に、林道付替に要する費用の範囲内で事業者が負担できる制度を創設

 1986年に「甲 岐阜県揖斐郡徳山村 徳山村村長 徳山村議会議長/乙 水資源開発公団 理事 中部支社長/立会人 岐阜県 岐阜県知事」という形で締結された公共補償協定は、ダム湖に沿って西谷に入る道路を確保する、というものだった。集落としてはダム湖に水没しない門入では、「故郷の山への往来を保障する」との約束があるから移転補償に応じた、という人も少なくない。実際、雪のない間は門入に暮らしている方も居られる。
 2001年春、旧徳山村を編入合併した藤橋村と水資源開発公団(現水資源機構)が、旧徳山村の方々には何の相談もなく、いきなり公共補償協定を変更し、「岐阜県を事業者とする公有地化事業」を既定方針として発表した。公共補償協定締結の経緯からして、地権者に何の相談もなく、「徳山村を引き継いだ藤橋村」と水公団(及び立会人・岐阜県)だけで公共補償協定を変更するのは無理がある。徳山村の多くの方は、今もってこのような「協定変更」を受け容れていない。
 
 「環境に配慮すると、249億円かけても造れない」ということで、西谷道路は作らない、公有地化する、とした経緯からすれば、249億円+アルファ(岐阜県・愛知県・三重県が出す?)で、「道路も公有地化も出来る」という話は、根本的に「おかしい」。
 環境に配慮し、かつ「距離は長くても往き来しやすい道路」を作るとしたら、巨額の建設費を要する。お金は一体どこから出てくるだろうか?上記249億円の中で「作業路建設費」は25億円〜33億円となっている。国交省は「公有地化事業費として、この249億円に上乗せすることはあり得ない。全体事業費も(縮減するつもりはあるが)、増額は全く考えない」と言い切っている。
 公有地化を望む地権者からの買収資金として計上されている216億円(249億円の内)を縮減して捻出するのか? もしそうなら、それはそれで、到底受け容れられない地権者も居られる(意向は纏まらない)。

 「西谷道路ではない作業路を建設して、故郷の山林にアクセスできるようにする」というのは「永遠の幻」ではないか、という懸念が生じる。
 10月31日の調印式の後、遠からぬうちに、賑々しく「作業路の着工式」を執り行うかもしれない、が、後は?
「門入に総合気象観測所を置くから道路が出来る」というのは、本当なのだろうか? 具体的な計画と予算担保はあるのだろうか?
 「予算が足りない。財政が厳しい」で、道路らしい道路は一体いつ出来るのやら分からない状態−軽の四輪駆動がやっと通れる道は造るかもしれない、奥に国有林もあるから−のまま、長々と放っておかれる…そのうちに、先祖から受け継いだ「山」に思い入れを持つ人は死に絶える、で、話は立ち消える…。
 誤魔化しでも何でも、とにかく残存山林の地権者の「湛水の同意」をとってしまう、後は「釣った魚に餌はやらない」で行く、ということにならないか?
 「騙された」「約束が反故にされた」というのは、これまで「公共事業」「ダム事業」で余りにも繰り返されてきた構図である。 国等事業者側の「騙すつもりはなかった。難しい問題があって、時間がかかった。結果的に当初の話通りにならなかった。あくまでも『結果論』だ」という言い訳も山ほど聞いてきた。
 またまた「強者にだけ都合の良い論理」で、ダム水没地の方々は翻弄されるのでろうか?

 真の関係者不在の「協定」決定−調印を中止し、旧徳山村の人々の心の底からの納得が得られるまで話し合いを続けるべきである。湛水を強行すべきではない。
 岐阜県民を中心とする当会は、岐阜県に強く要請する。公共補償協定の立会人たる岐阜県(知事)は、あくまでも旧徳山村民の側に立って、国及び水機構に対するべきである。

2005年10月28日

徳山ダム建設中止を求める会


発表文書 ≫ SITE MAP ≫ TOP