徳山ダム建設中止を求める会・事務局ホームページ



声 明

徳山の森を守り、川を住民の手に取り戻そう

2004年6月23日

徳山ダム建設中止を求める会(代表:上田武夫)

 国交省中部地整と水資源機構中部支社、及び岐阜県、愛知県、三重県、名古屋市は、22日、徳山ダムに係る「3県1市の調整会議・第3回」を行い、各県・市は第2回の「調整会議」で示された負担を呑むことで決着したようである。
 徳山ダムの利水者(岐阜県、愛知県、名古屋市)の「利水容量削減」を認めることで利水者負担の増額を抑え、治水容量(洪水調節容量、不特定補給、渇水対策容量)を大幅に増やした。結果的に、各県市ともに負担額は大幅に増額することになった。

 徳山ダム事業費増額に係る事業実施計画は、これまでのものと大きく変わることになる。「水資源開発促進法に基づく水源施設である徳山ダム」(だから水資源機構が建設する)は、いつの間にか、「3500億円の治水単独ダム(利水と発電の具体的計画は一向に見えない)」に変貌した。
 国交省中部地整は「徳山ダムと横山ダムをダム群として運用することにより、・・・約2倍の集水域を持つことになり、揖斐川の洪水調節機能を従来計画以上に向上させることが可能となる」という。しかし、徳山ダムと横山ダムという本川上流部2ダムでは、根尾川型洪水(1960年8月洪水。大垣市荒崎地区に大被害をもたらした02年7月10日洪水もこの型である)では、その「大きな洪水調節機能」を発揮することはできない(本川にそれに見合う水は流れない)。1968年工事実施基本計画参考資料ではっきりと位置づけられている根尾川上流・黒津ダム計画を消し去って、無理に本川2ダムに大きな洪水調節効果を負わせる「治水計画」は危険極まりない。揖斐川流域住民を主体とした当会としては強い憤りを覚える。
 上流のダムで洪水調節を行えば「安全」になる、などという考え方は、とうに国交省自身が放棄している(90年代の一連の河川審答申)。およそ河川技術者で、このような洪水調節計画で流域住民の安全が確保されるなどと信じている者はいない。「氾濫受容型・総合治水・流域対応という考え方は、河川技術者なら皆分かっている。本川の水位をたとえ1cmでも下げてくれ、と住民が言うから仕方がないのだ」(岐阜県河川課職員)。
 「本川の水位を1cm下げる」のに3500億円をかけろ、と真に住民が望んでいるのであろうか? 常に「徳山ダム完成」とセットでしか、河川整備の説明されてこなかったことが問題なのではなかろうか?
 これから投じられる960億円の10分の1でも、大谷川右岸洗堰の越流地域(荒崎地区)に投じられれば、もっと安全な洪水対策が出来るではないか(このところ徳山ダム集水域を外れた「根尾川型洪水」が頻発している。徳山ダム−横山ダムでは、安全は確保できない)。

 市民に開かれることのない行政同士の密室の談合をもって、徳山ダムについては何も知らされていない全国の納税者に広く負担を追わせるという形で事業費大幅増額問題に決着をつけようとする国交省・水機構及び3県1市当局の姿勢は許すことはできない。

 河川法、事業評価制度(及び事業評価監視委員会)、水資源開発促進法(及び国土審議会水資源開発分科会)・・・、どれをとってみても国交省は自ら作った法律や制度の趣旨を、自ら踏みつけ破壊している。
 国交省河川局が、鳴り物入りで宣伝していた1990年代の「河川局による河川行政の転換(河川法改正を含む」「環境重視・住民参加」「公開性・透明性を高めた公共事業」等は何だったのか? 「淀川モデル」(近畿地整淀川水系流域委員会)というアドバルーンを上げて見せた以外は、全て自らの手で押し潰し、ひたすら反動の道を進んでいるではないか。
 私たちは、小泉政権の立憲政治の決壊とパラレルに進行しつつある河川行政の決壊を許さない。

 こうしている間にも、イヌワシ・クマタカを頂点とする徳山の自然生態系は脅かされている。巨大な人造湖が出来てしまえば、取り返しのつかない自然破壊となる。

 国交省中部地整は徳山ダム建設工事を直ちに凍結し、改正河川法16条の2の趣旨に則った河川整備計画を策定せよ! 水資源機構は工事を凍結した環境下で、まともな環境アセスメントを行え!

 川は流域住民のものであり、広く全市民のものであり、国交省や関係県市の役人・首長のものではない。川を私たち市民の手に取り戻すため、全国の心ある市民の方々とともに私たちはなお闘いを続ける。

 全国の市民に対し、徳山ダム建設中止を求める私たちの闘いへのさらなる支持・支援を訴える。

                      以上

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