徳山ダム建設中止を求める会・事務局ホームページ



声  明

2004年6月1日

徳山ダム建設中止を求める会(代表:上田武夫)

国土審議会水資源開発分科会の「新フルプラン案了承」に抗議する

 国土審議会水資源開発分科会は、5月31日、無理矢理に徳山ダムを位置づけた国土交通省水資源部が作成した「木曽川水系水資源開発基本計画(案)」を、まともな議論もなく了承した。
 利水者の水需要予測の大幅な下方修正は、これまでのフルプランの誤りを明白にしたものであった。従って、まず「何が誤った予測をもたらしたか」を徹底検証することなしに次の長期計画を立てるなどということは許されないはずである。然るに、水資源部は「流況の変化」を理由に水資源施設の「施設実力調査」を行い、「既設の水資源施設は公称の実力に足りない」ことをもって徳山ダムによる新規利水の必要があるとしたのである。
 50年以上前と比較して、流況が変化したのは事実であろう。しかしそれ以上に、土地利用のあり方も変化している。慣行水利権の見直しはなぜ行わないのか? 流況悪化の中で河川維持流量を変えない(又は増加させる)ことは真に「環境への配慮」と歓迎されるべきことなのだろうか? 徳山ダム集水域の生態系は壊滅的打撃を被るというのに。

 昨年7月4日の第1回木曽川部会では、かなりの問題点が指摘されていた。しかしその問題は、以後の部会でしっかり議論された形跡はない。
 今年4月13日の第2回部会では、各委員は各県の需給想定調査票そのものは見ていないで議論していることが分かる。これでは水資源部の独自試算と各県の出した数字との相違を検証しようもない(例えば、岐阜県の「利用量率の大幅下落予測」などは問題にされてないで「通過」してしまっている)。ずっと減少し続けている大垣地域の工業用水需要(かつてこの地域の象徴的な存在であったカネボウ大垣工場の閉鎖が決まった)が、2015年には40%も伸びる(1998年比)という不思議にも誰も言及しない。
 5月12日の第3回部会の議事録がHPにアップされたのは5月28日。そこで問題にされたことについては何も分からないうちに、(「調整」がついていないことが問題にされている。利水容量を大幅削減する一方で「洪水調節のために使うというふうな見直しを行っている」のひとことだけで徳山ダムを従来規模のまま建設することになっている)、週明けの5月31日の「水資源開発分科会で了承」である。
 これで審議の透明性・公開性は確保されたと言えるのであろうか。

 何の議論の場ももないまま「新洪水調節計画」という名の危険な治水計画変更が(16条の2を僭脱して)事実上決まって行こうとしている。

 全く透明性・公開性を欠いた論議で、住民及び納税者に大きな負担を負強いる事業費大幅増額と、流域住民不在のまま治水計画が決められていくことに、強い憤りと抗議の意思を表明する。



声  明

                               2004年6月1日

                         徳山ダム建設中止を求める会(代表:上田武夫)

   中部電力(株)の杉原ダム中止及び電源開発(株)の増額受け入れについて

 中部電力(株)は、5月31日、地元・藤橋村に対して、杉原ダム建設中止を伝えた。
 徳山ダムの下池として建設を計画されていた杉原ダムについては、当会は、一貫して「コストパフォーマンスから見ても非現実的な計画」と指摘して、中部電力に対して中止を求めて来た。実際、中部電力は次々と揚水発電から撤退している。
 杉原ダムの中止については「国土交通省が徳山ダムの容量配分を見直したため、技術的に難しくなったから」として、私たちの指摘とは無縁な理由であるかのように装っている。しかし本当にそんなに揚水発電を行いたいのであれば(民間鋭利企業として是非必要なものであれば)、これまで通りの最低水位の維持を要求すれば良いではないか。そうしない理由は何も説明されていない(「国に協力するのだ(治水に必要とのことだ)」というかと思えば「コストの計算方法については自由競争下の民間企業であるから明らかにできない」と、説明がコロコロ変わる)。

 一方、徳山ダムの水で発電事業を行うとしている電源開発(株)は、従来の「最大出力40万kW」を「15万3000kW」とした上で、+12億円の負担増加を受け入れる旨を明らかにしている。
 2000年段階で、資源エネルギー庁(電源開発は資源エネルギー庁に直接的に監督されていた)は、「少しでも負担が増加したら採算に問題が出てくる」と言っていた。昨年、徳山ダム事業費増額問題が明らかになったときも、「増額は受け入れがたい」と言い切っていたのである。それなのに、なぜ最大出力を従来の38%に縮小しつつなお増額に応じることが出来るのか到底理解することは出来ない(ここでもコスト計算の方法は企業秘密で公開できない、となる)。徳山ダム発電所で発電された電気の全てを購入するとしている中部電力は、「買い取り価格はあまり変わらない」という。だとしたらコストの上昇分は誰が、どのようにして負担するのか?

 上記の2企業の姿勢は、地元・藤橋村にも大きな影響を与えている。「ダムによって大きなお金が転がり込む」予定で次々とハコモノを作ってきた藤橋村の財政は、確実に窮地に追い込まれる。おいしい餌をちらつかせることによって、推進姿勢をとらせておいて、「釣った魚に餌はやらない」というのであろう。ダムの非人間性がここにも現れている。

 山村を荒廃させ、生態系を破壊するダムは有害無益である。
 電源開発(及び中部電力)に対し、「事業費増額受け入れ」を撤回し、徳山ダムの発電事業から撤退するよう、強く求める。

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