徳山ダム建設中止を求める会・事務局ホームページ


5.揖斐川流域住民として訴える−Due Processの保障を−


近藤ゆり子

(徳山ダム建設中止を求める会・事務局長)

 内容的には、「4.揖斐川治水の下での徳山・横山ダムの新洪水調節計画案の検討」(在間正史)の「第4 河川法の改正と国土審議会水資源分科会の権限」で述べられていることと重複しますが、木曽川水系揖斐川の流域に暮らし、1995年からこの地で徳山ダム建設中止を求める声を上げている者として、河川法が正しく運用されることを、国交省に対し強く要求しています。
 木曽川部会の委員の皆様が、事実上の河川法の脱法行為に加担されるような結論をお出しにならないこと切にお願いいたします。


揖斐川流域住民として訴える−Due Processの保障を−

 1995年、木曽川水系水資源開発基本計画に基づく水源開発施設・長良川河口堰はこの地域及び全国の反対運動を押し切る形で運用が開始されました(1993年のフルプラン全部変更の過ちについては「水資源政策の失敗−長良川河口堰−」参照)。しかし反対運動は、何も生み出さなかったわけではありませんでした。いわば長良川河口堰の運用開始強行の「引き替え」として、河川行政の方向転換を導き、「環境重視・住民参加」をキーワードとする河川法改正に結びつきました。(04年1月16日付け日本弁護士連合会「肱川流域委員会の委員の追加と十分な審議を求める意見書/第2 河川法改正の趣旨と改正法が予定する流域委員会のあり方」参照)
 1995年〜1997年にかけて行われた徳山ダム建設事業審議委員会と並行して、建設省中部地方建設局河川部は河川法の改正趣旨を積極的に説明して回りました。96年6月の名古屋市本山での市民団体の会合において、上総周平・中部地建河川調査官(当時)は「治水計画策定においては、環境を重視し、住民の方々の参加を得て行います」と熱心に話されました。私は「バックデータも住民に公開して(新たな治水計画を)策定するのですね」と問いました。「バックデータも全て公開します」とはっきりとお答えになりました。

 今、木曽川部会に出されようとしている徳山ダムの利水容量の治水容量への大幅振替案(=新洪水調節計画)は、単に個別の徳山ダムのみの問題ではありません。国交省自身が「この結果、洪水調節機能が大幅に向上するため、基準地点万石上流の現在未整備のダムが不要となる」とし、「全川におよぶ水位低下効果」を主張するものである以上、「みなし」河川整備基本方針・河川整備計画である現行工事実施基本計画の枠を超えるものであることは明らかです。
 全ての洪水を河道に押し込めることは不可能であり、大渇水時に使いたいだけ水を使うということも不可能です。どういう「被害」をどの程度受容するか−「治水」は、広範で真摯な議論を通じて流域住民が「選択」する以外にはありません。だからこそ改正河川法では住民参加が強調されたのです。

 「新洪水調節計画」は多大な費用をかけた危険な洪水対策(=愚策)だと私たちは考えます(「バックデータ」は公開されていません)。このような「治水計画の変更」が一切住民が参加することのないフルプラン変更手続きで、事実上決められてしまう(徳山ダムでこの「新洪水調節計画」に基づいた容量振替が決められてしまえば、木曽川水系の河川整備基本方針−社会資本整備審議会、河川整備計画−流域委員会で、そのことを覆すことは極めて困難になります。皆様が仮に木曽川水系に係る社会資本整備審議会小委員会や木曽川水系流域委員会の委員になられた場合をご想像下さい)ということは、明らかに改正河川法からの逸脱−違法行為です。

 国土審議会水資源分科会木曽川部会は、このような脱法行為に加担しないで下さい。改正河川法の趣旨に則った正規の手続きによって、木曽川水系の河川整備基本方針・河川整備計画が策定されるまで、国土交通省及び水資源機構が出す「徳山ダムの利水容量の治水容量への大幅振替案」をそのまま呑んだ結論を出すべきではありません。
揖斐川流域住民として、治水計画変更に係るDue Processの保障を切に願っています。

 委員の皆様の賢明なご判断をお願いいたします。
                                                                     以上

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