徳山ダム建設中止を求める会・事務局ホームページ


名古屋市議会会議録 徳山ダム問題関連抜粋

2003年 9月19日 平成15年 9月定例会

質問:黒田二郎 議員
徳山ダムについて質問します。
 水資源開発公団は8月8日、建設中の徳山ダムの総事業費が現行計画より1010億円ふえて3550億円になることを明らかにいたしました。現行計画による名古屋市の負担割合は7.3%。そのまま増加額に当てはめると、本市の追加負担額は74億円になると新聞報道で伝えられています。事業費の増額には事業計画の変更が必要で、東海3県や名古屋市などから費用負担の同意を得なければなりません。
 国は、事業費増額を受け、10月にも事業評価監視委員会で事業継続の是非を検討すると伝えられていますが、そもそも水余り現象が明らかになっているもとで、建設そのものを中止すべきとの議論は10年も前から各方面から繰り返し行われてきています。93年には、国土庁が木曽川水系の水資源開発基本計画(フルプラン)を改定した際に、水産庁が徳山ダムの項目削除を要求していたことを初め、新聞各紙もたびたび批判的な記事や論評を掲載してまいりました。
 多額の追加費用は国民の税金です。今回のように1000億円を超すような巨額の上積みを求めるに当たっては、このまま事業を継続するか、費用対効果を考え事業を中止するか、工事を中断して事業の妥当性を再検討することが当然必要です。名古屋市にとっても徳山ダムは全く不要だと言わなければなりません。かつて、1988年(昭和63年)に策定された名古屋市新基本計画において徳山ダムが必要だとされた水需要の見通しでは、西暦2000年には1日最大給水量が160万トンに達すると見られておりました。ところが実際には112万トンでしかなく、その後も110万トン台で推移しています。
 また、名古屋市の人口は、名古屋新世紀計画2010では2005年をピークに減少傾向となるとしています。それでも名古屋市は、ダムの必要性を説くために昼間人口の増加や世帯数の増加傾向を挙げてみせます。しかしながら、昼間人口は95年から2000年にかけてむしろ減少しており、世帯数は伸びているといっても5年間で6.8%。しかも、水道をたくさん使わない単身世帯がふえているんです。
 一方、給水能力はいまだ導水計画すらない長良川河口堰を除いても160万トンを確保しています。水源の多系統化で安定性を確保するとなっていますが、94年の異常渇水の際には木曽川も長良川も枯渇状況は同じでありました。渇水で木曽川の水がかれたとしても、そのときに揖斐川なら水が取れるとなぜ言えるのでしょうか。こうした状況で、なぜ現在の1日最大給水量の1.7倍にもなる190万トンもの水利権確保が必要なのでしょうか。工業用水に至っては、1日最大配水量が95年の7万トンから2000年の6万5000トンの間を行き来し、前提となる製造品出荷額等を見ても、95年の5兆6600億円から2000年には4兆7700億円へと低下する一方です。
 さらに、ことし7月4日に開かれた国土審議会水資源開発分科会木曽川部会の議事録を読むと、次のように書かれています。事務局の国土交通省水資源部は、水需要の安定性向上に資する対策について、従来は水資源開発によって水源を確保するというのが1本柱だったとしながら、今後の対策としては、既存施設の有効活用や発電用水など用途間の水の転用、地域間の融通、節水意識の向上と機器普及、雨水利用など水源の多様化等々が重要であることを挙げ、どんどん施設をつくって全く制限ゼロで切り抜けられるような施設を整備するのか、あるいは、10分の1渇水であれば、例えば10%あるいは20%、その制限は我慢してもらおうという前提で考えるのか、そこは恐らく水道事業体の判断ではないか、水道事業体が自分の財政状態、それから各ユーザーとの調整、そういった中で決めるべき問題と説明しています。また、厳しい渇水のときに制限率をゼロ、厳しい渇水になっても悠々と水が取れると、そういうことを必ずしも社会的に望むといいましょうか、供給する必要はないのではないかとも述べています。こうした考え方のもとに、国土交通省は2015年(平成27年)を目標とする木曽川水系の水資源開発基本計画、すなわち新しいフルプランの策定に向けて作業を進めており、関係県に対して需要想定調査を要請しているとのことです。
 そこで、まず上下水道局長にお聞きします。るる述べてきたような今日の情勢のもとで、本市における水需要見通しについて見直す考えはありませんか、お答えください。
 次に、水資源開発公団は10月から独立行政法人水資源機構に変わります。新しい水資源機構法ではダム事業からの撤退ルールができました。これまでに同意してきた負担額は決して小さいものではありませんが、追加負担に利息を加えた今後の巨額な負担を考えれば、この機会に撤退を決断すべきです。そして、今回がそのチャンスでもあると思うのですが、いかがでしょうか、お答えください。
 日本共産党名古屋市会議員団は、先日水資源開発公団へ出向き、自治体に追加負担を求めないことなどの申し入れを行ってまいりました。公団は、増額の理由として、物価上昇や環境保全対策、事前の地質調査の誤りや耐震基準の強化に伴う設計変更、消費税導入などを挙げています。しかしながら、本体工事着工は3年前。追加負担の理由として挙げられている点は、いずれも3年前の時点でわかっていることです。既に96年には、当時の建設省と水資源開発公団の徳山ダム建設事業審議委員会で、物価上昇分や消費税額などを合わせて再計算し、その時点で建設を始めた場合、約300億円の増額になるとの見通しを示し、環境対策などで総工事費はさらに膨らむ見込みであることも明らかにされておりました。少なくとも3年前の着工前の時点で同意を求めるという手続をやろうと思えばできたはずです。1985年の事業費算定から20年近く、一度も修正せず、工事着工を進め、予定額が底をつきそうだからと一挙に1.4倍もの追加負担を自治体に求めてくるというやり方に、岐阜県知事を初め関係自治体からは批判の声が上げられています。
 そこで、市長に2点質問します。
 利水者がそろって同意しなければ、追加負担を前提とした事業費の増額変更はできません。新聞報道によれば、岐阜県の梶原知事は先月19日の記者会見で、負担増に同意しないこともあり得ると述べたと伝えられています。名古屋市は追加負担に同意すべきではないと思いますが、いかがですか、お答えください。
 最後に、この問題で市長は市民の声を聞くとともに、議会の同意を得るべきと思いますが、どのようにお考えですか、お答えください。以上で、私の第1回目の質問を終わります。
答弁:松原武久 市長
徳山ダムにつきまして、2点お尋ねをいただきました。
 最初に、本市は追加負担に同意すべきでないとのお尋ねでございますが、現在、事業費の変更内容が明らかにされた段階でございまして、その内容を慎重に検討してまいりたいと考えておりますので、御理解を賜りたいと存じます。
 次に、この問題で市民の声を聞くとともに議会の同意を得るべきではないかとお尋ねいただいたわけでございますが、本市にとりまして徳山ダムは重要な事業と認識しておりまして、これまでも議会の御理解のもとに参加してまいりました。今後とも、市民の代表である議会の御意見を伺いながら対応してまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。以上でございます。
答弁:山田雅雄 上下水道局長
徳山ダムについて2点お尋ねをいただきました。
 最初に、本市における水需要予測について見直す考えはないかとのお尋ねでございますが、御質問にもありましたように、木曽川水系の水資源開発基本計画は改定作業中でございまして、国から愛知県に対し、本市を含めた木曽川水系の需要予測調査を依頼しているところでございます。現在は、予測方法等につきまして愛知県が国と協議を行っているところでございますので、本市もその協議結果をまって必要な対応をしていく考えでございます。
 次に、徳山ダム建設事業から撤退すべきではないかとのお尋ねでございますが、近年の少雨化に伴い、木曽川では平成に入ってから9回の渇水に見舞われております。また、油流出などの水質事故も毎年10件近く発生しておりますことから、渇水や水質事故のリスクに対応するとともに、長期的視点に立って将来水源を確保するためにも徳山ダム建設事業に参加しておりますので、御理解を賜りますよう、よろしくお願いいたします。以上でございます。
質問:黒田二郎 議員
徳山ダム問題で3点再質問させていただきます。
 まず、水需要予測についてです。県と国の協議結果をまって必要な対応をしていくと、こういう答弁でありましたが、愛知県の需要予測の中に名古屋市分が含まれることは理解できます。しかし、もともと名古屋市の水需要予測というのは、人口の伸びとか工業出荷額の将来見通しをもとに名古屋市が主体的に立てるものではありませんか。現に、決算審議における説明書を見てもそうなっております。平成22年度を目標年度として、常住人口は市内で216万、製造品出荷額は6兆4000億円、それに対する1日最大給水量は142万トン、その予測がこのままでいいのかということを私は聞いているんです。人口は現在よりも減る、工業出荷額も減る、それでも1日最大給水量は142万トンなのか、その見直しを私は求めているのです。上下水道局長、再答弁ください。
 次に、追加負担への同意の問題についてです。市長は、慎重に検討してまいりたいと答弁されましたが、検討の結果次第では同意しないこともあり得ると、それも選択肢の一つとして理解してよろしいですか。もう一度御答弁ください。
 最後に、市民の声を聞くことについてです。私は市長に、市民の声を聞くとともに議会の同意を得るべきではないかと質問いたしました。それに対して、議会の御意見を伺いながらとは答弁されましたが、市民の声を聞くことについては答弁がありませんでした。重要な事業と認識されているわけですから、市民に説明し、意見を聞くこともまた当然だと思いますが、再度御答弁ください。
答弁:松原武久 市長
再度御質問いただきました。
 同じような答弁になってまことに恐縮でございますが、事業費の変更内容が明らかにされた段階でございます。まずはきちんと調べていくことが大事である、こういう立場でおりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 二つ目の市民の声を聞くべきでないかということを再度お尋ねいただきました。私自身、アンテナを高くし、今後も市民の皆さんの声に耳を澄ますということは当然のことでございますが、やってまいります。と同時に、議会の皆様方の御意見も伺ってまいりたいと思っております。以上でございます。
答弁:山田雅雄 上下水道局長
本市の需要予測につきまして再度お尋ねをいただきました。
 本市を含めた愛知県の木曽川水系の水需要予測につきましては、先ほど申し上げましたように、水資源開発基本計画改定作業の一部として国から依頼されているものでございます。したがいまして、水需要予測に必要な予測方法等、基礎的な事項につきまして愛知県と国の協議を現在行っておりますので、その協議結果をまって本市も必要な対応をしていく考えでございますので、よろしく御理解賜りますようお願いいたします。
質問:黒田二郎 議員
答弁変わりませんが、徳山ダムが必要な理由として、先ほどの答弁の中で水質事故のリスクに対応するためと、これまで余り聞いたこともないような新しいことを言われました。水質事故のリスクと言いますが、木曽川の水が全く使えなくなるような事故がどこまで想定できるでしょうか。
 さらに、きのうの質問の中でもありましたが、徳山ダムの水を木曽川に持ってくると言います。木曽川のどこで取水するのか。下流でとるのであれば、それより上流で事故があったときに、全くリスクの回避にはならないのではないかと反論しておきたい。
 財政が豊富ならともかく、厳しい財政事情のもとで、事故のリスクという新しい口実まで持ち出してダム建設の道を進めなければならないのか、全く理解できません。この問題は、今後も引き続き追求していくことを申し上げ、私の質問を終わります。

2003年09月18日 平成15年 9月定例会

質問:梅村麻美子 議員
私は、徳山ダムにかかわる諸問題について質問いたします。
 時代が激しく変化をしていく中で、国や自治体の将来像や方向性を論議するとき、構造改革の必要性が叫ばれ続けています。官と民との果たすべき役割の見直し、かつては必要とされても、現在では不要となった公共事業の見直しなど、こうした改革の展開を図りつつ、税収の確保と歳出の抑制により収支のバランスをしっかりと図り、借金漬け財政から脱却していくことが急務であると認識されています。
 こうした一連の論議の中には、莫大なコストを要するダム事業も当然重要な論議の対象とされるべきものであり、徳山ダムにかかわる問題も例外ではありません。そして、今回の1010億円もの事業費の追加はこうした問題を直視する絶好の機会でもあり、一方、名古屋市は、建設事業のコストの相当額を負担させられている立場にある者として、思考停止や結論先送りなどの消極的な姿勢は絶対に許されるべきものではありません。
 今回の1010億円という金額は、当初事業費2540億円の4割近い額であり、費用対効果の面でも重大な変更です。追加負担金を支払っても事業の継続が妥当と言えるのか、何が市民の利益となるのか、名古屋市が主体的に考え、行動していくことが求められています。水資源機構法13条3項には、事業実施計画を変更しようとするときは費用負担者の同意を得なければならないと明記されています。利水者の同意なしには事業費の変更はできないこととされているのです。市はこの点をしっかりと認識し、公団との交渉に臨んでいかなければなりません。
 そこで、まず1010億円という大幅な事業費の増額についてどのように考えるのか、本市の基本的な姿勢について、上下水道局長の答弁を求めます。
 そして、この事業の継続を認めるべきか否かを判断する前に解決すべき、あるいは一定の方向を提示すべき課題があることを十分に銘記しておくべきです。それは、まずダム建設費負担金の支払い方法の問題です。
 平成10年の水資源開発公団の試算によれば、名古屋市の負担は、水道と工業用水を合わせて、本来の負担額180億円が最終的に4倍近くの687億円にも膨れ上がっています。その原因は、建設期間中の利息を償還元金に組み入れた上で、それを公団の施行令で定める支払い方法、償還期間23年の元利均等半年賦支払いに従って試算されたところにあります。
 この支払い方法は、償還期間が長期にわたること、金利も現在の金融情勢に比して高く設定されていると思われることなどから、償還総額に占める利息の割合が予想外に大きくなり、法外な負担総額を生じさせているのです。こうした消費者金融と見間違えるような償還総額の膨張、理不尽な契約に唯々諾々と従っているのでは、税を預かる立場にある者として無責任のそしりを免れません。例えば、もし本来の負担額180億円を利息0.8%の市民公募債で調達することとすれば、一体どれほどの財源が浮いてくることになるのでしょう。
 私は、名古屋市の負担総額の軽減化を図るためにも、公団と厳しく粘り強く交渉し、繰り上げによる元金の償還を可能にするなど、支払い方法の変更を認めさせるべきものと考えますが、この点市当局はどのように考えるのか、上下水道局長の答弁を求めます。
 次に、水需要の問題も当然課題として取り上げなければなりません。
 昭和40年代、50年代と我が国は高度経済成長下にあり、また、本市の人口も増加傾向にあって水需要の増加が確実に見込まれる時代でした。しかし、現在では社会情勢も変わり、人口もほぼ横ばい、省エネの技術革新も格段に進み、その結果、水道も工業用水も使用量が減る傾向が続いています。
 今回の事業費増額は、確実に水の価格を押し上げるでしょう。そうしたとき、特に、今でさえ価格が高いとして地下水からの転換が進まない工業用水は、さらに値段が上がることとなり、一体だれが買ってくれるのでしょうか。水道水に目を転じても、現在の需要は木曽川の水利権で余裕を持って賄い切れるとされていますし、その上に、現状では全く使っていない長良川河口堰にかかわる水も控えています。
 かつて西尾前名古屋市長は、公団と戦って水道用水の水利権を一部返上しました。私は、この記憶に新しい雄姿を思い起こし、市当局は思い切って水需要予測を下方修正すべきものと考えますが、いかがでしょうか、上下水道局長の答弁を求めます。
 また、導水施設の問題も大きな課題と言わなければなりません。言うまでもなく、ダムができても現実に水の使用ができず、利水の目的を果たし得なければ、これをつくる意味がありません。本来、ダムの本体工事と導水管工事とは一体の事業として構成されるべきものなのです。徳山ダム、揖斐川からの導水は長良川、木曽川と二つの川を越える必要があり、事業費も当然高くなりますが、名古屋市が単独で実施することになれば、その負担も数百億円というレベルになります。そして、その事業費も当然水の価格にはね返ることとなるわけですから、導水事業の問題も今回の追加負担金に対する回答を検討する上で大きな判断材料となるものと言えましょう。
 国は、平成15年7月29日付徳山ダムに関する質問に対する答弁書において、導水事業については関係県市において考慮されるべき事項の一つであると考えており、国土交通省において直接の確認は行っていないとし、揖斐川から木曽川への導水事業については両河川の管理を行う国土交通省において関係県市等の意見を踏まえて検討すると述べています。すなわち、国は揖斐川から木曽川への導水事業についてみずから事業主体となって行うべき事業と認識しているようですが、それ以上の具体的な動きは全くなく、地方からの働きかけもないし、地方の意向も聞いていないとしているのです。
 水需要の観点から、緊急性も必要性もなく、財政状況の厳しい現在、導水事業は後回しでもよいと国が考えているものとすれば、それはダム建設自体に、そもそも本当に必要性を見出せるのかという根源的な疑問がわいてこざるを得ません。1010億円という巨額の追加負担を関係県市に押しつけるのであれば、国には当然本来一体であるべき導水事業の計画を明確に打ち出す責任があると言うべきではないでしょうか。
 そこで、導水事業計画の現状をどのように把握し、その方向性についてどうあるべきと考えるのか。また、国の本来的な責務について、どのように考えているのか、さらに、国は関係県市から導水事業についての話はないと言っているようであるが、事実か、名古屋市として意見を述べた経緯はないのか、以上の点について、上下水道局長の答弁を求めます。
 さらに、今回の事業計画の変更、追加負担の問題を検討するに際し、必然的に生ずる疑問を以下に数点提示して質問し、上下水道局長の答弁を求めたいと思います。
 第1点、追加負担1010億円のうち、名古屋市の負担額は幾らになるのか。
 第2点、水資源開発公団は、名古屋市に対して回答の期限を設定してきたのか。もし期限が提示されていないとすれば、なぜか。また、その理由についてどう考えるのか。
 第3点、平成8年のダム審では、消費税と物価上昇分で増額はおおむね300億円と発表されています。その後、環境保全費等で事業費が1010億円まで膨れ上がる過程において、事業内容やその施行方法、経費等につき、市当局は公団から説明や相談を受けたのか、またそれがあったとすれば、市はこれに同意してきたのか。
 第4点、今回の変更で、ダム上流の民有林180平方キロメートルを300億円で買い取り公有地化することとされているが、公有地化の意味するところは、県有林となり、岐阜県の所有になることであるのか。もしそうであるとするならば、他県が所有することとなる不動産の取得費用について、名古屋市が従来の割合で費用負担をすべき理由はどこにあるのか。
 以上の点について、上下水道局長の答弁を求めます。
 そして、この質問の最後として、撤退ルールの問題を指摘しておきたいと思います。
 この10月1日から施行される水資源機構法施行令には、ダム事業から撤退する者の規定が定められています。すなわち、事業費の変更に同意できなければ事業からの撤退も可能であることが法規上正式に担保されることとなったのです。私は、さきに指摘してきました多くの課題について、もし解決の方向が見出せないときは、選択肢の一つとして検討すべく、この撤退規定を研究しておくべきものと考えます。支払い開始は平成20年度であって先のことと、決断の先延ばしや結論の先送りは許されません。将来の名古屋市民に対し、必要以上の負担を強いることにもなりかねないからです。そこで、今後、この撤退規定の適用も視野に入れ、適用した場合の負担額の試算等について研究していく考えはあるのか、上下水道局長の答弁を求めます。
 以上、徳山ダムにかかわる諸問題について質問をしてまいりました。当局の明快な答弁を求めて、私の第1問を終わります
答弁:山田雅雄 上下水道局長
 徳山ダムにかかわる諸問題につきまして、数点にわたりお尋ねをいただきました。
 まず1点目の事業費の増額についての御質問でございますけれども、現在、水資源開発公団から示されました事業費の変更内容につきまして検討しているところでございます。事業費が大幅にふえることは重要な問題と認識しておりますので、言うべきことは言ってまいりたいと考えております。
 2点目のダム建設費負担金の支払い方法につきまして、本市の負担軽減を図るため、公団に支払い方法の変更を認めさせるべきとの御質問でございますが、徳山ダムにつきましては、建設期間が長期にわたり、また、償還期間も長期にわたっておりますので、御指摘のとおり、負担金に占める利息の割合が大きくなっております。したがいまして、本市の負担を軽減するため、平成10年度より負担金の一部を先行して償還しているところでございます。さらには平成14年11月には、3県1市が共同して無利子や低金利資金への借りかえなどについて要望したところでございますが、引き続き繰り上げ償還など支払い方法の変更につきましても要望してまいりたいと考えております。
 3点目でございますが、水需要予測の下方修正の考えはないのかとのお尋ねでございます。国土交通省の平成15年度版「日本の水資源」によりますと、近年の少雨傾向で、木曽川水系の既存のダムの実力は当初の6割しかないという報告がなされております。現在改定作業中の木曽川水系水資源開発基本計画では、こうした供給側の問題の検討とともに、水需要予測も行われることになり、国から愛知県に対し、本市を含めた木曽川水系の需要予測調査を依頼しているところでございます。現在は、予測方法等につきまして愛知県が国と協議を行っているところでございますので、本市もその協議結果をまって必要な対応をしていく考えでございます。
 4点目になります。導水施設の問題につきまして数点お尋ねをいただきました。
 まず、導水路につきましては、現在国において検討が進められていると聞いております。
 次に、開発された水を有効に利用するために、揖斐川のみならず長良川、木曽川をにらんだ導水路の計画を国を中心に立てるべきではないかと考えております。
 また、国に対しての意見の申し入れについてでございますが、本市といたしましては、経済性と効果的な水運用という観点から、機会あるごとに国に対して導水路の計画を明らかにするように申し入れております。昭和51年には、「ダム完成と同時に木曽川から取水し得るよう措置されたい」という要望を行っております。また、平成9年には、「導水に当たっては、本市既存の取水・導水施設が最大限有効に利用できるような計画とされたい」という要望も行ったところでございます。
 5点目でございます。事業計画の変更、追加負担の問題につきまして数点お尋ねをいただきました。
 追加事業費1010億円のうち、本市の負担額についてでございますが、現時点では、事業費1010億円増加の説明を受けた段階でございまして、本市の負担額につきましては説明を受けておりませんので、御理解賜りたいと存じます。
 次に、回答期限についてのお尋ねでございます。費用負担の同意についてのことと思われますが、この件につきましても、現時点では公団から具体的な要請はございません。10月に事業評価監視委員会が予定されていることや、木曽川水系における水資源開発基本計画の改定作業が同時進行の形で進められていることなどの事情によるのではないかと思われます。
 また、本市は事業内容、施行方法などにつき公団から説明や相談を受けたかという質問でございますが、個々の工事等の内容につきましては、毎年度の予算要求時などに説明を受けてまいりました。本市といたしましては、事業費全体の変更についても、機会あるごとに見通しを明らかにするよう申し入れてまいりましたが、環境対策やコスト縮減などの内容が確定していないという理由で、本年8月8日まで明らかにされませんでした。
 次に、山林の公有地化についてでございますが、公団からは、水源涵養や自然環境保全のために行い、公有地化した山林は岐阜県の県有地になる予定であるとの説明を受けた段階でございまして、その詳細や管理費用等の負担などについて説明を受けておりません。
 いずれにいたしましても、事業費の変更内容については慎重に検討してまいりたいと考えておりますので、御理解賜りたいと存じます。
 撤退ルールにかかわるお尋ねの件でございます。本市は、長期的な視点に立って徳山ダムに参加しているところでございますが、議員御指摘のとおり、本年10月より施行されます水資源機構法施行令において、新たにダム事業から撤退する者の規定が定められたところでもございます。この規定につきましては、内容が極めて専門的であり、また、公団からは説明を受けておりません。詳細はわかりかねますので、調査を進めてまいりたいと考えております。以上でございます。
質問:梅村麻美子 議員
市は公団に言うべきことは言っていくということですので、私も市民の代表として、市当局に言うべきことをしっかり言っていきたいと思います。少々長くなるかもしれませんが、御容赦ください。
 まず、撤退ルールですが、局長は撤退ルールの調査を進めると答弁されました。備えあれば憂いなしという言葉があります。私は、万が一に備えて、日ごろからあらゆる選択肢を調査し、検討することが最高責任者、リーダーたる者の当然の責務と考えております。その点について、市長の市民に目を向けた明快な答弁を求めます。
答弁:松原武久 市長
議員から、徳山ダムにつきまして、さまざまな貴重な御意見、御質問をいただきました。また、今担当局長が詳細に答弁をさせていただいたところでございます。
 水資源につきましては、私は、21世紀全体を見渡して、もっと言えば、さらに長期な視点から確保を図る必要があるというふうに考えております。また、20世紀につくってまいりました幾つかの水源施設が、少雨傾向の中でその能力を十分に発揮できないという状況も起きてきておる。こういったことも一面見なければならないというふうに思っています。さらに、この水源問題、水の問題というのは、基本的には、この地域の関係県市、そして関係の機関が水系一体となって協調して対応しなければならない問題である、こういったことも認識をいたしております。
 と申しましても、先ほどから議論になっております1010億円という事業費の増加といったものは大変大きな影響があるというふうに私は思っております。この問題につきましては、先ほど局長が答弁いたしましたように、名古屋市としても言うべきことはきちっと言う、そういう立場で今後適切に対応してまいりたいというふうに思っておるところでございますので、御理解いただきたいと思います。以上です。
質問:梅村麻美子 議員
言うべきことはしっかり言っていくということです。しっかりとよろしくお願いいたします。また、撤退ルールの研究の方も、選択肢の一つとしてしっかりと研究をしていっていただきたいと思います。
 次に、導水管事業についてですけれども、経済性と効果的な水の運用という観点から、機会あるごとに国に対し、導水路の計画を明らかにするように申し入れてきた、また、昭和51年には、ダム完成と同時に木曽川から取水し得るよう措置されたいという要望を行っている、また、平成9年には、導水に当たっては本市既存の取水・導水施設が最大限利用できるような計画とされたいという要望を行っていると答弁されています。
 これだけ要望をしているにもかかわらず、国の方は検討が進められていると聞いておりますと、まるで他人ごとのようです。自分たちの水とお金のことです。それだけ国がいいかげんと言いたいのでしょうか。それこそ、国に言うべきことをしっかりと言うという姿勢を貫いていただきたいと思います。
 一方で、導水路の計画は国の責務でもあると答弁されているではありませんか。ダムと導水管工事とは一体のこととして構成されるべきものです。それでは、全体の費用がわからずに費用対効果の判断ができるものでしょうか、局長、お答えください。
答弁:山田雅雄 上下水道局長
 導水路事業について再度御質問をいただきました。
 先ほど申し上げましたように、導水路につきましては現在、国の方で具体的な検討が進められていると聞いておるところでございます。また、ダム本体につきましても、ダム事業につきましても、先ほど、公団の方から事業費の変更について説明があったということでございます。変更内容、あるいはこの導水路事業の内容を十分検討してまいりまして、今後、言うべきことは言い、適切な対応を図っていきたいと考えておりますので、よろしく御理解のほどお願い申し上げます。
質問:梅村麻美子 議員
私がお尋ねしていますのは、導水管事業の計画、まだ全くわかっていない状況です。全体費用がわからずに費用対効果の判断ができるのかどうかということをお尋ねしています。
答弁:山田雅雄 上下水道局長
先ほども御答弁させていただきましたけれども、本市といたしましては、経済性と効果的な水運用という観点から、導水路計画について国にその計画を明らかにするよう申し入れてございます。これに並行いたしまして、本市といたしましても導水路に関する概要の検討について進めておりまして、そういったところで費用的な解析についても作業を進めてきているところでございます。以上でございます。
質問:梅村麻美子 議員
それでは、そういった計画がはっきりとして、おおよその事業費がわかってから今回の判断をしていく、そういったおつもりということでしょうか、そう理解してもよろしいでしょうか。
答弁:山田雅雄 上下水道局長
先ほど申し上げましたように、ダム建設事業を含めまして今後の検討を進めて判断してまいりたいと考えております。以上でございます。
質問:梅村麻美子 議員
事業費がわからずに、どうやって判断をしていくのかなというふうに思います。
 また同様に、今回、当初300億円ほどの増額と言っていたのが、環境保全費等で1010億円まで膨らみました。その過程で名古屋市はどういったことをしてきたのかという質問に対して、事業費変更の見通しを明らかにするように何度も申し入れたのにもかかわらず、8月8日まで明らかにされなかったというふうに答弁しています。そのような状況で、費用を負担する側として、どうして責任を持って同意、不同意が決められるのでしょうか。同意をして費用を負担するとなれば、当然税金を使うことになるわけですから、市民に対して説明をする責任があるはずです。公団への不信感はもとより、市当局の基本姿勢についても疑問を抱かざるを得ません。この点、どのように考えるのか、局長の所見を求めます。
 また、質問をちょっと固めた方がいいと思いますので、先ほど、公団の方は回答期限、何も提示されていないというふうに言っていましたけれども、名古屋市としてはいつごろ回答すべきというふうに考えているのでしょうか、名古屋市の姿勢をお尋ねいたします。
答弁:山田雅雄 上下水道局長
いつ回答するのかというお尋ねでございますが、回答の期限につきましては、先ほどもお答え申し上げましたように、現時点では公団から具体的な要請はございません。現在、私どもといたしましては、事業費の変更内容につきまして検討している状況でございますので、現時点では期限について具体的な設定をしておりません。以上でございます。
□:小林秀美 副議長
もう一つありますね。山田上下水道局長。
答弁:山田雅雄 上下水道局長
失礼いたしました。第1点目の今後の対応というお尋ねでございますが、議員御指摘のとおり、この徳山ダム建設事業につきましては今後詰めるべき課題がございます。先ほども申し上げましたとおり、言うべきことは言うとともに、今後とも適時適切に議会の御意見を賜りますとともに情報提供に努めてまいりたいと考えておりますので、御理解のほどよろしくお願い申し上げます。
質問:梅村麻美子 議員
先ほどから言うべきことは言うということを何度もおっしゃってみえますけれども、言うべきことを今まで言ってきても、国の方は何の見通しも明らかにしてこず、導水事業についても具体的な動きを見せてこなかったのではありませんか。言うべきことを言っても、しっかりとした回答が得られなければ意味がありません。そういった点、どのように今後取り組んでいくつもりであるのか、また再び言うべきことを言っていきますというふうにお答えされるのでしょうか。
 市民はこの1010億円というお金、本当に法外なお金だというふうに思っております。説明責任をしっかり果たしていただきたいというふうに思っております。(「市長、最後に答えて」と発言する者あり)今、仲間の皆様から、市長にしっかり答えてもらうべきというアドバイスをいただきました。市長さん、市民はこの1010億円というお金、非常に不安に思っております。従来どおりの費用負担割合でもあっても、70億とか80億というお金です。それに利息がつけば三、四倍の何百億というお金がかかってくるわけです。これは安易に合意していただいては困るわけです。今まで言うべきことは言ってきたわけですね。それでも国の方は動きを見せなかった。その点、これからどういう戦略で交渉されていくのか、しっかりとお答えをいただきたい。そして、市民に安心をさせていただきたいというふうに思います。
答弁:松原武久 市長
繰り返しになって、まことに恐縮でございますけれども、私ども1010億がふえたということの説明を受けた段階でございまして、名古屋市がそのうち幾ら負担するといったことも提示をされていないわけでございます。そういう中で、今いつ回答するか、どうするかといったことは決められない、今後この1010億の内容をきちっと調べる、そういったことが前段であると、こういうふうに思っております。その上で判断していくことになろうかと思っています。安易にこの追加負担に応じるというようなことではない、このことを御理解いただきたいと思います。以上です。
質問:梅村麻美子 議員
8月8日から明らかにされて、もう1カ月以上もたっております。1010億の負担金のうち、名古屋市負担分がどれぐらいか、それぐらいのことも公団から聞けていないということは、言うべきことを本当に言ってくださっているんでしょうかというような疑問がわいてこざるを得ません。しっかりと言うべきことは言っていただいて、また、撤退ルールの方の調査を進めてくださるということですので、お願いいたします。
 そして最後に、本来水というのは色がついているはずがないものです。水道水、農業用水、工業用水と色分けしてあるわけではありません。それであるにもかかわらず、転用することが許されていません。そんなことをしているから、どんどんダムが必要となってくるのです。まずそこを変えていかねばなりません。
 水資源に関する行政評価・監視の勧告に伴う改善措置状況の概要を見ますと、平成13年7月6日に厚生労働省、農林水産省、経済産業省及び国土交通省は、貴重な資源である水の有効利用を図るため用途間転用を推進するよう勧告を受けています。それを受けて各省は、円滑な水の用途間転用の推進を図るため、関係省庁間で調整や情報の共有化を推進していくと、そのように回答しています。総合的な水運用は時代の要請です。名古屋市もこうした観点を今回の変更問題の解決策の指針に据えて取り組んでいくべきと考えますが、いかがでしょうか、この点、最後に局長の答弁を求めて、私の質問を終わります。
答弁:山田雅雄 上下水道局長
水利権の転用などが今後必要ではないかというお尋ねでございます。
 御質問にもございましたように、水利権の転用や水の有効利用が必要であるという観点から、国土交通省や厚生労働省などにおいて、その推進方策が検討あるいは実施されているところでございます。本市でも平成10年に、岩屋ダムに関しまして、三重県の工業用水との転用を実施したところでございます。我が国では水利権それぞれの調整が大変難しいという課題もありますが、今後推進していくべき施策と考えておりますので、御理解のほどよろしくお願い申し上げます。以上です。

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