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滋賀県で出している『蚯蚓のはなかみ通信』というなかなかおもしろい、手作りの雑誌を読んでいます。80頁ほどの季刊誌です。普通にしゃべる言葉をつかって、ほころびを、おそれない、いろいろの文章、詩、随筆、お話し、ちゃっかり旨いもの店の広告もはいっています。書いている人には、どこかで見かけた名前もあります。たとえば、高橋幸子(この人が編集長?らしい)、鶴見俊輔(このごろイラク戦争への鋭い反戦発言が注目されます。詩人?でないけど詩を書いている)、近藤正臣(俳優だけど、旨いもん喰い記をものしている)、黒川創(ほんものの詩人・作家、「もどろき」「イカロスの森」で連続芥川賞にノミネイトされました。)… この黒川さんが、昨春、徳山村を訪れ、前記『通信』(其の五通)に徳山ダムの今の詩を書いています。ぜひお読みください。因みに、『はなかみ通信局』は、077─594─0505です。(大牧冨士夫)2003.04.05

         大きな掌の下        黒川 創

 大きな声で言えなくても
 ちいさな声でなら、
 言うことがてきる
 だろう。
 大きな声に、
 大きな声で、
 返すのではなく。
 そのあいだの沈黙。
 
 大きな声は跳ねかえす。
 わたしは彼になり、彼はわたしになる。
 ずれ、
 はぐらかし、
 冷えるにまかせ、
 いよいよちいさな声でしか伝えられない言葉の意味を
 わたしはここにさがしてみる。
 笑う。
 空気のこまかな震えのように、
 あなたの大きな掌は、
 わたしのこの手を押さえている。
 じっと待って、
 わたしはその温度を受けとろう。
 
 ずっと遠い山中で、
 国じゅうの百トントラックが全部あつまり
 斜面をくずし、
 尾根から尾根へと巨大なコンクリートの堤をわたして、
 何万丈の深さのダムをつくっている。
 いずれはそれもできあがる。
 ただし、
 水が、
 人影のない村を沈め、
 切りたつ周囲の森や林を
 尾根沿いにずっと奥のほうまで沈めて、
 ダムいっぱいを満たすまでには、
 さらに十何年か、
 かかるのだそうだ。
 
 一分間のうちに、
 蟻の巣は水に浸される。
 数日中に、
 若草はのみこまれる。
 季節がうつるあいだに、
 柿の木は水底に沈む。
 この時間から、ずっとさきの時間へ、
 沈黙がつなぐ。
 わたしは、考え、
 ちいさな声で、
 また考えなおす。
 くるぶしを浸す水に、
 さらに遅れてやってくる
 これらの時間を感じながら。
 
 考え、
 考えなおす、
 その自由の余地を押しひらくように、
 カケスが、こっちを見下ろし笑っている。

今、HPを拝見しました。ご苦労様です。HPのスナップ全景は、ぼくの記憶のなかに二重になって蘇ります。なつかしいです。それは、このスナップを撮った地点から下がりますと揖斐川沿いに道がありました。それは、スナップ左手奥の漆谷(シッタニ)にある畑や田圃へ通う道でした。このスナップがとらえた眺めは、まさにその道を辿りながら、母と後になり先になりして歩いた記憶に重なってきます。なつかしく眺めました。tokuyama zenkei.jpg
愛知県知事選でも、垂れ流しの「公共事業」として徳山ダムの名が挙げられていました。進行中のダム建設工事にしても、ダムサイト上流の巨大な橋は、公団内部の人達にすら、なんであんなカネのかかる橋梁設計などしたのか、という声があがっているという噂です。今年の政府予算を見て、横山ダムに40億近くの予算を計上しています。あれは、「百年の保証付き」だったでしよう。それにあたふた、早々と予算措置をしなければならない。川を堰き止めたら砂が溜まる。子どもでも分かる理屈でしよう。「実験」は、せめて横山ダムに止めて、ストップ・ザ「徳山ダム工事」です。
漆谷への通い道に吹く川風は、なんとも快いものでした。その川を砂で埋めないように願っています。風邪が流行っています。お体大切に。
ダム湖に沈む徳山村から移住を余儀なくされた男性から寄せて頂きました。(2003.02.05)

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