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徳山ダム「かんがい容量」振り替え
中部整備局 下流ダムから役割見直し検討
徳山ダムの事業計画変更に絡み、かんがい容量の振り替えが検討されている横山ダム=岐阜県藤橋村で、本社ヘリ「まなづる」から |
水資源機構が岐阜県藤橋村に建設している徳山ダムについて、国土交通省中部地方整備局が、同ダム下流にある横山ダムの「かんがい容量」を徳山ダムに振り替える案を検討していることが二十八日、明らかになった。三十日の事業評価監視委員会で説明される見通しだが、農林水産省によると、かんがい容量をダム間でやりとりするのは極めて異例。千十億円の事業費増額問題で揺れる中、両ダムの役割見直しは一層の論議を呼びそうだ。
農水省によると、横山ダムには現在、二千九百万トンのかんがい容量があり、下流の大垣市など八市町にまたがる西濃用水地区に、最大で毎秒約二十三トンの農業用水を供給している。
今回の検討案は、横山ダムのかんがい容量をそのまま徳山ダムに移し替え、横山ダムの空いた分を洪水調節用に振り向ける。揖斐川下流の大垣市内では昨年、洪水被害が発生しており、下流の治水対策を強化するのが狙いとみられる。
一方の徳山ダムをめぐっては、水余りの状況を受けて新規利水の必要性の低下が必至の情勢。このため、同整備局はダム機能の治水への振り替えなど事業計画の見直しを進めていたが、ダムの必要性を維持する上でさらに新たな対応に迫られた格好だ。木曽川水系では水資源開発基本計画(フルプラン)の全部見直しが行われており、新規利水分が未確定の段階での同ダムの機能見直しのあり方も問われそうだ。
横山ダムの機能変更には、特定多目的ダム法に基づく関係省庁や都道府県との協議が義務づけられており、打診を受けた農水省側は「詳しい話がないので対応のしようがない。新たな費用負担には応じられず、振り替えに伴う利水者との調整も時間がかかるだろう」と困惑している。
同整備局河川部は「監視委では治水関係の話はするが、内容はコメントできない」としている。
つじつま合わせで水利権者に不安感
今回の振り替え案について、高田直俊・大阪市立大大学院教授(土木工学)は「建設是非が問われている徳山ダムの存在価値を上げるためのつじつま合わせではないか。計画が大きく変わり論議が必要だ」と指摘。宮村忠・関東学院大教授(河川工学)は「ダムの有効活用のための見直しは悪いことではないが、かんがい容量振り替えは水利権者に不安感を与える。十分な説明が求められる」としている。
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