徳山ダム建設中止を求める会・事務局ホームページ
徳山ダム裁判住民訴訟 第18準備書面
1 岐阜県予測
1) 岐阜県予測の手法
2) 工業統計表による上位8業種による検討の有用性
2 生活関連型
1) 岐阜県予測
2) 繊維工業(甲13の3):在来型
3) パルプ・紙・紙加工品製造業(甲13の4):在来型
4) 食料品製造業(甲13の2):在来型
5) プラスチック製品製造業(甲13の6):先端型
6) まとめ
3 基礎資材型
1) 岐阜県予測
2) 窯業・土石製品製造業(甲13の7):在来型
3) 化学工業(甲13の5):先端型
4) まとめ
4 加工組立型
1) 岐阜県予測
2) 電気機械器具製造業(甲13の8)
3) 輸送用機械器具製造業(甲13の9)
4) まとめ
5 岐阜県予測の基本的誤り
1) 使用水原単位
2) 回収率
3) 工業出荷額
4) 予測式自体の問題
5) 工業用水道による供給必要水量の検討の欠如
1 岐阜県予測 |
1) 岐阜県予測の手法 そこで、上記6タイプの業種の需要水量予測が過去の実績に照らして合理性のあるものであるのかを、「工業統計表・用地用水編」の大垣工業地区(大垣地域、大垣ブロックと同じ)の部分を用いて検討する(甲13及び甲14)。工業統計表は30人以上の事業所を対象とする経済産業省(旧通産省)の工業統計であり、被告岐阜県知事が用いた乙19『岐阜県工業用水需要量調査業務報告書』の「岐阜県工業統計調査」と資料の出所は同じものである。 大垣工業地区で、岐阜県予測での基準年である1990年において補給水量の多い業種を多い順に8業種を並べると、繊維工業、プラスチック製品製造業、パルプ・紙・紙加工製品製造業、化学工業、電気機械器具製造業、窯業・土石製品製造業、食料品製造業、輸送用機械器具製造業である(甲14p6)。 この8業種の合計水量は大垣地区全体の水量に対して、基準年の1990年(平成2年)においては、使用水量では612,427m3/日で、全体水量644,960m3/日の95%、補給水量では403,788m3/日で、全体水量434,561m3/日の93%である。したがって、この8業種を検討すれば、大垣地域全体を検討したとみてよい。 乙19『岐阜県工業用水需要量調査業務報告書』p3で、岐阜県予測における「先端型産業」(「先端型技術産業」ともいっている)が説明され、表1.4.1.2.2にその産業部門別の細分類が示されている。工業統計表の分類番号は、上2桁が産業別の中分類を、4桁で細分類を表している。例えば、中分類でプラスチック製造業に属する業種は新しい細分類では、「22**」と表示される。 同表1.4.1.2.2によれば、生活関連型(先端型)の対応業種は、プラスチックフィルム製造業、プラスチックシート製造業、プラスチックフイルム・シート・床材・合成皮革加工業、および他に分類されないプラスチック製品製造業と、他に分類されないパルプ・紙・紙加工製品製造業であり、大部分はプラスチック製品製造業である。また、基礎素材型(先端型)の対応業種は、大部分が分類番号の上2桁が化学工業を示す20となっており、化学工業である(残りは、窯業・土石製品製造業と非鉄金属製造業である)。1990年の使用水量をみると、化学工業は70,461m3/日で(甲14p6)、基礎素材型(先端型)は70,430m3/日であり(乙19p4)、両者は殆ど同じである。化学工業が基礎素材型(先端型)の中心をなし大部分を占めている。加工組立型(先端型)に対応する業種は、一般機械器具、電気機械器具、輸送用機械器具、精密機械器具の各製造業に分散している。 したがって、上記の上位8業種は、 生活関連型(在来型):食料品製造業、繊維工業、パルプ・紙・紙加工品製造業 生活関連型(先端型):プラスチック製品製造業 基礎資材型(在来型):窯業・土石製品製造業 基礎資材型(先端型):化学工業 加工組立型(在来型)と同(先端型):輸送用機械器具製造業、電気機械器具製造業 と6タイプに分散しており、全ての類型をカバーすることができる。 そこで、以下では産業分類ごとに、代表的で水量も多い業種ごとに過去の実績を分析し、岐阜県予測に合理性があるかを検討する。 |
2 生活関連型 |
1) 岐阜県予測 2) 繊維工業(甲13の3):在来型 3) パルプ・紙・紙加工品製造業(甲13の4):在来型 4) 食料品製造業(甲13の2):在来型 5) プラスチック製品製造業(甲13の6):先端型 生活関連型の業種はいずれも、需要水量が横ばいか減少である。特に、需要水量全体の約60%、全体増加分の約67%と大部分を占める(在来型)の動向は重要である。なかでも、(在来型)の需要水量の約60%、したがって全体の約34%を占めて、その中心をなす繊維工業の動向は重要であるが、繊維工業では水需要の低下が著しい。 また、岐阜県予測では、将来の回収率を過去の実績値固定によって求めているが、過去の実績値が低すぎるので将来の回収率が過小になっている。過去の回収率は、冷却・温調率からみて、その向上が可能で容易である。 これらを考えると、水需要予測モデルのように、2010年(平成22年)に生活関連型の水需要が442千m3/日になることは全く考えられない。 |
3 基礎資材型 |
1) 岐阜県予測 2) 窯業・土石製品製造業(甲13の7):在来型 3) 化学工業(甲13の5):先端型 基礎資材型の実績は、補給水量、使用水量とも横ばい傾向にあり、その傾向からは、今後、需要水量が増加することはない。仮に使用水量が多少増加することがあっても、回収率の向上によって、結局、補給水量が増加することはありえない。岐阜県予測のような基礎素材型(先端型)の需要水量が2010年に84千m3/日になることは考えられない。 また、2000年の実績において、既に岐阜県予測の予測値が実績値と乖離しており、予測の誤りが統計資料として出ている。 |
4 加工組立型 |
1) 岐阜県予測 2) 電気機械器具製造業(甲13の8) 3) 輸送用機械器具製造業(甲13の9) 加工組立型の実績は、補給水量、使用水量とも横ばい傾向にあり、今後、需要水量が増加することはない。仮に使用水量が多少増加することがあっても、回収率の向上によって、結局、補給水量が増加することはありえない。 |
5 岐阜県予測の基本的誤り |
以上、個別業種ごとに過去の水需要実績に基づいて、将来見通しや岐阜県予測を検討してきた。ここから、岐阜県予測にはつぎのような基本的な誤りがあることを指摘することができる。 1) 使用水原単位 2) 回収率 3) 工業出荷額 4) 予測式自体の問題 岐阜県予測は1人以上の事業所の補給水量を工業用水需要量としている。 徳山ダムによる工業用水の必要性をいうためには、そこからさらに進んで、そのうち、工業用水道によって供給する水量がどれだけ必要かの検討をしなければならない。工業用水道は、ある程度以上の規模の補給水量を必要とする事業所でなければ利用されない。小規模零細事業所は工業用水道の対象外である。 岐阜県予測は、1人以上の事業所という小規模零細事業所まで需要水量に計算しているのであるから、そのなかで、工業用水道を利用する事業所の水量の検討が不可欠である。しかし、そのような検討は全くなされていない。 |