企画特集1 |
[徳山ダムを問う 地裁判決を前に] |
(1)原告弁護団長 在間 正史さん
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建設の進む徳山ダム本体部分=藤橋村で | 藤橋村の徳山ダムをめぐり、建設の是非が問われた三つの訴訟が26日、岐阜地裁で判決を迎える。折しも事業者の水資源機構は、総事業費を2540億円から3500億円に増額すると表明。追加負担の問題も浮上した。あらためて徳山ダムの必要性について、関係者に考えを聞いた。
水余り
事業破綻直視を
――今回判決を迎える三つの訴訟《注1》の意義は。
「本質的な議論はどの訴訟も同じで、ダムの必要性が争点だ。徳山ダムは水資源開発のための施設なので、特に新規利水の必要性について司法の判断を求めている」
――新たな水の需要は生じないと主張しています。
「水道用水は1人当たりの水使用量が頭打ちになっている。人口の増加も見込めない。工業用水もオイルショック以降、需要は減少か横ばいだ。利水は受益者負担が原則。ダム建設の費用は使用料金から賄われるため、需要がなければ事業として破綻(はたん)する。結局、税金を注入して解決することになる」
――水の供給を受ける予定の市町に与える影響は。
「現実問題として、これらの市町が新規利水の負担を背負うことになる。県は毎年十数億円の負担金を支払うために、一刻も早く県営水道を造って市町に引き受けてもらうだろう。その際、県は市町に対し『あなた方が造ってくれと言ったのに、今さら要らないでは済まない』と言うだろう。実際、長良川河口堰(かこうぜき)では、三重県と地元市町村の間で同じような事態になっている」
――昨年7月の大垣市荒崎地区を中心とした水害《注2》の被災者をはじめ、流域住民からは、治水のために早期完成を求める声が高まっています。
「荒崎地区の水害は揖斐川本流に合流するずっと手前の支流で発生した。徳山ダムに金をかけ、支流の改修を後回しにしてきた結果だ。徳山ダムは揖斐川の源流部にあるため、支流に降った雨に対応できない。洗堰(あらいぜき)をはじめ、地域の水防対策が失われつつあることも問題だ」
――ダムに代わる治水の手段はありますか。
「揖斐川は河道改修で水位を下げることができるはず。現行の改修計画が完成した時点で、どれだけの水を流せるか、具体的なデータを明らかにしてほしい。特に川の容積が小さい大垣市〜安八町付近を広げれば、揖斐川全体の流量は増やせる。その上で、必要な区間に限って堤防のかさ上げをしてもいい」
――960億円の事業費増額も発表されました。
「ここまで工事が進んでからの発表は問題。船に乗せた後に『もう戻れませんよ』『もっとお金が必要ですよ』と脅しているようなものだ。最近示された導水路計画も含め、工事着手前に事業費の増加を具体的に示すべきだった」
――本体工事がかなり進んでいます。
「判決確定より先に工事が完成する可能性が出てきた。『事業は違法だが、事業認定の取り消しはしない』という判決も考えられる。その場合、違法なダムを社会がどう扱うかが問われるだろう」
《注1》原告は「徳山ダム建設中止を求める会」のメンバーら。@国に対し土地の強制収用のための事業認定を取り消すよう求めた訴訟A県収用委員会に対し土地収用裁決の取り消しを求めた訴訟B県に対し工業用水負担金の支出差し止めを求め、梶原拓知事に対し支出した負担金のうち約35億円を返還するよう求めた訴訟の三つ。
《注2》台風の影響で大谷川が増水し、堤防の一部が低くなっている洗堰から水があふれた。大垣市荒崎地区の482軒が浸水し、約250人が避難した。
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